落語のネタ

落語「地獄八景亡者戯」のあらすじ・オチ・豆知識を紹介!

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「ごちゃごちゃ言い訳をするな!この4名を地獄へ連れてゆけ!」

「地獄八景亡者戯(じごく ばっけい もうじゃ の たわむれ)」のあらすじ

喜八が目を覚ますと、ロウソクが立ち並ぶ、薄暗い道の真ん中にいました。

周りを歩く人々は、三角の布を額に当て、首からは頭陀袋、手には麻幹(おがら)の杖をつき、糸より細い声をあげ……

喜八

おーい!

喜八

そこにいるのは、伊勢屋のご隠居ではありませんか?

ご隠居

やあ。誰かと思ったら、喜八さんか。

喜八

お元気ですか?

ご隠居

いや、こんなとこに来てるくらいだから、元気ではないよ。

喜八

こんなとこ?

ご隠居

なんだ、気付いてないのか?

ご隠居

ここは、死後の世界だぞ。

喜八

ええっ⁉︎

喜八

そういや……ご隠居はこの前、葬式を挙げてましたね!

ご隠居

ああ。その節は、手伝ってくれてありがとうな。

ご隠居

棺桶の隙間から、見てたよ。

喜八

そうだったんですか⁉︎

ご隠居

あの日は、元気に働いてくれてたのに……。

ご隠居

一体どうして、喜八さんもこっちに来てしまったんだい?

喜八

えーと……たしか……。

喜八

好物のサバを食べて、腹が痛くなったところまでは覚えてるんですが……。

ご隠居

ということは、そのサバに当たったんだろうな。

喜八

かもしれませんね。

喜八

ねぇ、ご隠居。あたしたちは、これからどうなるんですか?

ご隠居

そりゃあ、閻魔さまのとこでお裁きを受けて、生前に良い行いをした者は極楽、悪い行いをした者は地獄へ行くんだろう。

喜八

そうですか……。

喜八

そしたら、閻魔さまのとこまで、お供をしてもいいですか?

ご隠居

もちろんだ。

ご隠居

二人で話でもしながら、ゆっくり行こうじゃないか。

こうして、喜八とご隠居が並んで歩いていると、後ろから賑やかな連中がやってきます。

その真ん中にいるのは、どこぞの大きな商家の若旦那。

彼は、この世の道楽をし尽くして、暇を持て余していました。

そんなある日、若旦那は「あの世」へ旅行に行こうと思いつき、太鼓持ちや芸者と一緒に大量のフグを食べると……。

みんなで揃って、こちらに来ることができました。

男たちは黒紋付、女たちは派手な着物を身に纏い、楽器を鳴らしながら、楽しげに歩いています。

その道中の陽気なこと!

太鼓持ち

若旦那ー!

太鼓持ち

ちょっと待ってくださいよー!

若旦那

ああ。すまん、すまん。

若旦那

考え事をしてたら、ついつい早歩きになっていた。

太鼓持ち

なにか、心配なことでもあるんですか?

若旦那

昔聞いた話のとおりなら、このまま進んでいくと、三途の川にたどり着く。

若旦那

そこには、「しょうづかの婆さん」という、白髪の怖い顔をした老人がいるらしいんだ。

太鼓持ち

ほう。

若旦那

その婆さんは、やってきた亡者の着物を剥ぎ取って、木の枝に引っかけてしまうという。

若旦那

男連中はいいにしても、女子たちが裸にされたら、可哀想だと思ってな。

太鼓持ち

若旦那は、お優しいですなぁ。

太鼓持ち

「地獄の沙汰も金次第」と言いますし、金でなんとかならないか、そこの茶店で聞いてきましょう。

そう言って、太鼓持ちは、近くにあった茶店に入っていきます。

太鼓持ち

こんちは!

茶店の店員

はい、いらっしゃいませ。

太鼓持ち

ちょっとお伺いしますが……。

太鼓持ち

この道を真っ直ぐ行けば、三途の川に着きますよね?

茶店の店員

ええ。

茶店の店員

三途の川も、昔はきれいな水が流れてたんですがね……。

茶店の店員

今では、上流に工場が建ちまして、そこの排水が流されるものですから、すっかり水が濁ってしまいました。

太鼓持ち

こっちの世界にも、公害があるんですか……。

太鼓持ち

その三途の川に、「しょうづかの婆さん」という方がいると伺ったのですが。

茶店の店員

それも昔の話です。

太鼓持ち

あれ、そうなんですね?

