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落語「鉄拐」のあらすじ・オチ・豆知識を紹介!

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「一身分体とは、己の体から己を出す術だ」

「鉄拐(てっかい)」のあらすじ

この話の舞台は、なんと中国。

上海に店を構える「上海屋」では毎年、創業記念日に盛大な祝賀会を開いています。

物語は、そこの旦那が、会の余興に出演する芸人の手配をするところから始まります。

旦那

金兵衛さん。

金兵衛

はい、旦那。

金兵衛

何でしょう?

旦那

今年も、そろそろ祝賀会の季節だね?

金兵衛

ええ。

旦那

それで、余興のことなんだが……今回は、今まで見たこともない芸人を呼びたいんだ。

旦那

悪いが、遠方に商いに行くときに、探してきてくれないか?

金兵衛

かしこまりました。

旦那に頼まれた金兵衛は、さっそく翌日から出かけます。

しかし、なかなか良い芸人が見つかりません。

途方に暮れながら歩き続けた金兵衛は、やがて爽やかな高原に辿り着きました。

金兵衛

困ったなぁ……すっかり道に迷ってしまった。

金兵衛

おや、あそこにお爺さんが座ってるな。

金兵衛

あの人に道を聞いてみよう。

金兵衛

すみませーん!

お爺さん

なんだ?

金兵衛

ここから、どうしたら人里に出られますか?

お爺さん

里の人かい?

金兵衛

いえ、上海から来たんです。

お爺さん

ほう、珍しいこともあるものだ。

お爺さん

この場所は、来ようにも、なかなか来られるところではないのに。

金兵衛

え?

金兵衛

ここは一体、どこなんですか?

お爺さん

桃源郷だよ。

金兵衛

じゃあ、あなたは……?

お爺さん

仙人だ。

金兵衛

ええっ⁉︎仙人⁉︎

金兵衛

あの、お名前は?

鉄拐

鉄拐。

金兵衛

知ってますよ!

金兵衛

世にも名高い「八仙人」の1人でしょう?

鉄拐

よく知っておるな。

金兵衛

なんでも、仙人は仙術を使うとか……。

鉄拐

ああ、使えるよ。

金兵衛

どんな術なんです?

鉄拐

一身分体。

金兵衛

え?いっしん……?

鉄拐

一身分体とは、己の体から己を出す術だ。

金兵衛

……どういうことですか?

金兵衛

ちょっと、やってみせてもらえませんか?

鉄拐

いや、これは見せ物ではない。

金兵衛

そんなこと言って、本当はできないんじゃないですか?

鉄拐

何を言うか!

鉄拐

ほら、このとおりだ!

そう言って、鉄拐が自分のお腹をこすってから、すーっと息を吐くと、ぼんやりと煙のようなものが出てきます。

そして、その煙はだんだん輪郭がはっきりしてきて、やがて鉄拐そのものになりました。

金兵衛

おおー!!

鉄拐

静かにしろ。

鉄拐のお腹から出てきた鉄拐は、そこらへんを歩いたり、こちらを見たりしています。

その後、鉄拐本人がすーっと息を吸い込むと、もとのように煙になって、お腹に収まりました。

鉄拐

どうだ?

金兵衛

お見事!

金兵衛

先生!上海に来て、余興に出てくださいよ!

鉄拐

嫌だよ。

鉄拐

さっきも言ったが、見せ物じゃないんだ。

金兵衛

そこをなんとか!

金兵衛

部屋は上等なのを用意しますし、なんでも好きなお食事を出しますので!

鉄拐

いらないよ。

鉄拐

住むのは汚いところでいいし、食べ物は「きれいな水」と「椎の実」があれば十分だ。

金兵衛

わかりました!

金兵衛

すべて先生の望むままに用意しますので、どうにか!

鉄拐

しつこいね!

鉄拐

わかったよ!行ってやるよ!

金兵衛

ありがとうございます!!

鉄拐

上海から来たのだったな?

鉄拐

この杖に捕まって、目をつぶれ。

金兵衛

……?はい。

金兵衛が言われたとおりにすると、次の瞬間には上海に帰ってきていました。

さっそく彼は、鉄拐のことを旦那に報告します。

金兵衛

ただいま戻りました!

旦那

おお、お帰り。

旦那

どうだった?

金兵衛

仙人を連れてきました!

旦那

ほう。

旦那

その方は、どちらにいらっしゃるんだい?

金兵衛

今は物置小屋にこもって、水を飲みながら、椎の実をかじっています。

旦那

ええ?

旦那

もっと良い部屋で、ご馳走を出しなさいよ。

金兵衛

いえ、これが仙人のお望みですので……。

さて、それから3日後。

ついに、祝賀会の当日を迎えます。

金兵衛

先生、そろそろ出番です。

鉄拐

うむ。

余興の大トリで登場した鉄拐。

舞台にふらりと現れ、例の「一身分体」の術を披露すると、観客たちは大盛り上がりでした。

金兵衛

先生、お疲れ様でした!

