落語「白井権八(しらい ごんぱち)」のあらすじと豆知識を紹介!

「拙者に向かって、役者とはなにごとか!」
「白井権八」のあらすじ

話の舞台は、東海道の神奈川宿。
白井権八という若い侍が、大通りに面した茶屋で休んでいます。
そこへ、一人の雲助がたかりに来ました。
街道で駕籠(かご)担ぎや、荷物の運搬を生業にしている人のこと。“たかり”や“ぼったくり”をする者も多かった。
旦那、駕籠に乗りませんか?
いや、駕籠はもう乗り飽きた。断る。
それじゃあ、馬はどうです?
拙者は馬も嫌いでな。断る。
なにぃ?
駕籠も嫌、馬も嫌じゃあ、あっしたちは稼ぎなし。どうやって暮らせばいいんです?

強いばかりが武士じゃねえ。情けがあるのが、真の侍ってもんだ。
あなたのことじゃございませんがね、よく役者風情(ふぜい)が旦那みたいな格好して、ここを通るんですよ。
本物の武士だってんなら、それ相応のことはしたらどうです?
なんだと?妙なことを申すな。
拙者に向かって、「役者」とはなにごとか!
そう言って、腰に下げていた刀をすーっと抜いた権八。

雲助は、目の前で光る刀に恐れ慄き、すぐに退散していきます。
◆
それから少しして、今度は雲助の親分が権八のところにやってきました。
旦那。先ほどは、うちの子分が失礼しました。
けどね、あんた、刀を抜いたね?
えぇ?人を斬ろうってのかい?

斬れるものなら、斬ってもらおうじゃねえか!
この往来で人を斬ったりすりゃあ、どうなるかわかってんのか?
生意気なことしてやがると、タダじゃおかねえぞ!
親分に啖呵を切られ、またも刀に手をかけた権八。
しかし、今度は思いとどまり、ニヤリと笑みを浮かべます。
やあ、すまなかった。
なに、ほんの戯れだ。
拙者も武士らしくここを通りたいゆえ、これで勘弁してくれ。
そう言って、権八は二分金を置いて、そのまま行ってしまいました。
この権八と雲助たちのやり取りを、茶屋の二階から見ていたのが、長兵衛という男。
長兵衛は権八の粋な立ち振る舞いに感心し、近くで控えていた子分の権兵衛に声をかけます。
おい、今のを見てたか?
あの若い侍は、なかなか面白そうな奴だな。
そうですね。
ただ、あのまま進んで行ったら、夕暮れ時に鈴ヶ森を通ることになる。
あそこは山賊どもの溜まり場だ。
いくら腕に自信があっても、多勢に無勢じゃあ、無事ではすまないだろう。

そこでお前、ちょっとあの若侍を追いかけて、連れ戻してこい。
今日のところは、ここに泊まってもらって、夜が明けてから、江戸まで送ってやろうじゃねえか。
わかりました。すぐに行ってきます。

それから権兵衛は駆けていき、権八に追いつきました。
お急ぎのところ、すみません。
あっしは権兵衛と申す者です。

ここから先に行くと、山賊たちの溜まり場にぶつかります。
暗い時分に一人で通るのは危ないんで、今日のところは、手前と神奈川宿まで戻りませんか?
それで、夜が明けてから改めて、あっしの親分も合わせた三人で江戸に向かいましょう。
左様か。
そのお言葉はかたじけなくはあれど、悲しいかな、拙者は武士。
お主の話を聞いて、おめおめと来た道を戻ることはできぬ。
悪事を働く山賊どもを斬って斬って斬りまくり、庶民の難儀を救いたい。
……そうですか。
それじゃあ、どうぞお気をつけて。

というわけで、権兵衛は一人で長兵衛のところに帰ってきます。
どうだった?
来ませんよ。
山賊どもを斬って斬って斬りまくって、庶民の難儀を救うそうです。
なんと。そこまで言うとは、ますます気に入った。
よし。駕籠の支度をしろ!
あの若侍の腕がどれほどなのか、お手並み拝見といこうじゃないか。
こうして、長兵衛と権兵衛の二人は、駕籠で権八の後を追い始めます。

さて、その頃、権八はというと、例の鈴ヶ森に入るやいなや、たちまち山賊たちに取り囲まれてしまいました。

しばしの睨み合いの末、襲いかかってくる山賊たち。
権八はヒラリと身をかわしてから刀を抜くと、バッタバッタと山賊どもを切り伏せます。

その太刀捌きの美しいこと。あっという間に山賊たちを始末しました。
そこへ駕籠が到着し、中から出てきた長兵衛は、権八にこう声をかけます。
お若えの、お待ちなせえ。
待てとお止めなされしは、拙者がことでござるかな。
ご存知、長兵衛・権八の「鈴ヶ森の対面」の場面でございます。
ー完ー
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「白井権八」という人物について

- 「白井権八」は歌舞伎や浄瑠璃にも登場する、江戸時代前期の実在人物で、本名は「平井権八」。
- 鳥取藩士 白井正右衛門の息子。
- 18歳のとき、父を馬鹿にした男を、妖刀「村正」で斬り、江戸へ逃走を図る。
- 落語「白井権八」は、その江戸への道中を描いた話。
- 鈴ヶ森で長兵衛と出会った権八は、意気投合して、彼の用心棒になる。
- その後、江戸にたどり着いた権八は、吉原の三浦屋の花魁「小紫」に惚れる。
- 小紫に会う金を作るため、権八は130人もの辻斬り強盗をする。
- 結局、権八は捕えられて死罪となり、鈴ヶ森で首を晒される。
- その後、権八が亡くなったことを知った小紫も、彼の後を追って自ら命を絶った。
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