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落語「三軒長屋」のあらすじと豆知識を紹介!

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「先生、聞きましたか?あっしたち、ここの長屋を追い出されるみたいですよ?」

「三軒長屋」のあらすじ

話の舞台は、「三軒長屋」。

ここは、いつもの落語に出てくるような貧乏な長屋ではなく、2階建ての立派な部屋が3つ連なる長屋です。

そのうちの1室に住んでいるのは、剣道の師範。

彼は、1階部分をすべて道場にして、毎日、夜遅くまで弟子に稽古をつけています。

真ん中の部屋に住んでいるのは、伊勢屋という大きな店の旦那の愛人。

彼女は、女中さんと2人で静かに暮らしています。

そして、残りの1室には、大工の棟梁が住んでいました。

物語は、その棟梁の奥さんが1人で家にいるところへ、大工の若い衆が訪ねてくるシーンから始まります。

若い衆

こんちは。

棟梁の妻

やあ、辰さんかい。

若い衆

棟梁はいますか?

棟梁の妻

いないよ。

棟梁の妻

もう3日も帰ってきてないんだ。

棟梁の妻

どうせ、吉原にでも行ってるんだろ。

若い衆

そうですか……。

若い衆

実は、頼みがありまして。

棟梁の妻

なんだい?

若い衆

おかみさんに首を縦に振ってもらわないと、あっしの顔が潰れるんです。

棟梁の妻

ほう。

棟梁の妻

まぁ、とにかく言ってみなよ。

若い衆

お宅の2階を貸してくれませんか?

棟梁の妻

やだよ。

棟梁の妻

あんたたちは、いつも2階に来てはバカ騒ぎするじゃないか。

棟梁の妻

そのたびに、こっちは迷惑してんだよ。

若い衆

お願いです!

若い衆

今日は、喧嘩してる仲間の仲直りの会を、パーっとやりたいんです!!

棟梁の妻

……わかったよ。

棟梁の妻

でも、あんまり騒ぐんじゃないよ?

若い衆

はい!

棟梁の妻

で、その宴会は、いつやるんだい?

若い衆

今からです!

棟梁の妻

ええ?

若い衆

実は、みんな表で待ってるんです。

棟梁の妻

仕方ない奴らだねぇ。

棟梁の妻

いいよ、早く入れてやんなよ。

奥さんの許しを得た若い衆は、仲間を呼び入れて、2階で宴会を始めます。

始めこそ、静かに飲んでいた彼らですが、酒が入ってくると声も大きくなり……。

しまいには、大喧嘩を始めてしまいました。

一方その頃、三軒長屋の道場では、厳しい稽古の真っ最中。

「メーン!ドー!コテー!」と大きな声を響かせています。

たまらないのが、この2部屋に挟まれている、伊勢屋の愛人の家。

右からも左からも、男の大声が響いてくるので、愛人は女中さんと身を寄せ合って、怯えていました。

そこへ、伊勢屋の旦那が訪ねてきます。

伊勢屋

おい、来たよ。

愛人

あっ!いらっしゃい。

伊勢屋

今日も、この長屋は騒がしいね。

愛人

そうなんです。

愛人

私はもう、頭が痛くなっちゃって……。

愛人

旦那。私を助けると思って、引っ越しさせてくださいな。

伊勢屋

まぁ、それでもいいが……。

伊勢屋

両隣に出ていってもらうのはどうだろう?

愛人

そんなこと、できるの?

伊勢屋

できるさ。

伊勢屋

住んでるのは、へっぽこ剣術の師範に、大工の芋頭だろ?

伊勢屋

いくらか銭をやれば、すぐに追っ払えるよ。

伊勢屋

それで奴らが出ていったら、3部屋を1つにして住めばいい。

このとき話を傍で聞いていた女中さんは、ついつい井戸端で、この計画を奥さん連中に話してしまいます。

当然、近所で噂は回り、ついには棟梁の奥さんの耳にも入りました。

そんなところへ、やっと棟梁が家に帰ってきます。

棟梁

おう、帰ったよ。

棟梁の妻

あら、ずいぶんお久しぶりね。

棟梁

うん……まぁ、そうだな……。

棟梁の妻

それより、聞いてよ。

棟梁の妻

私たち、伊勢屋の旦那に、ここを追い出されるみたいよ?

棟梁

なに?本当か?

棟梁の妻

本当よ。

棟梁の妻

道場の先生も追い出して、3部屋を1つにして住むんだってさ。

棟梁の妻

あんた、なんとかしてよ!

棟梁

うーん……わかった。

棟梁

ちょっと話をしてくるよ。

そう言った棟梁は、隣の愛人の部屋を飛ばして、剣道の師範の部屋を訪ねました。

棟梁

ごめんください。

師範

おお、親方。

師範

これはこれは。

棟梁

先生、聞きましたか?

棟梁

あっしたち、ここの長屋を追い出されるみたいですよ?

師範

なんだ、その話は?

棟梁

なんでも真ん中の伊勢屋が、こっちは喧嘩ばっかり、そちらは稽古ばっかりでうるさいから、両方とも追い出して、3軒を1つにして住むそうです。

師範

なにぃ?

師範

この家は、拙者の城も同然。

師範

それを潰そうとは、城攻めにも等しきことだ!

棟梁

でね、ちょっとあっしに考えがあるんですが……。

ここで棟梁は、師範に“とある計画”を話しました。

さて、その翌日。

師範は、伊勢屋の愛人の家を訪ねます。

師範

ご免。

愛人

まぁ、先生。

愛人

おはようございます。

師範

うむ。

師範

旦那はおるか?

