落語のネタ

落語「品川心中」のあらすじ・オチ・豆知識を紹介!

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「おーい、金ちゃん!お金ができたらしいから、上がっといでー!」

「品川心中」のあらすじ

この話の主人公は、品川の「白木屋」という妓楼の「お染」という女郎。

若い頃は、売れに売れた彼女でしたが、女の盛りを超えてからは、人気に陰りが見えてきました。

そこへ、「紋日(もんび)」が迫ります。

紋日とは?

遊郭のイベントデー。

その日、遊女は新しい着物をお披露目し、周りに手拭いを配ったりする。

紋日が迫ると、なにかと出費がかさむもの。

その金を集めるため、お染は馴染みに手紙を出して頼みましたが、なかなか良い返事をもらえませんでした。

お染

私も落ちたねぇ……。

お染

これしきの金も集められないで。

お染

このまま、恥ずかしい思いをするくらいなら、いっそのこと、死んでしまおうかしら……。

しかし、一人で死んだのでは、「金に困って死んだ」と思われて癪なので、お染は自分と心中してくれる男がいないかと考え始めます。

「馴染み帳」をめくりながら探していると、ちょうどいい男が見つかりました。

お染

ああ、金ちゃんでいいや。

お染

あの人は独り身だし、私が一緒に死んでも、誰にも恨まれないだろうしね。

お染

大飯食いで、しみったれで、スケベな男だから、むしろ死んだほうが世のためになるよ。

さっそく、この貸本屋を営む「金蔵」という男に手紙を書いたお染。

金蔵は、彼女の思惑も知らずに、のこのこと白木屋にやってきます。

金蔵

お染、来たよ。

金蔵

俺に手紙をくれるなんて、珍しいじゃねえか。

お染

金ちゃん、来てくれてありがとうね。

お染

実は、話があるんだよ……。

金蔵

話って?

お染

私ね……もう死のうと思うの……。

金蔵

死ぬ?どうして?

お染

私みたいな女が死ぬっていうのよ?

お染

お金のほかに何がある?

金蔵

なんだ、水臭いな。

金蔵

俺とお前は、夫婦になる約束までしてる仲じゃねえか。

金蔵

金のことなら、俺に任せろよ。

お染

金ちゃんが助けてくれるの?

金蔵

ああ、もちろん。

金蔵

いくら要るんだ?

お染

50両。

金蔵

えっ?ご、50両!?

金蔵

それは……厳しいな……。

お染

どれくらいなら、なんとかなるの?

金蔵

家にあるものを全部売っぱらって……1両かな。

お染

1両⁉︎

お染

それじゃあ、何にもならないね。

金蔵

ああ、そうだな……。

お染

いいのよ。

お染

別に私は、あなたから金を貰おうと思ってたわけじゃないから。

お染

ただ、死ぬ前に一目、会いたかったの……。

金蔵

おい、寂しいこと言うなよ!

金蔵

お前が死んだら、俺だって死にたくなっちゃうよ……。

お染

本当?

お染

なら、私と一緒に死んでくれる?

金蔵

……あ、ああ、いいよ。

お染

嬉しい……。

お染

あのね、今ここに、カミソリが2つあるの。

お染

これで喉を……。

金蔵

あっ、いや、ちょっと待て!

金蔵

せっかく死ぬなら、派手に死のうじゃねえか!

お染

“派手に”って?

金蔵

さっき言ったように、俺の家にあるもんを全部売ったら、1両くらいにはなる。

金蔵

その金で白装束を用意して、それを着ながら、刀で腹を切って死ぬんだよ。

お染

……まぁ、私は死ねれば、なんでもいいけどさ。

こうして、金蔵が白装束と刀の準備をするため、心中は翌日に延期することに。

その晩、お染は金蔵が逃げないように、最高のもてなしをしました。

こうして骨抜きにされた金蔵は、翌朝に帰宅すると、家にあるものを全部売り払ってしまいます。

それで手に入れた金で、白装束と刀を購入。

とりあえず心中の準備が整った金蔵は、今まで世話になった兄貴分の家に挨拶に行きます。

金蔵

アニキ、こんちは。

アニキ

おう、金蔵か。

アニキ

どうした?