茶店の店員

何年か前、婆さんが亡者の着物を脱がしているところを、スマホで隠し撮りされましてね。

茶店の店員

それがSNSにアップされた途端、大炎上ですよ。

茶店の店員

それで、「ああいう悪しき慣習は、もうやめよう」ってことになったんです。

太鼓持ち

へぇー。

太鼓持ち

そしたら、婆さんは仕事がなくなってしまったんですか?

茶店の店員

ええ。

茶店の店員

しばらくは失業手当をもらって、なんとか暮らしてたみたいですけど、どうにも立ち行かなくなりましてね。

茶店の店員

閻魔さまに泣きついたところ、秘書として雇ってもらえることになったんです。

太鼓持ち

それは、良かったですな。

茶店の店員

ただ、秘書だから、仕事中はずっと閻魔さまの近くにいるでしょう?

茶店の店員

二人はだんだん良い仲になってきて、ついに婆さんは、閻魔さまの愛人になっちゃったんですよ。

太鼓持ち

ええっ⁉︎

太鼓持ち

婆さんを愛人にするなんて、閻魔さんも物好きな……。

茶店の店員

あ、「しょうづかの婆さん」というのは、愛称みたいなもので、彼女はまだ30代半ばなんですよ。

茶店の店員

とっても美人な方で、大学時代にはミスコンに出た経験もあるそうです。

太鼓持ち

へぇー。そうなんですね!

茶店の店員

で、愛人になった婆さんは、秘書の仕事から離れて、閻魔さまに買ってもらったマンションで悠々自適な暮らしをしてたんですが……だんだん物足りなくなってきましてね。

茶店の店員

閻魔さまに資金を出してもらって、バーを開いたんです。

茶店の店員

その店の名前が、「バー・ババア」。

太鼓持ち

……なんだか、落とし話みたいになってきましたね。

茶店の店員

バーはそこそこ繁盛して、婆さんは忙しくしてたんですが、今度は閻魔さまと会う時間がなくなっちゃって、二人はすれ違うようになりました。

茶店の店員

寂しくなった婆さんは、バーで雇ってる学生アルバイトと、こっそり関係を持ち始めたんです。

太鼓持ち

ほうほう。

茶店の店員

それで、あるとき婆さんがマンションにバイト君を連れ込んで、いいことをしてるところに、閻魔さまが来ちゃったんですよ!

茶店の店員

婆さんは、慌ててバイト君をクローゼットに隠したんですが、結局、閻魔さまに見つかったそうです。

太鼓持ち

それは修羅場ですな!

茶店の店員

ただ、閻魔さまは、さすがに懐が深くてね。

茶店の店員

「寂しい思いをさせた自分も悪い」ってことで、二人の関係を許したそうです。

茶店の店員

その後、婆さんはそのバイト君と結婚して、今は子どもも授かって幸せに暮らしてるみたいですよ。

太鼓持ち

円満に解決したんですな!

太鼓持ち

ってことは……もう婆さんはいないから、三途の川に行っても、服を剥ぎ取られたりはしないんですね?

茶店の店員

ええ。

太鼓持ち

ご親切に教えていただき、ありがとうございました!

太鼓持ち

これ、お茶代です。

茶屋を出た太鼓持ちは、若旦那に今聞いた話を伝えます。

こうして安心した若旦那は、連中を引き連れ、ついに三途の川に到着しました。

岸には船が泊まっており、近くにいる鬼が大きな声を張り上げています。

ミドリ鬼

三途の川を渡る方は、こちらでーす!

太鼓持ち

こんちは。

太鼓持ち

乗ってもいいですか?

ミドリ鬼

ええ。

ミドリ鬼

運賃は、前払いとなっております。

太鼓持ち

ほう、いくらなんです?

ミドリ鬼

死因によって違います。

太鼓持ち

そうなんですね。

太鼓持ち

あたしたちは、フグを食べて死んだんですが……。

ミドリ鬼

そしたら、フ(2)グ(9)の「2×9」で、一人180円になります。

太鼓持ち

そうですか。

太鼓持ち

そしたら、10人連れですんで、1800円払いますね。

ミドリ鬼

あ、それでしたら、団体割りが効きますので、合計1500円で結構です。

太鼓持ち

ほう、こっちの世界にも、団体割りがあるんですね。

太鼓持ち

じゃあ、これで。

ミドリ鬼

はい。2000円お預かりですので、500円のお返しです。

ミドリ鬼

では、次の方ー!

