落語「たちきり」のあらすじ・オチ・豆知識を紹介!

「小糸、もっと聴かせておくれよ……」
「たちきり」のあらすじ

話の主人公は、とある大きな商家の若旦那。
彼は芸者の「小糸」に惚れており、この頃は毎日のように茶屋へ通っています。
一方で、小糸も満更ではないようで、彼と会うのを楽しみにしていました。
◆
しかし、芸者遊びは金がかかるもの。
手持ちの金が足りなくなった若旦那は、小糸に会うため、店の売上にまで手を付けていました。
若旦那。ちょっと、お話があります。
おや、番頭さん。
なんだい、話って?
今日から100日間、若旦那には、蔵の中で暮らしてもらいます。
ええ⁉︎
どうして、そんなことしないといけないんだい?
若旦那にも、お心当たりはあるでしょう?
……。
いくら若旦那といえども、お店のお金を使い込むのはいけませんな。
大旦那は、カンカンですよ?
いやだ!
あたしは蔵になんて、入らないよ!
若旦那。これでも、罰は軽くなったんです。
先ほど、大旦那が親戚を集めまして、あなたの処遇についての相談があったのですが……。
「田舎にやって働かせよう」だの、「漁師にしよう」だの、「乞食にしてしまえ」だの、ひどい意見ばかりでした。

「それは、さすがに可哀想」ということで、若旦那には、蔵に入って反省してもらうことに決まったんです。
……そうかい。
にしても、「今日から」なんて、急すぎないかい?
せめて、明日からにしておくれよ。
ダメです。
大旦那やご親戚たちの気が変わらないうちに、はやく入ってください。
どうしてもか?
どうしてもです。
……わかったよ。
こうして、蔵の中に閉じ込められた若旦那。
決して外に出られないよう、入り口には錠がかけられました。
◆
さて、その翌日。
派手な格好をした男が、若旦那の店にやってきます。
ごめんください。
はい、こんにちは。
あの……若旦那は?
ただいま、出かけております。
それでは、帰りましたら、この手紙をお渡しいただけますか?
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かしこまりました。
お預かりします。
「この手紙は、若旦那が熱を上げている芸者からだ」と、勘付いた番頭。
そこで、若旦那には黙っておき、手紙は引き出しにしまいました。
◆
それからというもの、手紙は毎日毎日、店に届きました。
しかし、80日目になると、これまで大量に届いていた手紙がピタッと止まってしまいます。

そんなことがありながら、ついに若旦那が蔵に入ってから100日が経過しました。
若旦那。おはようございます。
やあ、番頭さん。
しばらく会ってなかったが、変わりはないか?
ええ。おかげさまで。
それで、何か用かい?
はい。
もう100日が経ちましたので、外に出ていただいて結構です。
あれ?そうなのかい……。
でも、あたしは、もう少し蔵の中に居させてもらおうかな。
ええ?どうしてです?
ここに居ると、世知辛い世の中に関わることなく、呑気に過ごせるからね。
本を読んでいても、内容が頭によく入ってくるんだよ。
そう言われましても、若旦那にいつまでも蔵の中に居られては困りますので、どうか……。

わかった、わかった。
外に出るから、頭なんて下げないでおくれよ。
それにしても、若旦那。
よく我慢して、蔵の中に入ってくれましたね……。
なに言ってんだよ。元はと言えば、あたしが悪いんだから。
むしろ、こうやって改心できる機会をもらえて、感謝してるんだよ。
番頭さんも、いろいろ世話してくれて、ありがとうな。
もったいないお言葉です……。
そういえば、若旦那が蔵の中に居る間、お手紙がたくさん届きまして。
そう言って、番頭は最後に届いた手紙を差し出します。
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受け取った若旦那が中を開いてみると、そこには……
この手紙をご覧になって、すぐにお越しくださらなければ、今世はお目にかかれません。
あらあらかしこ
小糸
と書かれていました。
……。
番頭さん、ちょっと出掛けてもいいかい?
ええ。もちろんです。
どちらまで?
浅草の観音様だよ。
蔵の中にいる間、ずっと願掛けをしてたから、そのお礼をしたくてね。
そうでしたか。
それでは、お気をつけて行ってらっしゃい。
蔵から飛び出した若旦那は、床屋と銭湯に寄ってから、小糸のいる家を訪ねます。

