「夢と悟った“一郎兵衛”たぁ、俺のことよぉ〜!」
「芝居の喧嘩」のあらすじ

江戸時代の芝居小屋では、木戸銭(入場料)を払って中に入るときに、「半畳」と呼ばれる小さな座布団が渡されました。

この半畳は、今でいう「半券」の役割もあり、芝居の休憩中には、係員が客席を回って、半畳を敷いているかどうか確認したそうです。
そこで、無賃で入場した「伝法(でんぼう)」が紛れ込んでるのがわかると、その人をとっ捕まえて小屋から追い出しました。
この話の舞台となる、猿若町の中村座にも、伝法がいたようで……。
ちょっと、そこのお客さん。
半畳はお持ちですか?
ねえよ。
それは、誰かに貸しちまったんですか?
それとも、ハナから無いんで?
ハナからねぇんだ。
腰が突っ張って仕方ねぇから、はやく2、3枚持ってきやがれ。
すいませんがね、空いてるときならまだしも、今日はご覧のとおり満席なんで……。
伝法の方は、ご遠慮いただけませんか?
なに?伝法だと?
ここで客は立ち上がり、係員を小突きました。
いい加減なこと言ってんじゃねぇ!
あっ!!伝法のくせに手を出しやがった!
おーい、みんな来てくれ!
伝法が紛れ込んでんだ!
係員の声を聞き、店の若い衆がゾロゾロと集まってきます。
そして、寄ってたかって、この客のことをボコボコにしました。
何しやがるんだ!
俺は、伝法なんかじゃねえ!
木戸銭を払ったら、ちょうど半畳が切れてて、後で席まで持ってきてくれることになってたんだよ!
えっ?
受付の女の子に確認すると、どうやらこの客が言っていることは本当のようです。
俺を誰だと思ってやがる?
江戸は花川戸、幡随院(ばんずいいん)長兵衛の子分「雷の重五郎」ってんだ!
ば、幡随院って、このあたりを締めてる侠客の……?
さぁ、殺すなら殺しやがれ!
そんで、殺した後の亡骸は、幡随院まで届けろ!
この騒ぎを2階席から眺めていたのが、旗本奴(はたもとやっこ)の「白柄(しらつか)組」。
旗本の青年武士たちが集まって結成した、不良集団。
彼らの大将は、幡随院長兵衛とは犬猿の仲だった、「水野十郎左衛門」という武士でした。
その水野に指示されて、一人の若侍が重五郎と係員が揉めているところへ近づいてきます。
おい、重五郎とやら。
皆が楽しんでいる芝居の邪魔をするな。
あ?
誰だ、お前は?
白柄組四天王の一人、「金時金兵衛」と申す者だ。
貴様のようなヒヨッコでは、相手にならん!
長兵衛を連れてこい!
そう言い放った金兵衛は、重五郎の胸ぐらを掴んで引きづり回し、そのまま小屋の外に投げ捨ててしまいます。
これにて一件落着……と思いきや、今度は別の男が金兵衛に近づいてきました。
そして、いきなり横っ面をぶん殴ったので、金兵衛は床に倒されてしまいます。
うわっ!!
白柄組の下っ端が、偉そうにしてんじゃねえ!
俺は幡随院長兵衛の一の子分、「唐犬の権兵衛」だ!
おい、水野!2階から降りて来やがれ!
その権兵衛の後ろから、今度は白柄組四天王の一人、「渡辺綱右衛門」が迫ります。

そして、綱右衛門が権兵衛を切り捨てようと、刀に手をかけたところで……
また別の男が綱右衛門の手を掴み、一本背負いで投げ飛ばしました。
おうおう。後ろから切ろうなんざ、卑怯なマネをしやがって!
俺を誰だと思ってる?
幡随院長兵衛の四天王の一人。浮世は夢の五十年。長い浮世に短い命。義侠に張ったこの身体。夢と悟った「一郎兵衛」たぁ、俺のことよぉ〜!

歌舞伎役者のような見栄を切って登場した一郎兵衛。
一部始終を2階から見ていた、白柄組大将の水野はついに痺れを切らし、周りの部下たちに目配せをしました。
それを合図に、一斉に刀を抜いた武士たち。
小屋に紛れ込んでいた幡随院の子分たちも、すぐに立ち上がって応戦します。
さぁ、いよいよ白柄組と幡随院の任侠たちによる、血で血を洗う大修羅場。
ここからが面白いところですが……
「続きは、また明日」
ー完ー
「芝居の喧嘩」のオチ(サゲ)
「芝居の喧嘩」のオチは、「講談」のパロディになっています。
昔の講談は、寄席でよく「連続物」を演じていたのですが、いい場面で終わらせて、お客さんに次の日も来てもらおうとしていたそうです。
このネタは、全編にわたって「講談調」で演じられ、終わり方まで講談を真似ています。
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