「いえ、貴方様に恨みがあって出たのではありません……」

「応挙の幽霊」のあらすじ

背景(大通り・昼)

話は、骨董屋が馴染みの旦那の家を訪ねるところから始まります。

骨董屋

ごめんください。

旦那

おや、骨董屋さんか。

旦那

何か、良い品でも入ったのかい?

骨董屋

ええ。

骨董屋

実は、旦那がお好きな「幽霊の掛け軸」が手に入ったんです。

旦那

ほう。

旦那

誰の筆なんだ?

骨董屋

応挙です。

応挙とは?

江戸時代の絵師「円山応挙」のこと。「足のない幽霊画」を描いた元祖とされる。

旦那

応挙⁉︎本当か⁉︎

骨董屋

ええ。間違いありません。

旦那

それなら、是非とも買わせてくれ。

旦那

いくらなら、手放す?

骨董屋

10両いただければ……。

10両の価値

今の金銭感覚では、100万円ほどの価値になる。

旦那

まぁ、本物の応挙なら、それでも安いくらいだな。

旦那

ただ、今は持ち合わせがないから、悪いが、明日の朝に改めて来てくれないか?

旦那

それまでに、金は用意しておく。

骨董屋

もちろん構いません。

骨董屋

それでは、また明日、伺います。

こうして、旦那のところから、自宅に帰ってきた骨董屋。

掛け軸が10両という高値で売れたので、ウナギを肴に酒を飲むことにしました。

骨董屋

儲かって飲む酒は、美味いものだなぁ。

骨董屋

これも、あの掛け軸のおかげだし、幽霊にも一杯あげようか。

骨董屋は、さっそく箱から掛け軸を取り出して、床の間に飾ります。

それから湯呑みに酒を注いで、ウナギも添えてお供えしました。

その後も、上機嫌に飲み続けた骨董屋。

そこへ突然、女の声が聞こえてきます。

……こんばんは。

骨董屋

誰だ⁉︎

幽霊

幽霊です……。

骨董屋

幽霊?

骨董屋

俺は幽霊に出られるような、悪いことなんかしてねえぞ?

幽霊

いえ、貴方様に恨みがあって出たのではありません……。

骨董屋

じゃあ、何しに出てきたんだ?

幽霊

お礼が言いたくて……。

骨董屋

お礼?

幽霊

私は、あそこの掛け軸から出てきたのですが……。

骨董屋

掛け軸?……あっ!

骨董屋

掛け軸の絵が消えてる!!

幽霊

ええ。あそこに描かれてたのが、私なんです。

幽霊

それで、私の掛け軸は、これまで方々で買われたのですが……。

幽霊

ありがたいことに、床の間に大事に掛けていただくことが多かったんです。

骨董屋

まぁ、応挙の掛け軸っていえば、高級品だからな。

骨董屋

みんな、そうやって大切に扱うだろう。

幽霊

ただ、飾っていただいてから少し経つと、奥さまやお子さんに気味悪がられて、箱に仕舞われてしまって……。

骨董屋

そうか……。

幽霊

そうして私は、長いこと暗闇の中にいました。

幽霊

そこへ貴方様は、私を明るいところに出してくれて、お酒とウナギまで手向けていただき……。

幽霊

私は本当に嬉しくて……。

骨董屋

なるほど。

骨董屋

それで、お礼を言いに出てきたってわけかい。

幽霊

ええ。

骨董屋

酒とウナギは、美味かったかい?

幽霊

大変、美味しゅうございました。

骨董屋

もしやお前、いける口だな?

骨董屋

よし。今日は二人で飲み明かそうじゃねえか。

こうして、骨董屋と幽霊は、お互いにお酌をしながら飲み始めました。

だんだんと酔いが回り、顔が赤くなってきた幽霊は、部屋に置かれていた三味線を手に取ります。

骨董屋

お前、三味線が弾けるのか?

幽霊

ええ。少しですが……。

骨董屋

何か弾いてくれよ。

幽霊

それでは、都々逸をひとつ。

都々逸とは?

七・七・七・五の定型詩。もともとは、三味線の伴奏に合わせて唄われた。

幽霊

お前の嬉しい心に惹かれ〜♪
迷うて出たのが恥ずかしい〜♪
三途の川でも竿挿しゃ届く〜♪
思い届かぬことはない〜♪

骨董屋

ちょっとばかし陰気だが、いい声じゃねえか!

幽霊

ありがとうございます……。

その後も、酒を飲み続けた二人。

しかし、骨董屋がふと気がつくと、幽霊は掛け軸の中に戻ってしまっていました。

骨董屋

おいおい、いつの間にか、掛け軸の中で寝てるじゃねえか。

骨董屋

しかも、向こう側を向いてるから、せっかくの絵が台無しだよ。

骨董屋

明日、旦那に渡す頃には、酔いが覚めてるかなぁ?

さて、その翌朝。

案の定、幽霊は二日酔いのようで、まだむこうを向いて寝ています。

仕方がないので、骨董屋は手ぶらで旦那の家を訪ねました。

骨董屋

おはようございます。

旦那

お、来てくれたか!

旦那

それで、例の掛け軸は?

骨董屋

実は、今日は持ってきてないんです。

旦那

ええ?どうして?

「もう少しだけ、寝かせておきたくて」

ー完ー

「応挙の幽霊」のオチ(サゲ)

オチのパターンとしては、幽霊が掛け軸に戻って寝てしまったのを発見した骨董屋が「酔ったのはいいけど、明日までに酔いが覚めるかしら」と呟くところでサゲることもあります。

また、「いつまで寝るつもりだ?」と聞かれた幽霊が、「明日の丑三つ時まで」と答えて終わるのも、1つのパターンです。

「応挙の幽霊」の豆知識

  • 明治・大正時代の新聞記者で戯作者の「鶯亭金升(おうてい きんしょう)」の作といわれる。
  • 別題は「幽霊の酒宴」。
▼おすすめの落語アニメ▼


落語に興味をお持ちのすべての方にオススメしたいのが、『昭和元禄落語心中』というアニメです。

\昭和元禄落語心中が観られる/

dアニメストアを無料で体験する

この作品は、雲田はるこさん原作のマンガをアニメ化したものなのですが、落語の魅力が「これでもか!」というほど、たっぷり詰まっています。

まず注目すべきは、声優陣の豪華さ。

  • 関智一:スネ夫(ドラえもん)etc.
  • 石田彰:渚カヲル(エヴァンゲリオン)etc.
  • 山寺宏一:ジーニー(アラジン)etc.
  • 林原めぐみ:灰原哀(名探偵コナン)etc.
  • 山口勝平:ウソップ(ONE PIECE)etc.

 

そして、高座のシーンの演出は、まるで寄席の中にいるような気分になってきます。

落語に少しでも興味があれば、ハマること間違いなしですので、ぜひ観てみてください!

なお、『落語心中』は各種サブスクで配信されていますが、一番オススメなのは「dアニメストア」を利用することです。

dアニメストアは、月額550円(税込)とほかのアニメ系サブスクよりも安く、31日間は無料で視聴できます。

\5,000作品以上が見放題/

dアニメストアを無料体験する

dアニメストアに入れば、『落語心中』以外のアニメも見放題ですので、まずは無料で体験してみてください!


※初回は31日間無料ですが、31日経過後は自動継続となり、その月から月額料金の全額がかかります。
※月額は契約日・解約日に関わらず、毎月1日~末日までの1か月分の料金が発生し、別途通信料・その他レンタル料金など、使うサービスによっては別料金が発生します。
※見放題対象外のコンテンツもあります。