落語「野ざらし」のあらすじ・オチ・豆知識を紹介!

「鐘がボンと鳴りゃさ〜上げ潮ぉ南さ〜♪ カラスがパッと出りゃ、コラサノサ〜♪」
「野ざらし」のあらすじ

話は、八五郎が、隣に住む年寄りの浪人、尾形清十郎の部屋を訪ねるところから始まります。
お家の不祥事や脱藩などにより、主のいなくなった武士のこと。
おーい、先生。
おや、八つぁんかい。
朝から、どうした?
いやぁ、先生も隅に置けないねぇ。
いつもは、「女は好かん」とか言いながら、昨夜の若い女は誰だい?
昨夜の女?
おっと、とぼけても無駄だよ。
そこの壁の穴から、全部見てたんだから。
ああっ!
この穴、お前があけたのか?
あけたくもなるよ!
夜中に小便がしたくなって目が覚めたら、隣から男女のヒソヒソ声が聞こえるんだもの。
気になったんで、商売道具のノミを取り出して、穴をあけて覗いたんだ。
下の写真のような、木材に穴や溝を掘るための大工道具。

いい女だったねぇ。
……見られてしまったなら、仕方ない。
事の顛末を話してやろう。
よっ、そうこなくっちゃ。
昨日は向島まで釣りに行ったんだが、あいにく一匹も釣れなくてな。
「今日は駄目だ」と諦めて、早々に帰ろうとしたところ、暮れ六つ(午後6時)の鐘が「ボーン」と鳴った。
上げ潮時のようで、あたりにはザブリザブリという波音も不気味に響いていたな。
潮の満ち引きのうち、海面が上昇しつつある状態のこと。干潮から満潮までの間。
そのとき、草むらから、一匹のカラスが飛び立った。
そちらへ目をやると、転がっていたのは、野ざらしの髑髏(どくろ)。

こんなところに屍を晒していては、成仏できないだろうと思い、「南無阿弥陀仏」とお経を唱え、持っていた酒をかけてやったのだ。
それは、いいことをしたね。
それから家に帰り、床に入ろうしたところ、「向島より参りました」と訪ねてくる者がある。
ガラリと戸を開けると、立っていたのが、昨夜の女だ。
聞けば、「私は向島で屍を晒していた者です。あなたの手向けのおかげで、やっと成仏できましたので、お礼のために参じました」とのこと。
こういうわけで、あの女は、この世の者ではないのだ。
へー、そうだったのかい。
でも、あんだけいい女なら、幽霊でもいいから、一晩付き合ってもらいてぇよ。
なぁ、先生。向島には、ほかにも骨が転がってるかな?
まぁ、広い河原だから、骨の一つや二つはあるかもな。
よし、さっそく俺も行ってみよう!
この竿、借りていくよ!
あ、待て!
その竿は、わしが一番大切にしてる……
清十郎の制止も聞かず、向島へと駆け出した八五郎。
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着いた、着いた。
なんだ、もうこんなに人がいるよ。
さては、みんな、骨狙いだな?
おーい、骨は釣れたかー?
骨? 魚なら、釣れてますよー!
なんだい、とぼけやがって。
ちょっと隣に失礼するよ。
どうぞ。
さっそく釣り始めるとしますか。
あらよっと!

あの……針にエサが付いてませんよ?
ああ。大丈夫、大丈夫。
こうやってるうちに、鐘がゴーンと鳴って、カラスがパッと飛べば、こっちのもんなんで。
はぁ。
鐘がボンと鳴りゃさ〜上げ潮ぉ南さ〜♪
カラスがパッと出りゃ、コラサノサ〜♪
骨(こつ)があると〜サイサイサイ〜♪
そのまた骨にサ、酒をかけりゃサ♪
骨が着物(べべ)着て、コラサノサ〜♪
礼に来る〜サイサイサイ〜♪
そら、チャチャンカチャン♪

あのー。上機嫌のところ、すみません。
魚が逃げるんで、あんまり竿で水をかき回さないでくれませんか?
なにぃ?
俺はかき回したりなんかしてねぇよ!
かき回すってのは、こうやってやるんだ!!

あーあー、やっちゃったよ。
こうなったら、魚なんて釣れないね。
釣りはもうやめて、この人を見てたほうが面白そうだ。
それにしても、昨夜の女は、ちょっと若すぎたな。
女はやっぱり、二十七、八、三十でこぼこ。
乙な年増に限るよぉ〜♪
あの人、一人でブツブツ、何言ってるんだ?
下駄をカランコロン鳴らして、うちに来て、「私、向島から来たの。上がってよくって?」なんてな。
それから、俺の隣にスッと座るんだ。

んん? あの人、水たまりに座っちゃったよ?
それから、女の手を引いたら、崩れるように、俺の膝の上に倒れるよ。
「今日から俺とお前は夫婦」なんて口説くと、「上手いこと言って……そうやって女を騙してきたんだろ?」って、俺の鼻をつまむんだ。
…いてててて!

今度は、自分の鼻を釣り上げた!
なんだ。痛いと思ったら、釣り針が俺の鼻を刺してやがる!
こんなの、要らねえよ!!

あーっ!釣り針を捨てちゃった!
おーい。さすがに、針なしでは釣れませんよー?
なぁに、女を釣るんだ。
「竿さえあれば大丈夫」
ー完ー
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「野ざらし」のオチ(サゲ)
多くの落語家は、本記事で紹介したシーンで終わらせますが、「野ざらし」には、この続きもあります。
—
その後、八五郎は無事に(?)、骨を発見。
清十郎から聞いたとおりに、酒をかけてから、お経を唱えます。
それから、丁寧に自分の長屋の場所を伝えて、「待ってるよ」と言い残して立ち去ったのですが、これをたまたま、近くで幇間(たいこもち)が聞いていました。
この幇間は、八五郎が女と密会すると勘違い。
現場に行って、お世辞を言い、ご祝儀をもらおうと企てます。
そうして迎えた、その日の夜。
「向島から来ました」と、幇間が八五郎の長屋を訪ねてきます。
「誰だ、お前は?」
「“新朝”と申す、たいこもちです」
「“新町”の太鼓?」
「しまった、あれは馬の骨だったか!」
—
「馬の骨」のサゲの解説をすると、まず、和太鼓には、「馬の皮」が張られていることがあります。
そして、浅草の新町には、その和太鼓を扱う店がたくさんありました。
最後のセリフには、そのことと「どこの誰だか素性のわからない人」を意味する、「馬の骨」が掛かっています。
「野ざらし」の豆知識
- 「野晒し」と表記されることもあり、別題は「手向の酒」。上方落語では、「骨釣り(こつつり)」と呼ばれる。
- 2代目 林屋正藏が作った話を、初代 三遊亭圓遊が今の形にしたと伝えられる。
- 3代目 春風亭柳好は、「野ざらしの柳好」と呼ばれるほど、このネタに定評があった。
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この作品は、雲田はるこさん原作のマンガをアニメ化したものなのですが、落語の魅力が「これでもか!」というほど、たっぷり詰まっています。
まず注目すべきは、声優陣の豪華さ。
- 関智一:スネ夫(ドラえもん)etc.
- 石田彰:渚カヲル(エヴァンゲリオン)etc.
- 山寺宏一:ジーニー(アラジン)etc.
- 林原めぐみ:灰原哀(名探偵コナン)etc.
- 山口勝平:ウソップ(ONE PIECE)etc.
そして、高座のシーンの演出は、まるで寄席の中にいるような気分になってきます。
落語に少しでも興味があれば、ハマること間違いなしですので、ぜひ観てみてください!
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