落語「へっつい幽霊」のあらすじ・オチ・豆知識を紹介!

「“恨めしや”ってのは、うちら幽霊の挨拶みたいなもんでして……」
「へっつい幽霊」のあらすじ

話の舞台は、とある道具屋。
そこで品物を物色していた熊五郎は、良さげな“へっつい”を見つけます。
土でできた“かまど”のこと。上に釜や鍋を置いて、煮炊きをする。

おい、道具屋。
このへっついは、いくらだい?
これですか……。
このへっついは、売れないんです。
なんだ、もう買い手がいるのか?
いや、そういうわけじゃないんですがね……。
実は、いわく付きなんです。
いわく付き?
ええ。
どういうわけか、このへっついは、売れたと思ったら、次の日には「やっぱり要らないから、引き取ってくれ!」って、うちの店に戻されるんです。
そんなことが2回も3回も続いたものだから、気味が悪くてね……。
変なものを売って、悪い噂が立ってもいけないんで、もう壊しちまおうと思ってるんです。
それは、もったいないな。
安くしてくれるなら、俺が引き取るぜ?
本当ですか?
それなら、お代は要りませんから、このまま差し上げます。
でも、後になって「やっぱり返す」とか言わないでくださいよ?
もちろんだ。
もし使ってみて気に入らなかったら、俺のほうでぶっ壊しちまうよ。
こうして、へっついは、すぐに熊五郎の家に運び込まれました。
「タダで貰えて儲かった」と上機嫌の熊五郎は、銭湯にひとっ風呂浴びに行き、一杯やってから悠々と帰宅。
そのまま布団の上に転がって、ぐうぐう寝入ってしまいました。

さて、夜は更けて、丑三つ時。
にわかに例のへっついに、青い炎が灯ります。
部屋がぼんやり明るくなったので、熊五郎は目を覚ましてしまいました。
なんだ?へっついに火が付いてるじゃねえか。
わかった!これから幽霊でも出てこようっていうんだな?
おーい、幽霊!焦らしてねえで、出るなら、早く出てきやがれ!
恨めしや……。

おうおうおう。何言ってやがんでい!
俺は、お前に恨まれる覚えはないぞ!
あ、いや、すみません。
「恨めしや」ってのは、うちら幽霊の挨拶みたいなもんでして……。
紛らわしいことを言うな!
で、何しに出てきやがった?
実は、親方にお願いがあって、出てきました。
お願い?
はい。申し遅れましたが、あっしは、左官屋をやっていた長五郎といいます。
壁などに土を塗る職人のこと。

恥ずかしながら、賭け事が大好きでして、生きてた頃は、稼いだ銭をほとんど博打につぎ込んでました。
そしたらある日、やけについていたことがあって、なんと一晩で300両も儲けたんです。
そんな大金、あっしの家には置いておくところもないんで、とりあえず、このへっついに土で塗り込んでおきました。

ただね、「当たってる」ってなあ、怖いものですねぇ。
お祝いに、フグで一杯やったら、毒にも当たっちまって、そのままポックリですよ。
そりゃあ、災難だったなあ。
ご愁傷様です。
痛み入ります。
それで、これから閻魔様のところに行かなきゃならないんですが、「地獄の沙汰も金しだい」って言うでしょう?
だから、このへっついに塗り込んである300両を取り出して欲しくて、こうして化けて出てきたというわけです。
そうか、話はよくわかった。
ただな、このへっついは、今となっては俺のもんだ。
なかなか気に入ってるし、壊されちまうと困るんだが……。
もちろん、お礼はしますよ。
実は、こうしてあっしが出てくると、たいていの人は逃げ出しちまう。
このお願いは、親方みたいな度胸のある人にしか頼めないんです。
そんなわけですから、金はきれいに半分にして、150両ずつ山分けといきましょう。
お、幽ちゃん。気前がいいねえ。
そういうことなら、今すぐぶっ壊しちまおう。
さっそく熊五郎がへっついを壊すと、幽霊の言うとおり、300両が出てきました。

ほらよ。お前の取り分の150両だ。
ありがとうございます。
……でも、なんだか半端な額になっちまったなぁ。
ねぇ、親方。これから、この金の“押し付けっこ”をしませんか?
押し付けっこ?
早い話が、この300両の総取りを賭けて、博打をするんです。
お前も好きだねぇ……。
だが、俺もそういうのは嫌いじゃねえぞ。
ひとつ勝負といこうじゃねえか!
何の博打がいいんだ?
あっしは、昔から“丁半”しかやらないんです。
2つのサイコロを壺に入れて振って、出目の合計が丁(偶数)か半(奇数)か予想する博打のこと。

よし。サイコロなら、ちょうど2つあるぞ。
お前は、どっちにかける?
あっしの名前は、長五郎。生まれてこのかた、「丁」にしか張ったことがありません。
それなら、俺は「半」だ。
よし。それじゃあ、いくぞ?
いざ、勝負!

悪いな、幽ちゃん。「五・六の半」で俺の勝ちだ。
300両は、ありがたく貰ってくぜ。
というわけで、大勝負に負けてしまった幽霊は、ガックリと肩を落としてしまいました。
おいおい、幽霊が落ち込んでる姿は気味が悪いぞ?
……親方、後生ですから、もう一回だけ勝負してください!
冗談じゃねえや。
お前はもう、びた一文も持ってないじゃねえか。
いやいや、安心してください。
「あっしも幽霊だ。決して足は出しません」
ー完ー
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「へっつい幽霊」のオチ(サゲ)
野暮を承知で、この噺の「あっしも幽霊だ。決して足は出しません」というオチのセリフの解説をします。
まず、幽霊というのは「足がない」とされており、これは、江戸時代の絵師、円山応挙の幽霊画の影響です。

また、「お足」という言葉には、「お金」という意味もあります。
その由来は、江戸時代の通貨「寛永通宝」の裏に「足」の字があったこと。

ここから転じて、「足が出る」は「赤字になる」ことを意味するようになりました。
以上をまとめると、「あっしも幽霊だ。決して足は出しません」は、「幽霊には足がない」ことと「足は出さない=赤字にはしない」のを掛けたセリフだということです。
「へっつい幽霊」の豆知識
- 上方落語では、『かまど幽霊』と呼ばれる。
- 昭和の名人 三代目 桂三木助が得意としていた。
落語に興味をお持ちのすべての方にオススメしたいのが、『昭和元禄落語心中』というアニメです。
この作品は、雲田はるこさん原作のマンガをアニメ化したものなのですが、落語の魅力が「これでもか!」というほど、たっぷり詰まっています。
まず注目すべきは、声優陣の豪華さ。
- 関智一:スネ夫(ドラえもん)etc.
- 石田彰:渚カヲル(エヴァンゲリオン)etc.
- 山寺宏一:ジーニー(アラジン)etc.
- 林原めぐみ:灰原哀(名探偵コナン)etc.
- 山口勝平:ウソップ(ONE PIECE)etc.
そして、高座のシーンの演出は、まるで寄席の中にいるような気分になってきます。
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