喜八

こんにちは。

ミドリ鬼

あなたの死因は?

喜八

サバに当たって死んだみたいです。

ミドリ鬼

そしたら、サ(3)バ(8)の「3×8」で、240円になります。

喜八

はい、ちょうどあります。

ミドリ鬼

どうも。助かります!

ミドリ鬼

では、次の方!

ご隠居

私は、タバコの吸いすぎで、肺ガンになって死んだのですが……。

ミドリ鬼

そしたら、葉っぱ(8×8)の640円になります。

ご隠居

おや?私の運賃だけ、ずいぶん高いんですね?

ミドリ鬼

ええ。

ミドリ鬼

最近、閻魔さまの方針で、またタバコ税が上がりましてね。

ミドリ鬼

それと一緒に、タバコで死んだ方の運賃も高くなったんです。

ご隠居

……そうなんですか。

ご隠居

われわれ愛煙家は、どこに行っても苦労しますなぁ。

こうして、無事に船に乗り込めた亡者たち。

ミドリ鬼

前から詰めて、座ってくださいねー!

ミドリ鬼

あと、航行中は、大きく揺れる場合がございます。

ミドリ鬼

船から落ちると生きますので、ご注意ください。

太鼓持ち

おや、若旦那。

太鼓持ち

落ちたら、生き返れるみたいですよ?

若旦那

ほう。

若旦那

お前、2000円やるから、試しに落ちてみろ。

太鼓持ち

へい!

ミドリ鬼

ちょっと、勘弁してくださいよ!

ミドリ鬼

向こうに着いたとき、人数が帳簿と合わないと、始末書を書かされるんですから!

そんなことがありながら、船は向こう岸に到着しました。

若旦那

おお!想像してたより、ずっと都会だな!

ミドリ鬼

この真ん中の道がメインストリートでして、真っ直ぐ行けば、閻魔の庁舎に着きます。

若旦那

そうですか。

若旦那

あそこには、文化会館がありますね?

ミドリ鬼

ええ。今日は、芥川龍之介・太宰治・三島由紀夫が登壇するそうです。

若旦那

ほう、それは豪華ですな。

若旦那

どんなテーマで講演するんですか?

ミドリ鬼

「自殺について」だったかな?

若旦那

あっ……そうですか。

太鼓持ち

若旦那!あっちに見えるのは、寄席じゃないですか?

太鼓持ち

落語、お好きでしたよね?

若旦那

ああ、大好きだ。

ミドリ鬼

奇遇ですね。私も落語ファンなんです。

ミドリ鬼

今日のトリは、立川談志ですよ。

若旦那

おお!これは、聴いていくしかないな!

こうして、あの世の街で遊びに遊んだ若旦那たち。

3日目の朝になって、ようやく閻魔さまの庁舎にやってきます。

アカ鬼

亡者のみなさーん、ここに4列に並んでくださーい!

アカ鬼

そろそろ閻魔が参りますので、静粛にお願いしまーす!

そこへ、怖い顔をした閻魔さまが登場しました。

閻魔さま

あー、みなさん。はじめまして、閻魔です。

閻魔さま

これより、極楽・地獄の振り分けのため、みなさまの審査をいたします。

閻魔さま

ただ、その前に、一芸のある方は生前の罪に目をつぶり、無条件で極楽に通しますので、係の者に申し出てください。

これを聞いた部下の鬼たちは、こそこそ内緒話を始めます。

アオ鬼

おい、「一芸審査」なんて制度あったか?

アカ鬼

ああ……昨日から、あの人の独断で始めたんだよ。

アオ鬼

どうしてまた?

アカ鬼

そろそろ選挙だろ?

アカ鬼

最近、支持率が低いみたいでな。

アカ鬼

ああいうことして、人気取りをしてんだよ。

アオ鬼

なるほどね。

アオ鬼

「週刊地獄」で愛人のことをすっぱ抜かれてから、SNSでバカにされまくってるもんな。

アカ鬼

ああ。

アカ鬼

この間は、「地獄民栄誉賞」を何人かにあげてたけど、それでも支持率が上がんなくて、あの人焦ってんだよ。

さて、何としても極楽に行きたい亡者たちは、次々に一芸を披露します。

歌・ダンス・手品・けん玉・すべらない話・クレヨンしんちゃんのモノマネ……

中にはクオリティの低いものもありましたが、閻魔さまは構わず、すべての人を極楽に通します。

閻魔さま

それにしても、今日は人が多いな……。

閻魔さま

もういいや!本日は特例で、みんな極楽行きとする!

