落語のネタ

落語「らくだ」のあらすじと豆知識を紹介!

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「断るなら、死人を連れてきて、カンカンノウを踊らせてやる!」

「らくだ」のあらすじ

話の舞台は、町内の嫌われ者である「らくだ」というあだ名の男の家。

そこへ、兄貴分の「半次」が訪れるところから、物語は始まります。

半次

おう、らくだ!いるか?

半次

……ん?なんだ、寝てるのか。

半次

おい!起きろ!

そう言って、らくだを揺すぶって起こそうとすると、身体が冷たくなっていることに気づいた半次。

よく見ると、床には食べかけのフグが転がっています。

半次

お前まさか、フグに当たって死んじまったのか?

半次

こりゃ、大変なことになりやがったな。

そのとき、外から屑屋の久六の声が聞こえてきます。

屑屋とは?

江戸時代の廃品回収業者。家を回って、紙屑や骨董品、古着などの不用品を買い取り、それを専門の問屋へ売ることで生計を立てていた。

久六

くずやー、お払ーい!

半次

おーい!

久六

へーい!

久六

……って、あそこは、らくだの家じゃねえか。

久六

俺はあいつが大嫌いなんだよ。

半次

おーい!屑屋ー!

久六

あれ?

久六

でも、あそこで呼んでるのは、らくだじゃないね?

半次

屑屋ー!早くしろー!

久六

へい。お待たせしました。

半次

呼んだら、早くきやがれ。

久六

すみません。

久六

あの……ここは、らくださんの家ですよね?

半次

ああ、そうだ。

久六

らくださんは……?

半次

死んだ。

久六

へ?

半次

らくだは、死んだよ。

半次

あそこで転がってるだろ?

久六

たしかに、あそこで寝てるのは、らくださんのようですが……。

久六

本当に死んでるんですか?

半次

ああ。フグに当たったらしい。

久六

それは、ご愁傷様でございます。

久六

それで、あなたは……?

半次

“丁の目”の「半次」ってんだ。

久六

はあ。

半次

俺はらくだの兄貴分でね。

半次

野郎がこんなんなっちまったんで、葬式の真似事くらいしてやりてえんだ。

久六

そうですか。

半次

だが、俺は博打でスっちまって、金がねえ。

半次

だからお前、この家にあるものを買い取ってくれねえか?

久六

ああ、それはダメです。

久六

この家には前から出入りしてるんですが、めぼしいものは、全部引き取ってしまいましたんで。

半次

なに?

半次

このドンブリは?

久六

それは傷だらけで、使い物にならないんです。

半次

こっちの土瓶は?

久六

底が抜けてます。

半次

じゃあ、フグの食べ残しを買い取れ!

久六

冗談言わないでくださいよ!

半次

ちっ、仕方ねえなぁ。

半次

そしたらお前、月番の家に行ってこい。

月番とは?

長屋の住人が担当する、当番制の仕事のこと。その月の当番は、共用部分の掃除をしたり、祝儀・不祝儀の集金をしたりした。

半次

それで、そいつに「らくだが死んだから、香典を集めてこい」と伝えろ。

久六

嫌ですよ!

久六

あっしはこれから、商売に行かなくちゃいけないんですから。

半次

なんだと?

半次

俺が優しく言ってやってるうちに行かないと……どうなるか、わかるな?

久六

……行って来ます!

こうして屑屋は、月番の家へとやってきました。

久六

こんちは。

月番

おや、屑屋の久六じゃないか。

月番

今は屑はないよ?

久六

いえ、今日は、らくださんのことで……。

月番

らくだぁ?

月番

あんな奴の話なんて、聞きたくねえよ!

久六

それが、死んじゃったんです。

月番

らくだが?

久六

ええ。

月番

そりゃ、めでてえな!

月番

よし、長屋のみんなを集めて、お祝いしよう!

久六

それで今、らくださんの家に、兄貴分だっていう“丁の目”の「半次」って人が来てるんですが……。

久六

その人が「月番に香典を集めさせてこい!」って……。

月番

なんだと?冗談言っちゃいけねえよ!

