「断っておくが、壺のなかのサイコロの目が勝負だぞ?」
「看板の一(ピン)」のあらすじ

この話は、博打をしている留公たちのところに、親分が訪ねてくるところから始まります。
あっ、親分!
なんだお前たち、また博打をやってるのか?
ええ、そうなんです。
ちょうどいいところに来てくれましたね。
ん?どういうことだ?
今、誰も胴元になりたがらないんで、困ってたんですよ。
賭博の親役のこと。サイコロを使った勝負では、実際にサイコロを振る役を担う。
俺に胴元をやれっていうのか?
ええ。お願いしますよ。
俺はもう、61になるんだぞ?
博打ってのは、周りに目を利かせて、些細な話も聞き取る耳があって、はじめて勝てるものなんだ。
だいいち、俺はワケあって、42で博打はやめちまったんだよ。
そこをなんとか!
……仕方ねえなぁ。
一回きりだぞ?
ありがとうございます!
で、何で勝負してたんだ?
チョボイチです。
サイコロを1つ使った博打のこと。出る目を予想して金を賭け、当たると4倍になって返ってくる。
よし、わかった。
サイコロと壺は、どこにある?
いやだな、親分。
目の前にあるじゃないですか。
ああ、ここにあったか。
最近、目がかすんで、よく見えないんだよ。
そう言いながらも、親分は慣れた手つきでサイコロを振り、壺を伏せました。
しかし、あろうことか、サイコロが壺の外に出てしまっています。
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さあ、張ってくれ。
断っておくが、壺のなかのサイコロの目が勝負だぞ?
親分、本当に張っていいんですか?
ああ、もちろんだ。
外に出ているサイコロの目は「1」。

これが見えている留公たちは、全員が「1」に張りました。
なんだ、みんな「ピン(=1)」じゃないか。
ピン以外の目だったら、俺の総取りになるぞ?
本当に、このままでいいのか?
ええ。構いません。
よし。勝負!
……と、その前に、この看板のピンは仕舞っておくよ。

そう言って笑いながら、壺の外にあったサイコロを懐にしまった親分。
ええっ⁉︎
看板って、何ですか⁉︎
このサイコロは、ただ転がしてただけだ。
「壺のなかのサイコロの目が勝負」と言っただろう?
たしかに、そう言ってましたけど……。
俺が見るところ、中は「5」だな。
さあ、勝負!
親分が壺を開くと、サイコロの目は「5」でした。
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ほら、俺の勝ちだ。
うう……親分、ズルいですよ!
何を言うか。
お前たちも、サイコロが外に出ているのを黙ってたじゃないか。
それはそうですが……。
まぁ、お前らから金を巻き上げても仕方ない。
この勝負はなかったことにしよう。
えっ?いいんですか?
ああ。
小遣いをやるから、今日はこれで蕎麦でも食って帰んな。
ありがとうございます!
これに懲りて、博打はほどほどにしとけよ。

そう言って、親分は帰っていきました。

さて、これでその場は解散となったのですが、留公はこの親分のやり口を、別の賭場で試してみたくなりました。
そこで、知り合いの家を訪ねます。
おう!今夜も博打をやってるかい?
おいおい、そんなに大きな声を出すなよ。
やってるから、早く中に入んな。
お邪魔するぜ。
留公、ずいぶん久しぶりじゃねえか。
ああ。
ワケあって、博打は42でやめちまったんだ。
お前、まだ26だろ?
まあまあ。
今日は、俺が胴元をやってやろう。
なんだよ、偉そうに。
じゃあ、壺を伏せてみな。
ああ。
サイコロと壺を渡された留公は、先ほどの親分と同じように、隠し持っていたサイコロをわざと壺の外に振りました。
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おい、ちゃんと伏せろよ!
やってるよ。
じゃあ、このまま賭けていいんだな?
もちろんだ。
壺の外のサイコロの目は「1」。

当然、その場にいる全員が「1」に賭けます。
断っておくが、壺のなかのサイコロの目が勝負だぞ?
ああ、わかってるよ。
みんなピンに張るなら、ピン以外が出たら、俺の総取りだ。
本当に、このままでいいんだな?
ああ、早く壺を開きな。
よし、いざ勝負!
……の前に、この看板のピンは仕舞っておこう。
ええっ⁉︎
なんだよ、看板って⁉︎
このサイコロは、ただ転がしてただけだ。
「壺のなかのサイコロの目が勝負」と言っただろう?
くそっ、やりやがったな!
俺が見るところ、中は「5」だな。
いいから、早く開けちまえよ。
さあ、勝負!
……ああ!
「中もピンだ」
ー完ー
「看板の一」の豆知識
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