『推し、燃ゆ』宇佐見りん
『サユミンランドール』道重さゆみ
『わたしのワンピース』にしまきかやこ
今回は「アイドル」をテーマに三冊紹介したいと思います。
『推し、燃ゆ』は、第164回芥川賞受賞作。
高校生のあかりは、ある男声アイドルを「推し」ている。ある日、そのアイドルがファンを殴ったというニュースが流れて…というのがこの小説の筋。
人は年齢を重ねるごとに身体が重くなっていく。
いや、何も体重のことを言っている訳じゃないんです。
長く生きていると、社会的な責任感やら、他者とのしがらみやらを次々と背負わされていきます。
それが目に見えぬ「重み」となって、僕らの自由を奪うのです。
この小説の主人公はアイドルを「推す」ことで、その重みから逃れようとしたんだと思う。
「推す」の究極の形は、その人と同一化したいと願うこと。
つまり、自分ではない他者になりきることで、自らの「重み」から解放されようと願ったのではないでしょうか。
この本を読んで、そんなことを考えました。
続いて紹介するのは、元モーニング娘。道重さゆみさんの写真集『サユミンランドール』です。
「アイドル」という言葉に触れるとき、真っ先に僕の頭に浮かぶのが道重さんです。
彼女が卒業公演でしたスピーチがファンの間では伝説になってるんですけど、僕もあれ、めちゃくちゃ好きなんですよね。
「音程ってなに?」というところからアイドルになり、グループのリーダーまで上り詰めた道重さん。
彼女はそんなアイドル人生をこう表現しています。
どんなに頑張ってもうまくいかないこともあるし、どんなに努力したって報われないことだってあります。だけど、少しずつ前に進めるということに気づくことができた
僕も、こんな風に「好き」を極めたいです。
最後に紹介するのは、『わたしのワンピース』という絵本です。
空から布が降ってくるのを見つけたうさぎは、それを持ち帰ってワンピースを仕立てます。
ところが、この布はとっても不思議な布でした。
お花畑で散歩すれば花柄になり、雨に降られれば水玉模様になります。
読んだ子どもがオシャレに目覚める。
そんなきっかけを与えてくれる絵本です。
たぶん、キレイな格好をしたいというのは、小さな頃から芽生えるプリミティブな欲求で、これが高じて「アイドルになりたい!」ってなるんじゃないかな。