月番

らくだは、長屋の鼻つまみ者なんだ。

月番

誰もあいつに香典なんて、払わねえよ!

久六

でも、その半次さんってのが、おっかない顔してまして……。

久六

言うことを聞かないと、大変なことになりそうなんです。

月番

そんなに怖い顔してるのかい?

久六

はい。

月番

……わかった。

月番

今日は、らくだが死んでめでたいからって、赤飯を炊く家もあるだろう。

月番

その赤飯の代金を、なんとか香典に回してもらえないか、みんなに話をしてやるよ。

久六

ありがとうございます!

久六

戻りました。

半次

おう、どうだった?

久六

月番さん、香典を集めてくれるそうです。

半次

それは、ありがてえな。

久六

じゃあ、そういうことで……。

半次

ついでに、もう一つ頼みたいことがあるんだ。

久六

ええ?

半次

今度は、大家のとこに行ってきてくれ。

久六

なんでですか?

半次

大家といえば、親も同然。店子といえば、子も同様。

半次

「親子の間柄なんだから、らくだの通夜のために、いい酒と煮しめを持ってこい」と伝えろ。

久六

いや、無理ですよ!

久六

だいたい、ここの大家はケチで有名なんですから!

半次

大丈夫だ。

半次

俺に秘策がある。

久六

なんです、秘策って?

半次

もし断られたら、「お前の家に死人を連れてきて、カンカンノウを踊らせてやる」と脅すんだ。

カンカンノウとは?

江戸時代から明治にかけて流行した、中国風の歌と踊り。

久六

ええっ!?

半次

さあ、行ってこい!

久六

で、でも……。

半次

俺が優しく言ってるうちに……

久六

わかりましたよ!行ってきますよ!

こうして、今度は大家の家を訪ねた屑屋。

久六

ごめんください。

大家

おや、屑屋の久六さんかい。

大家

屑なら、今はないよ。

久六

いや、今日は商売じゃなくて、らくださんのことで……。

大家

おい、嫌な奴の名前を出すなよ。

久六

実は、らくださんが死んだんです。

大家

本当か?どうして?

久六

フグに当たったんです。

大家

それは、でかした!

大家

フグもよく当てたよ!

久六

それで今、らくださんの家に、兄貴分だっていう、“丁の目”の「半次」って人が来てるんですが……。

大家

なに?らくだの兄貴分?

大家

どうせ、ロクな奴じゃないだろ?

久六

ええ、まあ。

久六

で、その人が、「大家といえば、親も同然。店子といえば、子も同様。親子の間柄なんだから、らくだの通夜のために、いい酒と煮しめを持ってこい」って……。

大家

私とらくだが親子?

大家

バカ言っちゃいけないよ。

大家

あいつは、この長屋に来てから、一度も家賃を払ってないんだよ?

久六

じゃあ、お通夜のご用意は……。

大家

しないよ!

大家

その兄貴分にも、そう伝えといてくれ!

久六

あの、あんまし逆らわないほうが……。

大家

どうしてだ?

久六

その兄貴分は、「断るなら、死人を連れてきて、カンカンノウを踊らせてやる」って言ってるんですよ。

大家

はっはっは、面白いじゃないか!

大家

死人のカンカンノウなんて見たことないから、ぜひ見せてほしいよ!

大家

ほら、帰った帰った!

久六

戻りました……。

半次

どうだった?

久六

ダメでした。

半次

なにぃ?

半次

カンカンノウのことは言ったのか?

久六

はい。

久六

「面白そうだから、見せてみろ」って、言ってました。

半次

よし、わかった!

半次

おい、屑屋。お前、らくだの死体を背負え!

久六

ええっ⁉︎

久六

嫌ですよ!!

半次

俺が優しく言ってるうちに……

久六

もー!わかりましたよ!!

半次

向こうに着いたら、お前はカンカンノウを歌え。

半次

俺がそれに合わせて、死体を踊らせる。

こうして、らくだの死体と一緒に大家の家を訪ねた屑屋と半次。

屑屋が歌うなか、半次は死体の骨をボキボキさせながら、踊らせます。

大家

うわー!!勘弁しとくれ!!