愛人

ええ。

愛人

旦那。お隣の先生がいらっしゃいました。

伊勢屋

おや、これはどうも。

伊勢屋

いつもお世話になっております。

師範

うむ。

師範

実は拙者、転宅をすることになり、その挨拶に参ったのである。

伊勢屋

お引っ越しですか?

伊勢屋

これまた、どうした訳で?

師範

ここのところ弟子が増えて、ちと手狭になってな。

師範

近くに良い部屋があったものだから、そこへ越そうと思っておる。

伊勢屋

そうでしたか。

師範

ただ、転宅するにも、銭がかかる。

師範

そこで、「千本試合」をして、金を集めようと思っておるのだ。

伊勢屋

千本試合?

師範

江戸中の剣客を我が道場に招き、試合をするのだ。

師範

その際、それぞれいくらかの金を包んで参るゆえ、それを転宅の費用にあてるというわけだ。

伊勢屋

それでは、これからお宅で千本も試合をするんですか?

師範

きっちり千本というわけではないが、それに近い試合をいたす。

師範

その際、相手が望めば、「真剣」での試合もある。

師範

場合によっては、斬られた腕や首が、こちらの庭に飛んでくることもあるゆえ、この3日ほどは戸締りをして、決して外には出ないようにしていただきたい。

伊勢屋

ええっ⁉︎

伊勢屋

あの……恐れ入りますが、試合は引っ越しの費用のためということですので……。

伊勢屋

そのお金を、私が立て替えるわけにはいかないでしょうか?

師範

せっかくの厚意だが、断る。

師範

拙者はこの通りの暮らしで、返す金のあてがないのでな。

伊勢屋

いえ、「有る時払いの催促なし」で、返していただかなくても結構でございます。

伊勢屋

引っ越しの費用は、いくらほどかかりますでしょうか?

師範

まぁ、50両もあれば、なんとかなるだろう。

伊勢屋

かしこまりました。

伊勢屋

ここに50両ございますので、どうぞお納めください。

師範

左様であるか。かたじけない。

師範

ならば、遠慮なく借用いたす。

伊勢屋

ええ。

伊勢屋

それで、お引っ越しはいつ?

師範

明朝に越そうと思っておる。

伊勢屋

それは、お早いことでございますな。

伊勢屋

ことによっては、お見送りできないかもしれませんが……。

師範

ああ、それには及ばぬ。

師範

では、達者で暮らしてくれよ。ご免。

それから少しして、今度は棟梁が訪ねてきます。

棟梁

おはようございます。

愛人

まあ、親方。おはようございます。

棟梁

旦那はいらっしゃいますか?

愛人

ええ。

愛人

旦那。親方がいらっしゃいましたよ。

伊勢屋

はいはい。

伊勢屋

おや、棟梁。久しぶりだね。

棟梁

ご無沙汰してます。

棟梁

実は、引っ越しをすることになりまして……。

伊勢屋

え?棟梁もかい?

棟梁

このところ若い者が増えてきて、手狭になってきてたんです。

棟梁

それで、家を探してたら、近くにいい場所があったんで、越すことにしました。

伊勢屋

それは寂しくなるねぇ。

棟梁

ただね、引っ越しをしようにも、こちとら銭がねえ。

棟梁

だから、うちで賭場を開いて、金を集めようと思ってるんです。

伊勢屋

そ、そうか。

棟梁

それでなんですがね……賭場に集まってくる奴らの中には、気の荒い野郎もいます。

棟梁

ことによったら、喧嘩になって、殴られた奴がこっちの庭に飛ばされてくるかもしれません。

棟梁

申し訳ねえが、3日くらいはよく戸締りをして、外に出ないでいてくれませんか?

伊勢屋

うーん……。

伊勢屋

こちらは女二人で住まわしてるから、そういう物騒なことはしないで欲しいんだが……。

伊勢屋

どうだろう。私が引っ越しの費用を貸してやろうか?

棟梁

それは助かりますが……借りても、いつ返せるかわかりませんよ?

伊勢屋

別に返してもらうのは、いつだっていいんだ。

伊勢屋

なんなら、返さなくてもいい。

伊勢屋

いくら要るんだ?

棟梁

50両もあれば……。

伊勢屋

それくらいなら、ここにある。

伊勢屋

持っていきなよ。

棟梁

すみません。ありがとうございます。

伊勢屋

で、引っ越しはいつするんだ?

棟梁

明日の朝です。

伊勢屋

ええ?

伊勢屋

お隣の先生も、明朝に引っ越すと言ってたんだよ。

伊勢屋

棟梁は、どこに越すんだい?

棟梁

ああ。

棟梁

先生があっしの家に越してきて……

「あっしが先生のとこに越します」

ー完ー

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「三軒長屋」の豆知識

  • 噺に登場する棟梁の名前は「政五郎」で、剣道の師範は「楠運平橘正国(くすのきうんぺい たちばなのまさくに)」、伊勢屋の旦那は「伊勢屋勘右衛門」で「伊勢勘(いせかん)」と呼ばれる。
  • 別題は「楠運平」。
  • 原話は、中国の『笑府』という本に収められている「好静」だといわれる。
  • 長編に及ぶため、棟梁の家で若い衆が大喧嘩をするあたりで切って、前編・後編に分けることもある。
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