金蔵

実は、これから長い旅に出ますんで、挨拶に来ました。

アニキ

ほう。どこに行くんだ?

金蔵

西の方へ……。

アニキ

西っていうと、大阪か?

金蔵

いえ、西方浄土に……。

アニキ

なに冗談を言ってるんだよ。

アニキ

帰りはいつになる?

金蔵

来年のお盆には、帰って来られるかもしれません。

アニキ

そうかい。

アニキ

まぁ、気をつけていってきなよ。

こうして、兄貴分の家を後にした金蔵は、そのまま品川へと向かいます。

お染

まぁ、金ちゃん。おかえり。

お染

よく戻ってきてくれたね。

金蔵

当たり前だろ?

お染

どうせ死んじゃうんだし、今日は勘定は気にせず、飲みたいだけ飲んじゃいな。

金蔵

ああ、そうしよう。

それから金蔵は、飲むわ食うわで、ベロベロに酔っ払い、いびきをかきながら寝てしまいました。

お染

金ちゃん。ちょいと起きとくれよ。

金蔵

うーん……。

お染

私と一緒に死ぬんだろ?

金蔵

ああ、そんな話もあったな……。

お染

早く準備をしとくれよ。

金蔵

……わかったよ。

金蔵

そこの風呂敷の中に、白装束と刀が入ってるだろ?

お染

これかい?

お染

……白装束はあるけど、刀はないね。

金蔵

しまった!

金蔵

アニキの家に忘れてきたんだ!

お染

仕方ないねぇ。

お染

まぁ、ここにカミソリがあるから……。

金蔵

いや、カミソリはやめよう!

金蔵

薄い刃で切ると、治りが遅いって言うし……。

お染

どうせ死ぬんだから、関係ないだろ!

お染

そしたら、庭に出よう。

金蔵

ええ?

金蔵

首くくるのは嫌だよ?苦しそうだし。

お染

いいから、付いておいで!

こうして妓楼の庭に出た、お染と金蔵。

それから、錠のかかった木戸を無理矢理こじ開けると、目の前には品川の海が広がっています。

お染

あの桟橋から、海に飛び込むんだよ。

金蔵

怖いなぁ……。

お染

なに言ってんだい、男だろ?

お染に背中を押されながら、金蔵はやっと桟橋の先端まで辿り着きます。

お染

金ちゃん、先に飛び込んどくれ。

お染

私も後から行くから。

そう言って、思い切り金蔵の背中を押したお染。

金藏が海に落ちると、「どぼーん」という大きな音があたりに響きました。

これに続いて彼女が飛び込もうとした、その時……。

店の若い衆

お染さん!!

お染

は、放しとくれ!

店の若い衆が、お染に駆け寄って、後ろから羽交締めにします。

店の若い衆

お染さん、お金のことで死ぬ気になったんだろ?

店の若い衆

たった今ね、馴染みの旦那が50両持ってきてくれたよ。

お染

えっ?

店の若い衆

それで、お染さんの部屋に行ったら、カミソリが転がってたから……。

店の若い衆

「もしや」と思って、慌てて探しにきたんだ。

お染

お金ができたって……?

店の若い衆

ああ、お金を持ってきてくれた旦那は部屋で待ってるよ。

店の若い衆

それでも死ぬかい?

お染

もっと早く来てくれよ!

お染

今、人を突き落としちゃったんだよ!

店の若い衆

ええ⁉︎誰を⁉︎

お染

金ちゃん!

店の若い衆

ああ、貸本屋の金蔵さんか。

店の若い衆

あの人なら、いいでしょ。

お染

よかないよ!

お染

おーい、金ちゃん!

お染

お金ができたらしいから、上がっといでー!

