落語のネタ

落語「宮戸川」のあらすじ・オチ・豆知識を紹介!

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「おとっつぁん!半七でございます!開けてください!」

「おっかさん!帰りが遅くなってすみません!開けてください!」

「宮戸川(みやとがわ)」のあらすじ

話の主人公は、小網町(今の茅場町駅の北あたり)にある商家の若旦那の「半七」。

彼はこの日、趣味の将棋に熱中し過ぎて、家に帰るのがずいぶん遅くなってしまいました。

半七

おとっつぁん!半七でございます!

半七

開けてください!

こうして閉め出しを食らった半七。

その向かいの家では、娘の「お花」がカルタに夢中になったせいで帰宅が遅れ、同じく家に入れてもらえずにいました。

お花

おっかさん!帰りが遅くなってすみません!

お花

開けてください!

半七

……おや?

半七

そこに居るのは、お花さんですね?

お花

あら、半七さん。こんばんは。

お花

どうなすったの?

半七

あなたと同じように、閉め出しを食らったんです。

お花

それはお気の毒さま。

お花

これから、どうなさいますの?

半七

今晩は入れてもらえそうにありませんので、霊岸島(茅場町駅の東あたり)の伯父さんのとこへ行こうと思ってるんです。

お花

まぁ。お近くに伯父さんがいて、いいわね。

お花

私の伯父は、ちょっと遠いの。

半七

ほう。どちらなんです?

お花

肥後の熊本。

半七

そりゃあ、遠いですね。

お花

ねぇ、半七さん。

お花

私も、あなたの伯父さんのとこに泊めてもらえないかしら?

半七

冗談言っちゃいけません。

半七

うちの伯父さんは、人呼んで「おいそれ」の伯父さんなんですから。

お花

おいそれ?

半七

「おい」と言うか言わないかのうちに、「それっ!」っと動き出しちゃうんです。

半七

早飲み込みの決め込み屋なんで、あたしがお花さんと一緒に行ったら、なんて思われるか……。

お花

いいじゃないの。

お花

私たちは何でもないんだから!

半七が断るのも聞かず、結局、お花は霊岸島の伯父さんの家まで付いてきてしまいます。

半七

おじさーん。こんばんはー。

伯父さん

おや、半七じゃないか。

伯父さん

……ん?娘さんも一緒なのか?

半七

あの……おじさん、この子は……。

伯父さん

わかってる、わかってる。みなまで言うな。

半七

い、いや……。

伯父さん

さあさあ、二人とも中に入りなさい。

こうして、家の中に案内された半七とお花。

半七

あの、おじさん。勘違いしないでくださいよ?

半七

この子は、来ちゃいけないって言ってるのに、勝手に付いてきたんです。

伯父さん

言い訳などしなくていい。

伯父さん

俺はそこまで野暮じゃねえよ。

半七

だから……!

伯父さん

お嬢さん。私は半七の伯父でございます。

伯父さん

どうぞ、この半七をよろしくお願いします。

お花

い、いえ……。

お花

こんなに遅くにお邪魔しまして……。

伯父さん

いやいや、一向に構いませんよ。

伯父さん

2階にお部屋がございますんで、どうぞ、そこの階段から上がってください。

お花

……ありがとうございます。

伯父さん

おい、半七。案内してやれ。

半七

いや、俺は1階で寝るよ……。

伯父さん

なに怖気付いてんだ!

伯父さん

さあ、早く上がれ上がれ!

背中を押されるように、2階に上がってきた半七とお花。

仕方がないので、その部屋で二人とも寝ることにしましたが、戸棚を開けると布団が1組しかありません。

半七

お花さんは、この布団で寝てください。

お花

半七さんは、どうするの?

半七

一晩くらい、起きてることにします。

お花

寝ないと体に毒ですよ?

お花

こうなったのも私のせいですから、私が起きてます。

半七

そうはいきませんよ!

お花

でも……。

半七

……じゃあ、こうしましょう。

半七

布団の真ん中に帯を置くので、あなたは左半分で寝なさい。

半七

あたしは右半分で寝ます。

こうして、1つの布団で背中合わせになって寝始めた二人。

しかし、お互いになんだか胸騒ぎがして、なかなか寝付けません。

そんな中、外ではにわか雨が降り始めます。

雨足はどんどん強くなり、ついには雷まで鳴り始めました。

お花

凄い音がしてきましたね……。

半七

そうですね……。

お花

……きゃー!!

