落語「富久」のあらすじ・オチ・豆知識を紹介!

「あた……あたた……当たった!当たったよ!!」
「富久(とみきゅう)」のあらすじ

話の主人公は、幇間(たいこもち)の久蔵。
彼は、酒でしくじったことが原因で、最近は座敷に呼ばれず、生活のために借金までする始末でした。
年の瀬も迫った頃、そんな久蔵が町をぶらぶら歩いているところから物語は始まります。
おい、久さん!
おや、旦那。
お久しぶりです……。
なんだい、元気がないね?
実はこの前、酒でしくじりまして。
お得意様の旦那に、出入り禁止をくらったんです。
なにをやってるんだい。
旦那は、こんなところで何をしてるんです?
富札を売ってたところなんだ。
今でいう「宝くじ」のようなもので、神社や寺が主催していた。
富札って、あの1000両が当たる?
そうそう。
1枚いくらなんですか?
1分だよ。
1両の1/4の価値のお金。現在の価値でいうと、「2万5,000円」くらい。
そうですか。
あっしは今、ちょうど1分持ってるんですがね……。
当たりそうな番号があったらくださいよ。
そう言われても、残り1枚なんだ。
ただ、番号が面白くてね。
「鶴の1500番」。キリが良くて、当たりそうだろ?
じゃあ、それください。
いいのかい?
1分っていっても、お前にとっては大金じゃないか。
いいんですよ。
どうせ有っても、いつの間にか無くなってるんだ。
だったら、楽しいことに使ったほうがいいです。
こうして、知り合いの旦那から富札を買った久蔵。
家に帰ると、その札を大神宮様(神棚)に隠してから、一生懸命に拝みました。

さて、その晩のこと。
久蔵が寝ていると、遠くのほうで火事を告げる半鐘が鳴り響きます。
近くに住んでいる大工の棟梁は、その音を聞いて、久蔵の家を訪ねてきました。

おい、久さん!
うーん……はいはい。
火事だよ!
いいですよ。
「いいですよ」ってことはねえだろ!
だって、燃えて困るようなもんは、うちにありませんもん。
もう少し火が迫って、温かくなってきてから逃げます。
いや、火事はこの近所じゃなくて、芝の久保町なんだ。
お前、久保町に馴染みの旦那が住んでるって言ってたろ?
ああ。
でもね……その旦那のとこで、この前しくじって、出入り禁止になってるんですよ。
だったら、今すぐ見舞いに行きなよ。
「火事の詫びは勘弁してもらえる」って言うよ?
……たしかに。
ちょっと、行ってきます!
こうして、火事が起きている久保町へと飛んで行った久蔵。
到着すると、お得意様の旦那の店までは、まだ火は燃え広がっていませんでした。

さあさあ、慌てずに運び出すんだよ。
危なくなったら、荷物を捨てて、自分だけ逃げなさいね。
旦那!
おや、久蔵か。
お前たしか、ここからは、ずいぶん遠いところに住んでたろ?
ええ。浅草の三間町から、飛んできました!
よく来てくれたなぁ。
……よし、今までのことは水に流そう。
これに免じて、出入りを許してやるぞ。
ありがとうございます!
そんなことを話しているうちに、風向きが変わり、この店が燃える心配はなくなりました。
ふう……これで、いったんは安心だね。
おめでとうございます。
ああ。よかったよ。
旦那。きっとこれから、方々からお見舞いが来るでしょう?
あっしが受付をして、いらっしゃった方のお名前を帳簿につけておきましょうか?
それは助かる。頼むよ。
こうして久蔵が受付を始めると、続々とお見舞いがやってきます。
そのなかには、お酒を持ってきてくれる方もいました。
旦那。お酒をいただきました。
ああ。そっちへ置いといてくれ。
でも、お燗がついてまして……。
冷えると「燗冷まし」になって、不味くなりますよ?
いいよ。
あの、実は……あっしは浅草から駆けてきたもので、喉が渇いてて……。
わかったよ。ここまで来てくれたお礼だ。
部屋に入って飲んでなよ。
あとで、沢庵くらい持っていってあげるから。
そう言われて、店の中で酒を飲み始めた久蔵。
飲んでいるうちに眠くなり、ぐうぐうイビキをかき始めます。

すると、また火事を告げる半鐘が鳴り響きました。
おい、久蔵!
うーん……なんです?
浅草の三間町で火事だって!
ん?あっしの住んでるところで?
そうだよ!
まぁ、いいですよ。
燃えて困るもんもないですし。
なに言ってんだよ!
提灯を持たせてやるから、早く帰って様子を見てきな。
そんなことはないと思うけど、もしものことがあったら、うちに戻ってきなよ。
久蔵が自分の家に戻ってみると、見事なまでに真っ黒焦げ。
「こりゃダメだ」と、すぐに引き返し、旦那の店で厄介になることにしました。

さて、それから数日後。
久蔵が町をぶらぶら歩いていると、神社のところに人だかりができています。
これは、何の集まりです?
富札だよ。
あっ!そういや、俺も買ってたんだ!
人混みを分けて入っていった久蔵。
そのうちに、当選番号の読み上げが始まります。
しかし、久蔵が買った「鶴の1500番」は呼ばれず、ついに「1等1000両」の番号が呼ばれる段になりました。
本日の突き止めー!
鶴の1500番ー!!
あた……あたた……
当たった!当たったよ!!