お染が呼びかけても、金蔵からの返事はありません。

お染

もう流されちゃったのかしら……。

お染

金ちゃん、ごめんね。

お染

私もいずれ死ぬだろうから、それまでは一人で頑張ってるんだよ。

お染

……じゃあね。

そう言い残して、お染は若い衆と店に引き上げていってしまいました。

さて、その頃、金蔵は……。

水をガブガブ飲んで溺れかけ、死に物狂いで、もがいていると、なんと底に足が付きました。

立ち上がってみると、なんと水深は腰のあたりまでしかありません。

金蔵

なんだ、足がつくじゃねえか!

金蔵

それにしても、あの女……許せねぇ……。

そう呟いた金蔵は、ずぶ濡れのまま、兄貴分の家に向かいます。

金蔵が家に到着したとき、アニキは仲間を集めて、博打をしていました。

アニキ

おや、戸を叩く人がいるね?

アニキ

こんな時間に、誰だろう?

アニキの仲間A

まさか、役人じゃ……。

アニキの仲間B

うわー!逃げろー!!

アニキ

おい、みんな落ち着けって!

博打をしていたのがバレたらまずいと、アニキの仲間たちはパニック状態に。

しかし、アニキが戸を開けると、そこに立っていたのは金蔵でした。

金蔵

アニキ……。

アニキ

なんだ、金蔵か。

アニキ

ずぶ濡れになって、どうしたんだ?

アニキ

とにかく、中に入れよ。

アニキが金蔵を招き入れると、さっきのパニックで室内はめちゃくちゃになっています。

アニキ

おい!誰だい、天井の梁にしがみついてんのは?

アニキの仲間A

へえ、すぐ降ります。

アニキ

お前は、漬け物の桶に落っこちてるじゃねえか!

アニキの仲間B

す、すみません……。

アニキ

ほら、みんな見てみろよ。

アニキ

先生は武士なだけあって、落ち着いて座ってるぞ。

アニキの仲間C

いや、手前はとうに腰が抜けております。

アニキ

ダメだこりゃ。

しばらくして、みんなが落ち着いてから、アニキは金蔵に話を聞きます。

そこで金蔵は、品川の妓楼での出来事を話しました。

アニキ

そりゃひどい話だな。

金蔵

そうでしょ?

アニキ

よし、ひとつ仕返しをしてやろう。

金蔵

仕返しって、どうやって?

ここでアニキは、金蔵に“とある作戦”を話しました。

そうしているうちに夜が明け、次の日のこと。

金蔵は黄昏時を待ってから、お染の店へと向かいます。

金蔵

こんばんわ……。

店の若い衆

あれ?き、金蔵さん?

金蔵

お染は……?

店の若い衆

は、はい。おります。

若い衆は金蔵を部屋に案内してから、急いでお染のところにやってきます。

店の若い衆

お染さん!お染さん!

お染

なんだい、大きな声を出して?

店の若い衆

た、大変だ!

店の若い衆

金蔵さんが来たよ!!

お染

ええ?

お染

だって、死んだはずじゃ……。

店の若い衆

とにかく、部屋に行って、見てきてよ!

言われるままに、金蔵の待つ部屋にやってきたお染。

お染

金ちゃん……?

金蔵

ああ、お染か……。

お染

あなた、助かったの……?

金蔵

それが、生きてるのか、死んでるんだか、わからねぇんだ……。

金蔵

三途の川が見えたから、慌てて引き返してきたんだよ……。

お染

ええ?

お染

とにかく、今日はお代はいいから、何か食べたり飲んだりしなよ。

金蔵

酒はいらないから、水をくれ……。

お染

お水でいいの?食べ物は?

金蔵

白い団子が食べたい……。

お染

何もついてない団子なんて、美味しくないでしょ?

お染

とりあえず、何か持ってきてあげるから、ここで待ってなよ。

金蔵

ありがとう……。

金蔵

ただ、あんまり調子が良くないから、少しだけ横にならせてくれ。

そう言われたお染は、布団を用意してやってから、部屋を出ます。

するとそこへ、また若い衆がやってきました。

店の若い衆

お染さん。今度は二人組のお客様が来て、「話がある」と言ってるよ。

お染

はいはい、今行くね。

お染

どうも、お待たせしました。

アニキ

あなたが、お染さんですか?