閻魔さま

ただし、医者の山井養仙(やまい ようせん)、山伏の螺尾福海(ほらお ふくかい)、歯抜き師の松井泉水、軽業師の和屋竹の野良一の4名は残るように。

みんなが極楽に通されるなか、ぽつんとその場に残された4人。

閻魔さま

……お前ら、どうしてここに残されたか、わかってるな?

野良一

い、いえ……検討もつきません!

閻魔さま

まず、山井。

閻魔さま

お前は、医者を名乗るも、未熟な医術で助かる病人まで殺してしまった。

閻魔さま

ついては、地獄行きを命じる。

山井

……。

閻魔さま

次に、螺尾。

閻魔さま

お前は山伏を自称し、怪しげな加持祈祷をして人を騙し、金を巻き上げた。

閻魔さま

よって、地獄行きだ。

螺尾

……。

閻魔さま

松井は、抜かなくていい歯まで抜いて、それを売って荒稼ぎした。

閻魔さま

地獄へ行け。

松井

……。

閻魔さま

最後に、野良一。

閻魔さま

お前は、観客がハラハラする曲芸をして、見ている人の寿命を縮めた。

閻魔さま

よって、地獄行き。

野良一

ちょっと、待ってください!

野良一

あたしは、お客さんを楽しませてただけですよ?

閻魔さま

ごちゃごちゃ言い訳をするな!!

閻魔さま

おい、この4名を地獄へ連れてゆけ!

こうして、4人が鬼に連れて来られたのは、地獄の釜。

釜の中では、熱湯が煮えたぎっています。

アカ鬼

さあ、ここに入れ!

野良一

うう……熱そうだなぁ……。

螺尾

ここは、わしに任せてもらいたい。

野良一

……?

螺尾

ちちんぷいぷいのぷーい!

山伏の螺尾が水の印を結び、呪文を唱えると、釜のお湯の沸騰が収まりました。

螺尾

もう大丈夫だ。

螺尾

手を入れてみなさい。

野良一が恐る恐る、釜の中に手を入れてみると、ちょうどいい湯加減になっています。

野良一

こりゃいいや!

野良一

鬼さん、すみません。石鹸と手拭いを借りられますか?

アカ鬼

おいおい、ここは銭湯じゃないんだぞ?

まさかの事態に、鬼は慌てて閻魔さまに報告しにいきます。

閻魔さま

なに?釜の熱湯を、ちょうどいい湯加減に……?

閻魔さま

ならば、次は針の山に案内してやれ!

というわけで、4人は続いて、鋭い針が敷き詰められた山に連れてこられます。

野良一

針の山か……。

野良一

ここは、あたしに任せてもらいましょう。

山井

どうするんですか?

野良一

針の上を裸足で歩くことなんて、曲芸で何度もやってきました。

野良一

そのおかげで、あたしの足の裏は板みたいに固いんです。

野良一

だから、あたしが皆さんを背負って、ここを登りますよ。

螺尾

そんなことできるのか?

野良一

もちろん!

野良一

さぁ、とざいとーざい!これより、4人の亡者が、針の山を登ってまーいる!

ほかの3人を背負いながら、軽々と針の山を登ってみせた、軽業師の野良一。

これを見た鬼は、またも閻魔さまに報告します。

閻魔さま

なに?針の山を軽々と?

閻魔さま

うーむ……しからば、人呑鬼(じんどんき)を呼べ!

アカ鬼

え、人呑鬼ですか?

閻魔さま

ああ。早くしろ!

こうして、地獄の最終兵器である人呑鬼が、4人のもとに送り込まれました。

人呑鬼

閻魔さまが言ってた「食ってもいい連中」ってのは、お前らのことか?

野良一

うわっ、ずいぶんデカいのが来たな!

松井

ここは、私に任せなさい。

松井

これ、鬼さん。あなた、虫歯がありますよ?

人呑鬼

ん?そんな下から見ただけでわかるのか?

