落語「明烏」のあらすじと豆知識を紹介!

「いやぁ、花魁は口では起きろと言うのですが……布団の中では、太ももで私の腰のあたりを挟んで離さないんです」
「明烏」のあらすじ

話は、大きな商家の倅(せがれ)の時次郎が、散歩から帰ってくるところから始まります。
ただいま帰りました。
おかえり。
頭が痛いんだって?大丈夫か?
はい。散歩に行って、少し体を動かしましたら、だいぶ良くなりました。
きっと、本の読みすぎでしょう。
時次郎、そのことなんだがね……。
お前はいずれ、この店を継ぐんだ。
本ばかり読んでいないで、友達と遊びにでも行って、もっと世間のことを知らないといけないよ?
それでは、ちょうどいいと言ったら、なんですが……。
先ほど、源兵衛さんと太助さんにお会いして、浅草の観音様の裏にある、お稲荷さんへお参りに行こうと誘われたんです。

今から行ってきてもよろしいでしょうか?
ここで時次郎の父は、ピンときます。
実は先日、この父親は、源兵衛たちに「息子を遊郭にでも連れて行って、遊びを教えてやってくれ」とお願いしていたのでした。
浅草の観音様の裏といえば、そこにあるのは吉原。
源兵衛たちは、時次郎にお稲荷さんだと偽って、遊郭に連れ出そうとしていたのです。
ああ、行っておいで。
ただね、あそこのお稲荷さんは、服装が良くないとご利益が薄い。
小洒落た着物に着替えてから出かけなさい。
わかりました。
あと、お賽銭が少なくてもご利益が薄いから、お小遣いをたくさんやろう。
今日は初めてのお参りだからね。泊まりがけでお籠もりして、ご祈願しておいで。

父親に見送られて家を出た時次郎は、源兵衛・太助と待ち合わせた場所までやってきます。
お待たせしました。
お、来た来た。
それじゃあ、さっそく行きましょうか。

歩き出した三人が、吉原の近くまで来ると、柳の木が見えてきます。
この木は人呼んで、見返り柳。
吉原帰りの男たちが名残惜しくて、よくこのあたりで振り返ることから、そう名付けられました。
あそこに柳の木が立ってますね!
あれは……ここの御神木です。
そう聞いて、見返り柳に駆け寄り、手を合わせ始めた時次郎。

恥ずかしいので、源兵衛と太助は、時次郎の腕を引っ張って先に進みました。
◆
さて、続いて見えてくるのは、吉原の唯一の出入り口である「大門」。
坊っちゃん。これは、このお稲荷さんの鳥居です。
へぇー。鳥居はすべて赤いものだと思っていましたが、ここのは黒いんですね!
えーっと……ここだけは、特別なんです。
だんだんと嘘が苦しくなってきた源兵衛たち。
吉原の中に入ったら、バレる前に、時次郎を花魁のいる店まで連れて行くことにしました。

こうして、妓楼に引っ張り込まれた時次郎。
大きな階段を登って二階に上がると、艶やかな格好をした花魁が歩いています。
ここにきて、やっと時次郎は異変に気付きました。
あれは……花魁?
もしかしてここは、吉原というところではありませんか?
ついにバレたか……。
そうです、ここは吉原です。
よくも私を騙しましたね!!
こんなところに来たと父に知れたら、何と言われるか……!

妓楼の廊下で駄々をこね始めた時次郎。
源兵衛は必死に説得をしますが、時次郎は聞く耳を持ちません。
ここで、今まで黙っていた太助が、おもむろに口を開きます。
源兵衛よぉ、情けねえなぁ。
そんなにペコペコすんな。
こいつの親父に頼まれたから、わざわざ連れてきてやったんじゃねえか!
それから太助は、時次郎の方に向き直って言葉を続けます。
……坊っちゃんよぉ。帰りたかったら帰りな!
ただし、吉原から出るときには気を付けなよ?

