落語「夢金」のあらすじ・オチ・豆知識を紹介!

「この間抜け野郎!ざまぁみやがれ。俺は、この子を助けるよ!」
「夢金」のあらすじ

江戸に雪が降りしきる夜のこと。
船宿の二階から、「100両欲しい〜。100両ぅ〜」という声が響きます。
熊蔵の奴、また寝言を言ってるよ。
それにしても、夢の中でまで金を欲しがるなんて、欲深い奴だねぇ。
そこへ「開けてくれ」と、この船宿に誰かが訪ねてきました。
主人が戸を開けると、汚い身なりの侍ときれいな着物を着た若い娘が立っています。
おや、お客さんか。
さあさあ、どうぞお入りください。
寒かったでしょう?
うむ。
妹を連れて芝居の見物に行っていたのだが、帰りはこの大雪に降られてしまってな。
駕籠で帰ろうにも捕まらず、屋根舟に乗ろうと思い、ここへ参った。
そうでしたか。
ただ、あいにく今、舟はあるのですが、船頭たちが出払ってまして……。
左様か。それは困ったな。
そのとき二階から、また「100両欲しい〜」という声が聞こえてきます。
今の声は何だ?
二階で寝てる熊蔵の寝言です……。
あいつも船頭なんですが、欲が深くて、乗せた客に酒手をねだるもんで、馴染みの方以外には付けられないんですよ。
駕籠や舟に乗ったとき、決められた料金に上乗せして払う“心づけ”のこと。西洋風に言うと、チップ。
ほかに船頭がいなければ仕方ない。
酒手は十分に遣わすゆえ、その熊蔵とやらを呼んでくれぬか?
そうですか。
ちょっと上に行って、話をしてきます。

船宿の主人は、すぐに二階に上がり、熊蔵を起こします。
おい、熊蔵。起きろ。
うーん……人が気持ちよく寝てたところを起こしやがって……。
悪いがね、船を出してくれないか?
こんな寒い日に嫌だよ!
まぁ、そう言うなよ。
お客さん、「酒手は十分に遣わす」とおっしゃってたぞ?
すぐに支度します。
熊蔵は寝床から飛び起き、手際よく出航の準備を整えました。

お客さん、お待たせしました!
さあさあ。雪で濡れますんで、すぐ屋根の下に入ってくださいね。
こたつも温まってますよ。
こうして侍と娘を舟に乗せ、勢いよく漕ぎ出した熊蔵。
しかし、今日は冷えるなぁ……。
それで、酒手はいつ貰えるのかねぇ?
熊蔵が二人のほうへ目をやると、娘はこたつにうつ伏せになって、すやすやと眠っていました。
その寝顔を、侍がジロジロと眺めています。
なんだい、妹の顔なんて飽きるほど見てるだろうに、あんなに覗き込んで。
……わかった。妹なんて真っ赤な嘘で、あの二人はデキてるんだ!
酒手も出さねえうちに、妙なことを始めるんじゃねえだろうな?
よし、舟を揺らして女を起こしてやれ!
わざと船を揺らし始めた熊蔵。
すると、侍が熊蔵のもとに駆け寄ってきました。
おい、どうした!
やけに船が揺れるな?
そうなんです。
酒手が出るまで、揺れ続けるんです。
貴様、聞くとおり欲深い男だな。
それを見込んで、金儲けの話があるんだが……。
お、どんな話です?
実はな、あの女は拙者の妹ではない。
往来で犬に追われていたのを、助けてやったのだ。

あとで話を聞くと、あいつは大きな商家の娘で、惚れた男を追って、家を飛び出したとのこと。
その際、家の金を懐に入れてきたらしいんだが、その額、なんと100両。
俺はあいつを斬って金を奪っちまおうと、手頃な場所を探して、舟に乗ったんだ。
そこで、貴様。あいつを殺せ。
いやいや、勘弁してくださいよ!
あっしは人殺しになんて、なりたくねぇ!
……そうか、ならば仕方ない。
拙者のはかりごとを知られた以上、先に貴様を斬る!
ちょっとちょっと!待った待った!

わかりましたよ!そういうことなら、やりますよ!
で、あっしには、いくらくれるんです?
酒手も含めて、2両でどうだ?
はぁ?なに言ってやがんでぇ、このしみったれが!

そんだけのことをやらせて、たったの2両?
ふざけたこと抜かしてると、舟ぇひっくり返すぞ!!
お、おい!それはやめろ!
おや?顔色が変わったね?
さてはお前、泳げないんだろ?
よーし、今から水ん中に突き落としてやる!
わかった、わかった!
金は山分けにしよう!
はじめから、そう言えばよかったんだ!
ただな、ここで女を殺して、舟に血でもかかったら、足がつくぞ?

そこでだ。もう少し先に中州がある。
その中州で事を済ませば、満ち潮になったときに死体は流されるし、都合がいいと思わないか?
よし。貴様の言うとおりにしよう。

それから熊蔵は、中州の近くに舟を着けます。
相棒、先に向こうへ上がってくれ。
俺は娘を担いで、後から追っていくよ。
うむ。頼むぞ。
言われたとおり、舟から中州へ飛んだ侍。
その瞬間、熊蔵は舟を中州から離しました。
お、おい!どこへ行くんだ!
この間抜け野郎!ざまぁみやがれ。
俺は、この子を助けるよ!

もう少しすると、そこは沈んじまうから、気を付けなよ!
それから熊蔵は、娘に家の場所を尋ね、舟で送ってあげました。

家中では「娘がいなくなった!」と大騒ぎだったので、娘が帰ってきて父親は大喜び。
有り難う存じます。
こちら、わずかばかりですが、お礼でございます。
どうぞお受け取りください。
いやいや、そんなつもりじゃなかったんですが……。
そこまで言うなら、いただきます。
分厚い包みを貰った熊蔵は、無礼にも、その場で中身を開きました。
おお、これはすごい金だ!
100両ぅ〜!
◆
おいおい。また二階で熊蔵が寝言を言ってるよ。
ー完ー
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「夢金」のオチ(サゲ)
今回は上品なサゲを採用しましたが、「夢金」には下記のような、ちょっと下品なパターンもあります。
—
娘の父親から包みを受け取った熊蔵。
中身を確かめると、50両の束が2つで、総額100両。
嬉しくって握りしめたら、同時に激痛が走ります。
そこで目を覚ました熊蔵は、自分の股間の「金」を掴んでいました。
「夢金」の豆知識
- 別題は「欲の熊蔵」「錦嚢(きんのう)」。錦嚢とは、錦で作られた袋のこと。
- 二代目 三遊亭遊三や三代目 三遊亭金馬が得意としていた。
- まくらでよく、「欲深き人の心と降る雪は積もるにつけて道を忘るる」という短歌が紹介される。
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- 石田彰:渚カヲル(エヴァンゲリオン)etc.
- 山寺宏一:ジーニー(アラジン)etc.
- 林原めぐみ:灰原哀(名探偵コナン)etc.
- 山口勝平:ウソップ(ONE PIECE)etc.
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