今回は、手塚治虫が1947年に初版を発表した『新宝島』という漫画を紹介します。
この作品が発表された当時、雑誌に掲載されていた漫画は、4ページ程度の短編が主流でした。
しかし、この『新宝島』は、200ページほどの大ボリューム。
また、構図に映画的な技法を取り入れた革新性もあって、藤子不二雄・石ノ森章太郎・ちばてつやなど、その後世に出る、多くの漫画家に影響を与えました。
このことから、「戦後の漫画は、新宝島から始まった」と言っても過言ではありません。
そこでここでは、“日本の漫画の原点”とでも言うべき、この『新宝島』のあらすじを、一緒に見ていきたいと思います。
冒険の始まり
物語は、主人公のピート君が、車を走らせているシーンから始まります。
途中で犬を轢いてしまいそうになったピート君は、その犬を拾い上げて車に乗せると、そのまま波止場に到着しました。
そこでは、ちょうど大きな船が出航したところのようです。
停泊していたボートに飛び乗り、その船の後を追いかけるピート君。
やっと追いついたところで、船に向かって声をかけ、途中で拾った犬と一緒に、ロープで引っ張り上げてもらいました。
どうやらピート君は、その船の船長とは顔見知りだった様子。
「僕もこの船に乗りたい」と、船長にお願いしました。
というのも、ピート君は、お父さんの書類箱から宝島の地図を見つけたため、船でそこへ行きたかったのです。
このとき部屋の外では、一人の船員が話を盗み聞きしていました。
その晩、ピート君はベッドに入りながら、横にいる犬に向かって「宝島が本当にあればいいんだがねえ」と話しかけます。
「そのお宝は、海賊が埋めたことにしよう」
「宝島には、人喰い人種が住んでいて、その島に来る探検家を捕まえて食べてしまうんだ」
「そこへターザンが現れて、探検家を助けてくれるんだよ」
犬に自分の空想を語りつつ、そのままピート君は眠りに落ちていきました。
海賊の襲撃
夜中に目を覚ましたピート君は、宝の地図を船長に預けたままだったことを思い出し、返してもらおうと、船長の部屋を訪れます。
するとそこへ、先ほど盗み聞きしていた船員が銃を持って入ってきました。
屈強な船長は、この船員を撃退。
しかし、これと同じタイミングで海賊たちがやってきて、船を襲いました。
あえなく宝島の地図は海賊たちに奪われ、ピート君と船長は縄で縛られてしまいます。
そこにピート君が拾った犬が現れましたが、どうすることもできません。
そんなとき、船が突然、時化に襲われます。
船体が大きく揺れたはずみで、縄がほどけたピート君。
船長の縄も解いてあげて、宝の地図を回収し、船からの脱出を試みました。
海賊に見つかりながらも、なんとか海へ飛び出し、流木で筏を作って、陸地を目指します。
そして、40日間の漂流の末、ピート君・船長・犬の2人と1匹は、とある島にたどり着きました。
宝島に漂流
島の形から察するに、どうやらここは、地図にあった宝島のようです。
ピート君たちは、地図を頼りに、宝の場所を目指しました。
そんなところへ、時化で船が沈んでしまった海賊たちも、この島に漂流。
ピート君たちは再び海賊たちに襲われ、地図を奪われてしまいます。
さらに、この戦いの中で、ピート君と犬が川の激流に飲まれてしまいました。
このピンチを救ってくれたのが、ターザンです。
颯爽と現れて、ピート君と犬を川から引き上げると、そのままどこかへ立ち去っていきました。
しばらくして目を覚ましたピート君は、今度は人喰い人種に捕らえられてしまいます。
彼らに食べられそうになったピート君と犬。
そこへターザンが動物たちを引き連れて現れ、またもやピート君たちを危機から救ってくれました。
そのままターザンの家に招かれたピート君たちは、そこで船長と合流します。
一方その頃、地図を奪った海賊たちは、それを頼りに宝を探していました。
悪戦苦闘の末、ようやく宝箱を見つけたのですが、なんと中身は空っぽ。
そこへ猛獣たちが現れ、海賊たちはその餌食となってしまいました。
宝箱を発見
実は、島の宝はターザンによって、すでに別の場所へ移されていたのです。
ピート君たちは、ターザンに宝の場所を案内してもらうことに。
そこにあった宝箱の中には、たくさんの金銀財宝が詰まっていました。
それを見たピート君は、「このお宝で、この島を買おう」と言い出します。
そして、世界中の動物をここに集めて、檻のない動物園を作り、ターザンに園長を務めてもらおうと提案しました。
船長とターザンは、このピート君の案に賛成。
すると、ちょうどそこへ救助船が到着したので、ピート君たちは宝箱を持って、その船に乗り込みました。
ここで場面は、ピート君がベッドで寝ているシーンに切り替わります。
そこで、ピート君の横にいた犬が、突然、人間の言葉で話しかけてきました。
その話によると、実は、この犬は妖精で、命を助けてもらったお礼に、ピート君を空想の世界に連れて行ってくれたのだと言います。
犬は「そろそろ元の世界に戻ろう」と言い、世界を元の現実に戻すと、空を飛んで船から出ていってしまいました。
犬を見送ったピート君が船の中を確認すると、さっきまであったはずの宝箱が消えています。
船長に宝のことを聞いてみても、「わしは知らない。夢でも見ていたんじゃないか」と笑われてしまいました。
また、船長はピート君から渡された地図のことを調べてくれていたのですが、宝なんて遠い昔のことで、今は石油の貯蔵基地になっているとのこと。
この船長の話に落胆したピート君でしたが、部屋の中に海賊船の模型が飾られているのを見つけます。
そこでピート君は、その模型を眺めながら、船長に今まで見ていた空想の冒険譚を語り始めたのでした。
おわりに
今回は、手塚治虫の『新宝島』のあらすじを見てきました。
この作品に興味を持っていただけたなら、ぜひ実際に読んでみてください。