入り口にあった鳥居は、本当は「大門」ってんだ。
あそこでは、どの顔が何人連れで入ったのか、逐一記録してる。
今から一人で帰ってみろ。
「あいつは三人で来てたのに、一人だけで帰ってきやがった。怪しい奴だ、捕まえろ!」ってなことになって、縛られちまうよ?
この話は太助のでっちあげですが、時次郎の顔は真っ青に。

それじゃあ、私を門まで送ってください!
嫌だね。
せっかく吉原まで来たんだ。酒も飲まずに帰れるか。
そしたら、早く飲んじゃってくださいよぉ!

こうして、しぶしぶ座敷に上がり、源兵衛と太助に付き合うことにした時次郎。
しかし、相変わらずメソメソしながら、端っこでしょぼくれています。

これを見かねた店の女将さんは、時次郎を花魁の部屋に案内しようとしますが、時次郎は断固拒否。

それでも、無理やり引っ張って行かれてしまいました。
・
・
・
そして、「烏カァ」で夜が明けます。

昨晩、遊女にフラれた源兵衛と太助は、朝っぱらから立ち話。
おい、何を食べてるんだ?
甘納豆。
その辺からかっぱらってきたんだ。
お前も食うか?
いらねぇよ。
そんなことより、あの坊っちゃん、結局ここに泊まったんだってよ。
しかも、相手は絶世の美女と噂の「浦里」ときた。
あの堅物が、花魁と泊まったのか。
まぁどうせ、指一本触れられちゃいないだろ。
違いねえ。
ちょっと冷やかしに行ってやろうぜ。
そうして、時次郎が泊まった部屋の前までやってきた源兵衛と太助。
声をかけてから襖を開けると、時次郎は恥ずかしいのか、布団の中に潜り込んでしまいました。

どうです?お籠もりの具合は?
はい。結構なお籠もりで……。
花魁、可愛いでしょ?
また連れてきてあげますからね。
さあ、早く起きてください。もう帰りますよ!
しかし、時次郎は動こうとしません。

若旦那、起きなさいよ。
ほら、花魁もこう言ってるじゃないですか。
何で起きないの?
いやぁ、花魁は口では起きろと言うのですが……。
布団の中では、太ももで私の腰のあたりを挟んで離さないんです。

冗談じゃねぇや!
俺たちは仕事があるから、先に帰りますよ!
先に帰れるものなら、帰ってみなさい。
「大門で縛られらぁ」
ー完ー
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「明烏」という題名について
「明烏」の題は、浄瑠璃の一流派である「新内節(しんないぶし)」の代表曲、「明烏夢泡雪」からきています。
この「明烏夢泡雪」には、遊女の浦里と春日屋時次郎という人物が登場し、落語ではこの二人の名が借りられました。
ちなみに、「明烏夢泡雪」の最後は、両思いの末に引き裂かれた時次郎と浦里が心中してしまいます。
「明烏」の豆知識
- このネタは、八代目 桂文楽が得意としていた。
- 文楽師匠が寄席で甘納豆を食べるシーンをやったところ、あまりに美味しそうで、その後に甘納豆がよく売れたらしい。
- 三代目 古今亭志ん朝は、甘納豆ではなく、梅干しの砂糖漬けで演じた。
- まくらでは、よく「弁慶と小町は馬鹿だなぁ嬶ぁ」という狂歌が紹介される。これは、武蔵坊弁慶と小野小町が、童貞・処女だったと言われることから、男女のことを知らない人を皮肉った歌。
- 太平洋戦争中は、内容が低俗だという理由で「禁演落語」に指定された。
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まず注目すべきは、声優陣の豪華さ。
- 関智一:スネ夫(ドラえもん)etc.
- 石田彰:渚カヲル(エヴァンゲリオン)etc.
- 山寺宏一:ジーニー(アラジン)etc.
- 林原めぐみ:灰原哀(名探偵コナン)etc.
- 山口勝平:ウソップ(ONE PIECE)etc.
そして、高座のシーンの演出は、まるで寄席の中にいるような気分になってきます。
落語に少しでも興味があれば、ハマること間違いなしですので、ぜひ観てみてください!
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