大家

なんでも持ってってやるから!

半次

言ったことを忘れんなよ?

半次

よし、屑屋。引き上げるぞ。

久六

へい。

こうして、屑屋と半次は、再びらくだの家に戻ってきました。

半次

よし、死体はそのへんに転がしとけ。

久六

へい。

半次

で、もう一つ頼みたいんだが……。

久六

今度はどこですか?

半次

八百屋に行って、死体を運ぶときに入れる「桶」を借りてきてほしいんだ。

半次

もし、断られたら……。

久六

カンカンノウですね?

半次

わかってきたじゃねえか。

久六

じゃあ、行ってきます。

背景(大通り・昼)
八百屋

おう、屑屋!

八百屋

らくだが死んだんだって?

久六

あれ、知ってるんですか?

八百屋

今、近所で噂になってるよ。

八百屋

で、なにか用かい?

久六

実は、らくださんの死体を入れるための桶を貸してもらいたいんです。

八百屋

嫌だよ!

八百屋

あいつは、うちから野菜を持っていくくせに、一度だって代金を払ったことがないんだ!

久六

そう言わずに、お願いしますよ!

久六

使い終わったら、洗って返しますんで。

八百屋

もっと嫌だよ!

久六

じゃあ、断るんですか?

八百屋

そのとおりだ。さっさと帰んな。

久六

そう言って、さっき大家さんは、大変なことになりましたよ?

八百屋

大変なことって?

久六

家に死体がやってきて、カンカンノウを踊ったんです。

八百屋

えっ……それは、本当か?

久六

本当です。

八百屋

……わかった。

八百屋

そこに転がってる、漬け物用の桶なら要らねえから、好きなのを持っていきな。

久六

ありがとうございます。

久六

あと、担ぐための天秤棒と縄も……。

八百屋

ああ、適当に持ってっていいよ。

久六

戻りました!

半次

おう、どうだった?

久六

死体を入れる桶と、担ぐ時に使う天秤棒と縄ももらってきました。

半次

でかした。

半次

お前のおかげで、無事に葬式の準備が整ったよ。

半次

ありがとな。

久六

いえいえ。

久六

じゃあ、あっしはこれで……。

半次

ちょっと待て。

半次

お前が行ってる間に、大家から酒と煮しめが届いたんだ。

半次

一杯飲んでいけよ。

久六

でも、あっしは、これから商売しなくちゃいけないんで……。

半次

いいじゃねえか、一杯くらい。

久六

でも……。

半次

俺が優しく言ってるうちに……

久六

わかりましたよ!いただきます!

半次が湯呑みになみなみと酒を注ぐと、屑屋はそれを一気に飲み干します。

半次

おっ!いい飲みっぷりしてやがんな。

半次

お前、酒好きだろ?

久六

ええ、実は……。

半次

よし、もう一杯飲め!

久六

いや、もう大丈夫です。

半次

いいから、いいから!

そう言って、再びなみなみと注がれた酒を、屑屋はまた一気に飲み干しました。

半次

いいねぇ!

半次

その飲みっぷり、気に入った!

半次

もう一杯飲め!

久六

いや、もうさすがに……。

半次

いいじゃねえか!

半次

駆けつけ3杯っていうだろ?

こうして、3杯目も飲み干した屑屋。

久六

あー……それにしても、いい酒ですね。

半次

そうだな。

久六

しみったれの大家が、こんな酒を持ってくるなんてねぇ。

久六

あの、お煮しめもいただいてよろしいですか?

半次

おう、どんどんやってくれ。

久六

ありがとうございます。

久六

お酒のほうも……。

半次

……ほらよ。

久六

あれ?親方!

久六

湯呑みに半分しか入ってませんよ?

久六

さっきみたいに、なみなみでお願いしますよ!

半次

仕方ねえなぁ……。

久六

それにしても、あんたは偉い!