鉄拐

うむ。

金兵衛

実は、さっき観ていた隣村の役人が、「明日の祭りにも出てほしい」と言ってるのですが……。

鉄拐

ああ、いいよ。

意外にも快諾した鉄拐は、隣村の祭りにも出演。

そこで興行主の目に留まり、今度は寄席に出ることになりました。

「名人鉄拐」の看板を掲げたその寄席は、大盛況。

鉄拐はそこへ連日、出演することになり、金兵衛は専属マネージャーのようになってきました。

客を呼べる鉄拐は、周りからチヤホヤされ、山のように差し入れをもらいます。

あるとき、興味本位で甘栗を食べてみた鉄拐は、その美味しさにびっくり仰天。

水と椎の実しか口にしてこなかった彼は、これを機に、お茶や菓子に手を出します。

また、服装もこれまではボロボロの布をまとっていたのに、ブランド品を着るように。

部屋も高級ホテルのスイートに引っ越し、きれいな女性を囲って、車を乗り回す生活になりました。

舞台演出はBGMを使った派手なものになり、「仙人といっても、千人いるわけではない……」なんて、つまらないギャグを言い始めます。

その後は、テレビやラジオにひっぱりダコ。

ついには、本まで出し始め、『あなたも10日で仙人になれる』『仙人力』『仙術はセンスが9割』といったタイトルで、次々に出版します。

弟子入りを希望する若者も現れ、「厄拐」などと名付けました。

しかし、肝心の芸の方はというと、「お腹から、もう一人の自分を出す」の一点張り。

当然のことながら、時間が経つにつれて飽きられ始め、集客に陰りが見えてきます。

そこで寄席の興行主は、新たな仙人を探すべく、金兵衛から教えてもらった桃源郷へ。

幸運にも「瓢箪(ひょうたん)から駒」、つまり馬を出す、「張果老」という仙人を見つけます。

こうして寄席に連れてこられた張果老は、たちまち大人気になりました。

面白くないのが、鉄拐。

ある夜、鉄拐は張果老の家に忍び込むと、仙術を使って、瓢箪から馬を吸い出してしまいます。

それから、張果老は寄席で芸を披露できなくなり、故郷に帰ってしまいました。

金兵衛

先生、張果老が寄席に出るのをやめたそうです。

金兵衛

なんでも、瓢箪から馬が出てこなくなったとか……。

鉄拐

そうかい。

鉄拐

あいつも、それまでの仙人だったということだ。

鉄拐

馬くらいなら、俺が出してやろうか?

金兵衛

えっ⁉︎

金兵衛

先生も出せるんですか?

鉄拐

もちろんだ。

寄席ではさっそく、「あの鉄拐が、今度は馬を出す!」と宣伝して、客を集めます。

しかし、舞台に上がった鉄拐は、一向に馬を出せません。

「早く出せ!」と野次を飛ばされる中、鉄拐は“あること”を思い付きました。

鉄拐

それでは今から、お客様を私の腹に入れて、馬をご覧にいれます。

やってみると、見事に成功。

この芸はたちまち話題になり、鉄拐は毎日、たくさんの客をお腹に入れました。

そんななか、ある日にやってきたのが、文士の団体客。

鉄拐がお腹に入れてあげると、彼らはそこで酒を飲み始め、ついには2人の男が大喧嘩をします。

お腹の中で暴れられて、たまらなくなった鉄拐が、その2人を吐き出すと……。

なんと、李白と陶淵明でした。

ー完ー

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「鉄拐」のオチ(サゲ)

あらすじの最後に登場した「李白(りはく)」と「陶淵明(とうえんめい)」は、二人とも中国の詩人です。

まず、李白は日本の奈良時代にあたる「8世紀」に活躍しました。

画像出典:ウィキペディア「李白

酒好きなことから「酒仙」とも呼ばれ、「酔って、船の上から水面に映る月を掴もうとして落ちてしまい、そのまま溺れ死んだ」という伝説もあります。

陶淵明は、日本の古墳時代にあたる「4〜5世紀」の詩人。

画像出典:ウィキペディア「陶淵明

彼も酒が好きで、酔うと「弦の張られていない琴を抱きながら、心の中で演奏を楽しんだ」という逸話もあるほどです。

以上を踏まえた上で「鉄拐」は、「喧嘩した文士って誰だろう?→ああ、酒好きの李白と陶淵明だったのか」という、いわゆる「考えオチ」になっています。

「鉄拐」の豆知識

  • 原話は、『落噺常々草』という本の「腹曲馬」だとされる。
  • 別題は、「鉄拐仙人」「張果郎」。
  • このネタは、立川談志が得意とした。
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  • 関智一:スネ夫(ドラえもん)etc.
  • 石田彰:渚カヲル(エヴァンゲリオン)etc.
  • 山寺宏一:ジーニー(アラジン)etc.
  • 林原めぐみ:灰原哀(名探偵コナン)etc.
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そして、高座のシーンの演出は、まるで寄席の中にいるような気分になってきます。

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