あんた、当たったのかい⁉︎
当たったよ!1000両だ!!
周りの人たちに担がれて、富札を取り仕切る人のところまで運ばれた久蔵。
あなたが「鶴の1500番」を?
は、はい!
おーい、久さーん!
あっ!旦那!
1000両、当たりました!
まさか、本当に当たるとはなぁ……。
おめでとう。
ありがとうございます!!
でね、1000両なんだが、今すぐ受け取ると、神社側に3割近く引かれてしまう。
だから、来年の春まで待ちなさい。
いや、すぐに貰います!
3割くらい、いいですよ!
ええっ⁉︎
1000両の3割っていったら、300両だよ?
いいです、いいです。
まぁ、お前がそう言うなら、いいけどさ。
じゃあ、札を出しな。
札?
……ああっ!!!
どうした?
札、燃えちゃった……。
え?
この間の火事で燃えちゃったんです!!
何やってんだよ!
それじゃ、1000両は貰えないよ!
でも、旦那。覚えてるでしょ?
あなたが持ってた「鶴の1500番」を、あっしが買ったの。
そりゃ覚えてるけどね……。
「お金は札と引き換え」っていう決まりなんだよ。
そんなぁ……。
じゃあ、半分の500両だけでいいんで、くださいよ!
それでも、札がなけりゃダメだよ。
そしたら、100両は?
なんなら、10両でもいいです!
久さん。気持ちはわかるがね……。
ダメなもんは、ダメなんだよ。
……なんだい!
わかったよ!要らねえよ!
ちくしょー!!
そう叫んで、泣きながら居候先へと戻っていく久蔵。
そこへ、燃えた長屋でご近所だった大工の棟梁と、ばったり出くわします。
おい、久蔵。どうした?
泣いてるのか?
うう……棟梁……。
銭でも落としたのか?
落とす銭がありゃ、泣かねえや。
……?
そういや、お前。
火事があったとき、留守だったろ?
ええ。慌てて戻ってきたら、うちがすっかり焦げちゃってたから……。
すぐに諦めて、今は久保町の旦那の店で世話になってるんです。
そうだったのか。
実はね、お前の家の中で焼け残ったものを、うちで預かってるんだよ。
布団と鍋と釜と大神宮様と……。
大神宮様⁉︎
大神宮様は、燃えてなかったの⁉︎
ああ。
今から、うちまで取りに来るか?
こうして、棟梁の家まで付いて行った久蔵。
預かってもらっていた大神宮様の中には、隠してあった富札がきちんと入っていました。

あった!あった!!
棟梁、本当にありがとう……。
棟梁のおかげで、1000両を受け取れます。
えっ⁉︎
まさか、その富札、当たってるのか⁉︎
はい!
これで1000両を貰えたら……。
「やっと、おはらいができます」
ー完ー
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「富久」のオチ(サゲ)
最後の久蔵のセリフ「おはらいができます」には、「お払い」と「お祓い」の2つの意味がかかっています。
まず、「お払い」は、久蔵が借金をしていた人たちに、お金を返せる(払える)ということ。
そしてもう1つの「お祓い」は、神棚の中のお札を取り替えることを意味します。
江戸時代には、年の暮れになると、神社の方が家を回って、神棚のお札を取り替えてくれたそうです。
そこで回収した古いお札を入れておく箱が「お祓い箱」で、「会社をおはらい箱になった」などと言うときの慣用句の語源になっています。
「富久」の豆知識
- 別題は「富の久蔵」。
- 三遊亭圓朝が実話をもとに創作したと言われる。
- 八代目 桂文楽と五代目 古今亭志ん生が十八番にした。
- 桂文楽は、この「富久」を演じると予告しながらも、なかなか高座にかけなかったことから、「富“休”」と揶揄されたことがあった。
- 久蔵が住んでいた長屋の場所を「浅草阿倍川町」、火事のあった旦那の店を「日本橋横山町」など、演者によって場所は変わる。
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- 石田彰:渚カヲル(エヴァンゲリオン)etc.
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