松井

もちろん。私だって、歯医者の端くれですから。

松井

そんな歯で噛まれるのは気持ち悪いから、先に治療してあげましょう。

人呑鬼

それなら、お願いしようか。

松井

では、私のことを手に乗せて、口の近くまで連れてってください。

言われるままに、人呑鬼は歯抜き師の松井を手のひらに乗せて、口元まで運びます。

松井

あーあー……虫歯だらけじゃないか。

松井

ちょっと薬を塗りますよ。

そう言って口の中に入り、歯に薬を塗りたくっていく松井。

松井

よーし。

松井

あなた、手拭いは持ってますか?

人呑鬼

ああ。

松井

それを口に咥えて、ぐーっと強く噛みなさい。

松井

そのまま30秒経ったら、手拭いを勢いよく吐き出すんです。

松井に言われたとおりにした人呑鬼。

すると、手拭いを吐き出した途端、すべての歯が抜け落ちてしまいました。

人呑鬼

ああー!

人呑鬼

ようおああいああ!(よくもダマしたな!)

そう叫んだ人呑鬼は、4人を丸呑みにします。

松井

飲み込まれてしまいましたね。

野良一

でも、歯を抜いてくれたおかげで、噛まれずに済みましたよ。

野良一

さて、これからどうしましょう?

山井

ここは、私に任せてください。

山井

私は医者ですので、生き物の体の構造は、よく把握しています。

そう言うと、医者の山井は懐からメスを取り出し、胃の壁を切って外に出ました。

山井

野良一さん、そこにぶら下がってる紐を引っ張ってみてください。

野良一

これですか?よいしょ!

山井

その紐を引くと、今のように鬼がクシャミをします。

野良一

へぇー、おもしろいですね!

山井

次は……螺尾さん。そこのレバーみたいな突起を、上に持ち上げてみてください。

螺尾

これかい?そらっ!

山井

松井さんは、そこの丸いのをくすぐってください。

松井

はいはい。こしょこしょこしょ。

山井

あとは、ここにある袋を蹴飛ばすと……。

山井

このように、屁が出ます。

山井

この4つを同時にやって、鬼を苦しめてやりましょう。

野良一

そりゃいいや!

山井

じゃあ、いきますよ?

山井

せーの!

クシャミが出るやら、腹が痛いやら、くすぐったいやら、屁が止まらないやらで、堪らなくなった人呑鬼。

便所に駆け込んで、4人を外に出してしまおうと考えます。

野良一

ん?なんか、移動してません?

山井

もしかしたら、便所に向かってるのかも……。

野良一

あたしたちを、尻から出しちまおうってわけか。

山井

これだけイタズラをして、外に出されたら、何をされるかわかりません。

山井

みなさん。下に降りますよ。

野良一

どこに向かうんです?

山井

肛門の近くです。

野良一

ええ⁉︎

山井

肛門のところで踏ん張ってたほうが、案外、耐えやすいんですよ。

こうして、4人は肛門の近くでスクラムを組み、人呑鬼の中にとどまり続けました。

人呑鬼

うう……。

人呑鬼

ダメだ。どうしても、出てこないな……。

閻魔さま

おーい、人呑鬼。

閻魔さま

便所に篭って、どうかしたか?

人呑鬼

あ、閻魔さまですか?

閻魔さま

ああ、そうだが。

人呑鬼

こうなったら、あなたを呑み込むしかありません。

閻魔さま

ええ?どうして?

「大王(大黄)を飲んで、下すんです」

ー完ー

「地獄八景亡者戯」のオチ(サゲ)

大黄(だいおう)は、便通を良くする漢方です。

4人を早く体の外に出したい人呑鬼は、この大黄を飲みたがり、これが「閻魔“大王”」と掛かっているというオチでした。

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「地獄八景亡者戯」の豆知識

  • 原話は、『はなしの種』という本の「玉助めいどの抜道」だとされる。
  • 上方落語のネタであり、東京では「地獄めぐり」という題で、内容を少し変更して演じられる。
  • 人間国宝になった三代目 桂米朝の十八番だった。
  • ネタの中に、時事の出来事をくすぐりとして入れることが多い。
  • 登場人物の名前の由来は、下記のとおり。
  • 和屋竹の野良一:実在する軽業師「早竹虎吉(はやたけ とらきち)」のもじり
  • 松井泉水:実在する大道芸人「松井源水」のもじり
  • 螺尾福海(ほらおふくかい):「ホラを吹くかい」のもじり
  • 山井養仙(やまいようせん):「病良うせん」のもじり

なお、このネタを元にした、『じごくのそうべえ』という絵本もあります。

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