近くに雷が落ち、大きな音が鳴り響いたので、お花は思わず半七に抱きつきました。

すると、お花の髪の油と白粉(おしろい)の甘い匂いが、半七の鼻へと香ります。

我を忘れた半七は、お花の体を強く引き寄せて……。

それから二人は、良い夢を見たとか。

さて、その翌朝。

半七は伯父さんに、「お花と夫婦にしてください」と頼みます。

伯父さんはこれを快く引き受け、2人の家まで走って、話をつけてきてくれました。

こうして、晴れて夫婦になれた半七とお花。

伯父さんに世話してもらって店を開き、小僧の定吉を雇って、睦まじく暮らし始めます。

それから少し経った、ある夏の日のこと。

お花は用があって、定吉を連れて浅草まで来たのですが、帰りに雨に降られ、雷門のところで雨宿りをすることに。

しかし、雨は一向にやみそうにないので、定吉が家から傘を取ってくることになりました。

こうして、一人で雷門に残されたお花。

定吉の帰りを寂しく待っていると、近くで落雷がありました。

そのあまりに大きな音に、彼女は気を失ってしまいます。

そこへ、汚いなりをした3人の男が通りかかりました。

男A

凄い音がしたな?

男B

ああ。ずいぶん近くに落ちたんじゃねえか?

男C

おい、あれを見ろ!

男C

女の人が倒れてるぞ?

気になって、お花のところに駆けつけた3人。

男A

きっと、さっきの雷の音に驚いて、気を失っちまったんだ。

男B

気の毒にな。

男C

俺たちで、助けてやろうじゃねえか。

男の1人がお花を抱き上げると、大変な美人であることに気が付きます。

そこで変な気を起こした3人は、彼女をさらってしまいました。

それからしばらく経って、やっと定吉が帰ってきます。

定吉

あれ?おかみさんがいないや。

定吉

おーい、おかみさーん!どこですかー?

定吉がいくら探しても、お花は見つかりません。

焦った定吉は、家に帰って半七に報告。

それからは、近所の人たちが総出になって捜索しましたが、彼女の姿はどこにもありませんでした。

その後、何日経っても、家に帰ってこないお花。

やがて半七は、彼女は亡くなってしまったのだと悟り、葬式を挙げました。

お花がいなくなってから1年後。

出先で用事を済ませた半七は、あまりに暑いので船に乗って家に帰ることにしました。

すると、その船に付けられた船頭に、仲間の男が話しかけてきます。

船頭A

おう、ちょっと待ってくれ。

船頭B

なんだよ?

船頭A

俺も乗せてってくれよ。

船頭B

ダメだよ。そこの旦那を乗せてるんだから。

半七

いいよ、あなたも乗りなさい。

船頭B

旦那、いいんですか?

半七

ああ。これから船で酒でも飲もうかと思ってたんだ。

半七

一人で飲むより、相手がいた方がいいや。

船頭A

へえ。ありがとうございます。

半七

さ、ひとつ飲みなさい。

船頭A

これは、これは。

船頭A

旦那もどうぞ。

半七

ありがとう。

船頭A

それにしても、旦那は器量も身なりもいいから、女に惚れられるでしょう?

半七

いやいや。私のような野暮な男には、女は寄って来ませんよ。

半七

それより、あなたたち船頭みたいな、粋な家業のほうが惚れられるでしょう?

船頭A

いやぁ、そうでもないですよ。

半七

何か酒のつまみになるような、惚気話でもあるかい?

船頭A

大して面白い話はありませんが……。

船頭A

去年の今頃だったかな?

船頭A

俺と、あそこにいる船頭と、もう一人の友達の3人連れで、雨が降るなか浅草のあたりを歩いてたんですよ。

船頭B

おい、つまらない話をするなよ!

船頭A

いいじゃねえか!

船頭A

でね、雷門のところを通りかかると、綺麗な女の人が倒れてたんです。

半七

ほう。

船頭A

あまりに良い女なんで、ちょいとイタズラしてやろうってことになりましてね。

船頭A

人気のないところまで担いでったんですが、いざってときに女は気が付きまして……。

船頭A

あっしの顔を見て、「亀かい?」と言ったんです。

半七

亀?