久六

人の世話なんて、なかなかできるものじゃないよ。

久六

金があって、世話をするのは当たり前。

久六

でも、あんたは金がないのに、とうとう葬式の準備を整えちまった。

久六

あたしゃ、本当に偉いと思ったよ。

半次

そりゃ、どうも。

久六

……おい、酒が切れたよ?

久六

早く注ぎな。

半次

もう、そのへんにしときなよ。

半次

商いがあるんだろ?

久六

おいおい、みくびるんじゃねえぞ。

久六

俺は一日働かないくらいで困るような、しみったれな屑屋じゃねえんだ!

久六

さっさと注ぎやがれ!

半次

仕方ねえなぁ。

久六

あー、いい酒だ。

久六

だが、肴が良くねえな。

久六

田舎もんじゃあるめえし、イモの煮しめなんかで、酒が飲めるかよ!

久六

おい!

半次

ん?

久六

お前、魚屋に行って、マグロの刺身でも貰ってこい!

半次

貰ってこいったって、くれるかね?

久六

ぐずぐず言ってやがったら、カンカンノウを踊らせろ!

半次

よし、行ってこよう。

こうして、ベロベロになるまで飲んだ屑屋と半次。

気付くと、すっかり日も暮れていました。

久六

おい、半の字!

久六

隣からカミソリ借りてこい!

半次

なんで?

久六

らくだの頭を剃って、仏様にしてやるんだよ!

半次

なるほど。

半次

でも、よそ者の俺が行って貸してくれるかな?

久六

何をぐずぐず言ってやがんだ!

久六

俺が優しく言ってるうちに……。

半次

わかったよ!行ってくるよ!

半次はすぐに隣の家を訪ね、カミソリを借りてきました。

二人は、それを使って死体の頭を雑に剃ってから、八百屋で貰ってきた桶に詰め込みます。

久六

よし、できた。

半次

アニキ、これをどこに持っていきます?

久六

落合の火屋(火葬場)に、安公って友達がいるんだ。

久六

そいつに頼んで焼いてもらおう。

半次

わかりやした。

こうして泥酔状態のまま、死体の入った桶を担いで出発した二人。

千鳥足なので何度も転びながらも、やっとのことで落合の火屋に到着しました。

久六

おーう、安っさーん!

安公

お、屑屋の久さんじゃねえか!

安公

今、一杯やってたんだよ。

安公

一緒に飲まねえか?

久六

その前に、ちょっと焼いてもらいたいんだよ。

安公

いいよ。誰を焼くんだ?

久六

この桶の中に入ってる人。

安公

……ん?誰も入ってないぞ?

久六

ええ?

久六

……ああ、本当だ。

久六

たぶん、来る途中で転んだときに、落としちゃったんだ。

久六

おい!探しにいくぞ。

半次

へい。

屑屋と半次が急いで来た道を戻ると、坊主頭の男が道に転がっていました。

しかし、実はこの男は、らくだではなく、どこかの坊主が酔っ払って寝ていただけ。

泥酔している二人はそうとは気付かず、その人を桶に詰め込みます。

坊主

うーん……。

久六

なにを唸ってるんだ?

坊主

なにしてる?

久六

お前を火屋に連れてくんだよ。

坊主

なんで?

久六

お前を焼くんだ。

坊主

そんなの、やだよ。

久六

死んだくせに、生意気言うな!

久六

よし、やっと着いた。

久六

おーい、安っさん!

久六

こいつをどうすればいい?

安公

そこの火の中にぶち込め!

久六

よしきた!

こうして、生きたまま火の中に放り込まれた坊主は、熱くて桶から飛び出してきました。

坊主

あちちっ!

坊主

おい、ここはどこだ?

久六

落合の火屋だよ。

坊主

ヒヤ?

「冷酒でいいから、もう一杯」

ー完ー

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「らくだ」の豆知識

  • 別題は「らくだの葬礼」。
  • このネタは、五代目 古今亭志ん生と八代目 三笑亭可楽が十八番にしていた。
▼おすすめの落語アニメ▼


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