お染

ええ。

アニキ

貸本屋の金蔵って男をご存知ですよね?

お染

存じておりますが……。

アニキ

実は、こっちにいるのは、金蔵の弟なんです。

アニキの仲間B

どうも。

お染

はあ。

アニキ

その金蔵なんですが、実は今朝、土左衛門になってるのが見つかりまして……。

土左衛門とは?

水死体のこと。

アニキ

聞けば、金蔵はあなたと夫婦になる約束までした仲だそうで。

アニキ

一応、あなたにも金蔵のことを知らせとこうと思って、ここまで来ました。

お染

金ちゃんが亡くなった……?

アニキ

はい。もう、弔いも済んでいます。

お染

でも……金ちゃんは今、うちの店に来てますよ?

アニキ

いやいや、そんなはずないですよ。

アニキ

確かに、金蔵は死んだんですから。

お染

でも、さっきまで、私と喋ってたんです!

アニキ

もしかして……金蔵は化けて出たんじゃ……。

お染

えっ?

アニキ

ここで話してても、仕方ねえ。

アニキ

みんなで金蔵のところに行きましょう!

というわけで、お染たちは、金蔵が寝ている部屋にやってきます。

しかし、さっきまで居た彼の姿が見当たりません。

お染

あれ?

お染

さっきまで、この布団の中に……きゃー!!

お染が布団をめくると、中から位牌が出てきました。

アニキの仲間B

これは……兄の位牌です!

アニキ

金蔵がこんな風に化けて出るなんて……。

アニキ

生前に、あなたと何かあったんですか?

ここでお染は、昨日の心中のことを洗いざらい話します。

アニキ

そりゃあ、あんたが悪いよ。

アニキ

もしかしたら、これからも、金蔵はここに化けて出続けるかもしれねえな。

お染

どうしたら、金ちゃんは成仏してくれますか?

アニキ

そうだなぁ……。

アニキ

頭を丸めて、お寺でお経をあげれば、あるいは……。

お染

……わかりました。

そう言うと、お染はカミソリを使って、自分の髪を剃り落とします。

アニキ

あっはっは!

アニキの仲間B

本当に坊主になっちゃった!

お染

……え?

アニキ

おーい、金蔵ー!

アニキ

出てこいよー!

その声を合図に、金蔵が部屋に入ってきます。

金蔵

へいへい。

アニキ

お前、なんかクサいぞ?

金蔵

ずっと便所に隠れてたからね。

お染

え?金ちゃん?

お染

あなた、幽霊なの?

金蔵

いやいや、俺はまだ生きてるよ。

お染

もしかして……あんたら、私を騙したね!!

金蔵

最初に騙したのは、そっちじゃねえか。

金蔵

これで、おあいこだ。

お染

おあいこじゃないよ!

お染

私はこうして髪を剃って……しばらく店に出られないじゃないか!

アニキ

まあまあ、お染さん。

アニキ

そんなに怒りなさんな。

お染

だって……!

アニキ

あんたが、あんまり客を釣るもんだから……

「ビクにされたんだ」

ー完ー

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「品川心中」のオチ(サゲ)

最後のセリフの「ビクにされた」は、「魚篭(びく)」と「比丘尼(びくに)」の2つの意味がかかっています。

まず、「魚篭」とは、釣った魚を入れておくカゴのこと。

1つ前の「あんまり客を釣るもんだから……」というセリフとつながっています。

そして、「比丘尼」とは、女性の僧侶の「尼さん」のことで、頭を剃ってしまったお染のことを指しています。

なお、「品川心中」が公演される際は、最後まで演じられることは稀で、金蔵が溺れた後にアニキの家を訪ねるシーンで切られることが多いです。

その際には、室内がパニック状態になった後で、武士の男が言う「いや、手前はとうに腰が抜けております」というセリフあたりでサゲとなります。

そこまでが品川心中の「上」、それ以降を「下」として、下には「仕返し」という別題もあります。

「品川心中」の豆知識

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