ごめんください。
まぁ、若旦那!
女将さん。ご無沙汰して申し訳ございません。
あの……小糸は……?
あなた、今頃になって、小糸に会いにきたの?
実は、訳あって、長いこと来られなかったんです。
そうですか……。
小糸は、うちに居ます。
どうぞ上がってください。
家に上げてもらった若旦那。
しかし、彼が案内されたのは、位牌の前でした。

……?
女将さん、これは……?
小糸は先日、亡くなりました……。
えっ……どうして?
「どうして」と聞かれれば、「あなたのせい」と答えたくなります。
どういうことです?
若旦那。
あなたは前に小糸に会ったとき、「明日、芝居に連れていく」と約束してくれましたよね?
ええ。そうでした……。
あの子、ずっとあなたが迎えに来るのを待っていたのですよ?
でも、一日中待ってても、ついにあなたは現れなかった。
……。
それから、小糸は「若旦那に嫌われた」と、気を落としましてね……。
手紙を出しても一向に返事がないから、あの子は食べるものも食べなくなり、ついには床についてしまったんです。
そうだったのか……。
そんななか、あなたが小糸のために注文してくれた三味線が、うちに届きましてね。
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小糸は、とっても喜んで……。
もう一人では起きられなかったのに、私に支えられながら三味線を抱え、シャンと一回鳴らしたんです。
そのあとボーッとしてるから、「どうしたんだろう?」と思って、顔を覗き込んだら……もう、事切れてて……。
そんな……。
そうだとわかっていたら、蔵を蹴破ってでも出てきたのに……。
蔵?
実は、あたしは100日の間、蔵の中に入ってたんです。
そうだったのですね……。
だから、芝居の迎えに来られず、手紙も返せなかったんですか。
ええ……。
でも、今日という日に、あなたがここに来てくださったのも、何かの縁でしょう。
実は今日は、小糸の三七日なんですよ。
故人が亡くなってから、21日目に行われる法要のこと。
あの子に、線香をあげてってください。
ええ。拝ませていただきます。
仏壇に案内された若旦那は、線香を一本あげて、手を合わせました。
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さあ、若旦那。こちらを……。
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いやいや、お酒なんていただけませんよ。
いえ。せっかく若旦那に来ていただいて、口も濡らさずに返したら、小糸に叱られます。
そうですか……。
なら、少しだけ……。

そういって、若旦那が盃に口をつけると、三味線の音が聴こえてきます。
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……ん?
女将さん!
仏壇の三味線が鳴ってますよ!
えっ、どうして……?
これは……小糸が好きだった、地唄の『雪』だ。
「ほんに昔のむかしのことよ わが待つ人も我を待ちけん」
ああ……ごめんな、小糸。
あたしは、これから生涯、女房は持たないよ……。

若旦那、ありがとうございます。
そのお言葉が、なによりも手向けになります。
そのとき、三味線の音がふっと途切れてしまいます。
あれ?
小糸、もっと聴かせておくれよ……。
ああ、若旦那。
もう小糸は、三味線を弾きません。
どうして?
ご覧なさい。
ちょうど仏壇の線香が……。
「立ち切れました」
ー完ー
「たちきり」のオチ(サゲ)
芸者と遊んだときに支払う代金のことを「花代」といい、これは「⚪︎時間⚪︎円」といった具合に、遊んだ時間で決まります。
その時間を計算するために使われたのが、「線香」でした。
「たちきり」の最後の場面では、若旦那が仏壇にあげた線香が燃え尽きたので、「芸者と遊ぶ時間」が終わり、小糸は三味線を弾くのをやめた、というオチになっています。
ちなみに、線香が立ち切れた後に、新しい線香をつけて、時間の延長することを「お直し」と言います。
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「たちきり」の豆知識
- 別題は、「たちぎれ」「たちきれ」「立ち切り」「立切れ」「たちぎれ線香」「入れ黒子(ぼくろ)」。
- 原話は、『江戸嬉笑』という本の「反魂香」。
- もともとは、上方落語だった。
- 高座で演じられる際は、小糸の三味線が鳴る場面で、お囃子の方による三味線の演奏が入る。
- 三代目 桂米朝と五代目 桂文枝が得意とした。
- 小糸の名前は、「お久」や「美代吉」で演じられることもある。
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- 関智一:スネ夫(ドラえもん)etc.
- 石田彰:渚カヲル(エヴァンゲリオン)etc.
- 山寺宏一:ジーニー(アラジン)etc.
- 林原めぐみ:灰原哀(名探偵コナン)etc.
- 山口勝平:ウソップ(ONE PIECE)etc.
そして、高座のシーンの演出は、まるで寄席の中にいるような気分になってきます。
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