船頭A

「亀」は、あっしの名です。

船頭A

実はその女は、あっしたちもお世話になってる船宿の娘の「お花」って子でして、顔なじみだったんですよ。

半七

……そうか。

船頭A

そんな娘を「人気のないとこに連れて行って、イタズラしようとしてた」なんて知れたら、あっしたちの首が飛びます。

船頭A

なんで、可哀想でしたが、女の口を手拭いで縛って、川の中に放り込んじまいました。

半七

……これは、面白い話を聞いたよ。

半七

さあ、もう一杯どうぞ。

船頭A

へえ、ありがとうございます。

ここで半七は、盃を差し出した男の手首を強く掴みます。

半七

これで様子が、からりと知れた。

船頭A

へ?

半七

お花は、私の女房だ。

半七

良いところで会ったな。

定吉

旦那さま!旦那さま!

半七

……ん?

定吉

うなされていましたが、どうなさいました?

半七

ああ、定吉か。

半七

どうやら、夢を見ていたようだ。

定吉

左様でございますか。

半七

お前は、ここで何をしてるんだ?

定吉

今、おかみさんのお供で浅草まで参っていたのですが……。

定吉

にわか雨が降ってきましたので、傘を取りに帰ってきたんです。

半七

ああ、そうだったか。

「夢は小僧の遣いだな」

ー完ー

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「宮戸川」のオチ(サゲ)

最後の半七のセリフにある「夢は小僧の遣い」は、「夢は五臓の疲れ」ということわざに掛かってます。

この「夢は五臓の疲れ」は、「夢は五臓(肝臓・心臓・脾臓・肺臓・腎臓)が疲れているから見るものだ」という意味。

これと「定吉が傘を取りに帰ってくる」という、「小僧の遣い」が掛かっているというオチでした。

なお、このネタは最後まで演じると長いため、「半七とお花が一夜をともに過ごす」シーンあたりでサゲられることが多いです。

その場合には、二人の一夜を詳しく描写するのではなく、いいところで「ここでお時間です」と終わります。

そして、ここでサゲた場合には、「お花半七馴れ初め」「お花半七」といった題になります。

「宮戸川」の題の由来

あらすじの最後で、酒を飲みながら「亀」の話を聞いていた半七は、聞き終わると彼の手首を掴み、「これで様子が、からりと知れた」と言い放ちます。

高座ではここから三味線が流れ、芝居のような演出がされるのですが、その部分のセリフに、ネタの題になっている「宮戸川」という言葉が登場します。

そこのセリフの流れは、以下の通りです。

半「これで様子が、からりと知れた」

半「去年六月十七日。女房お花が観音へ、参る下向の道すがら、にわかに降り出す篠突く雨」

半「しばし駆け込む雷門。二十歳の上が二つ三つ、溢れかかった愛嬌に、気が差したのが運の尽き」

半「丁稚の知らせに折よくも、そこやここぞと訪ねしが、未だに行方の知れぬのは」

半「知れぬも道理よ、多田薬師の石置き場、のちの憂いが恐ろしく、不憫と思えど宮戸川。どんぶりやった水煙り」

半「さてはその日の悪者は、汝らであったか?」

亀「亭主というのは、うぬであったか?」

半「はて、良いところで……」

亀「悪いところで……」

半・亀「会ったよなぁ」(ここで半七が夢から覚める)

なお、宮戸川というのは、隅田川の「浅草周辺」の流域を指した旧称。

夢の中でお花は、この宮戸川に放り込まれてしまったようです。

「宮戸川」の豆知識

  • 太平洋戦争中には、「禁演落語」に指定された。
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  • 関智一:スネ夫(ドラえもん)etc.
  • 石田彰:渚カヲル(エヴァンゲリオン)etc.
  • 山寺宏一:ジーニー(アラジン)etc.
  • 林原めぐみ:灰原哀(名探偵コナン)etc.
  • 山口勝平:ウソップ(ONE PIECE)etc.

 

そして、高座のシーンの演出は、まるで寄席の中にいるような気分になってきます。

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