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落語「搗屋無間」のあらすじ・オチ・豆知識を紹介!

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「……おや?これは吉原の『小稲花魁』の錦絵ですね」

「搗屋無間(つきやむげん)」のあらすじ

背景(大通り・昼)

話は、幇間(たいこもち)の聚楽(じゅらく)が、搗き米屋の前を通りかかるところから始まります。

搗(つ)き米屋とは?

今でいう、精米所。江戸時代には、臼の中に玄米を入れて、杵でついて精米していた。
精米では米の「ぬか」を取り除くが、この時代は手作業だったこともあり、精米後はもとの重さから一割ほど少なくなったという。
精米を依頼した客の立場からすると、「持ってきた米の重さ」より「精米された米の重さ」のほうが軽くなるわけで、このことを「搗き減り」といった。

親方

……はぁ。

聚楽

おや、親方!

聚楽

ため息なんてついて、どうしたんです?

親方

ああ、聚楽か。

親方

実はね、ここのところ、職人の徳兵衛の体調が良くないんだよ。

親方

「どこが悪いんだ?」って聞いても、何も答えねえから困ってるんだ。

聚楽

徳さんなら、あたしもよく知ってます。

聚楽

よかったら、あたしのほうからも聞いてみましょうか?

親方

ああ、頼むよ。

こうして、徳兵衛の部屋にやってきた聚楽。

聚楽

徳さん、こんちは。

徳兵衛

ああ、聚楽さん。

徳兵衛

どうも。

聚楽

具合が悪いんですって?

徳兵衛

そうなんだよ。

聚楽

あなた、「恋煩い」なんでしょ?

徳兵衛

えっ!?

徳兵衛

なんで、わかるんだ?

聚楽

さっき親方が、「徳さんにどこが悪いのか聞いても、何も答えない」って言ってたんで。

聚楽

そういう人に言えないような病の人は、だいたい「恋煩い」なんですよ。

徳兵衛

たまげたなぁ。

徳兵衛

聚楽さんには、何でもお見通しだ。

聚楽

で、誰に煩ってるんです?

徳兵衛

この人だ。

聚楽

……おや?

聚楽

これは吉原の「小稲花魁」の錦絵ですね。

徳兵衛

この間、絵草紙屋で見かけて、買ってきたんだ。

絵草紙とは?

挿絵が多く入った読み物のこと。絵草紙を扱う「絵草紙屋」では、「錦絵(カラーの浮世絵」)も売られていた。

徳兵衛

はじめは「綺麗な人だなぁ」と思って眺めてたんだけど、毎日毎日、目にしてるうち、だんだん胸が苦しくなってきちまった。

聚楽

そんなに花魁のことを想ってるなら、会いに行ったらいいじゃないですか。

徳兵衛

会えるのか?

聚楽

ええ。お金さえあれば。

徳兵衛

……そうか。

徳兵衛

親方に預けてる給金が10両ほどあるんだが……それで足りるかね?

聚楽

それだけあれば十分です。

徳兵衛

よし。じゃあ、今から行こう!

聚楽

ちょっとお待ち!

聚楽

小稲といえば、吉原の中でも名高い花魁。

聚楽

そんな格好では、相手にしてもらえませんよ。

徳兵衛

そ、そうなのか……。

徳兵衛

なら、どうすればいい?

聚楽

まずは、床屋と湯屋に行って、さっぱりしてきなさい。

聚楽

その間に、あたしが親方からお金を預かって、着物を用意しておきます。

徳兵衛

ありがてぇ。

徳兵衛

よろしく頼むよ。

こうして、すぐに床屋と湯屋に向かった徳兵衛。

聚楽はそれを見送ってから、親方のところに戻ってきます。

親方

どうだった?

聚楽

徳さんは、恋煩いでした。

親方

恋煩い?誰に?

聚楽

吉原の花魁です。

親方

それは、えらい女に惚れたな。

聚楽

そういうわけなんで、これから徳さんとあたしで吉原に行って、花魁に会ってこようと思うんですが……。

親方

ああ。それで徳兵衛の具合が良くなるなら構わねえよ。

親方

だが、金はどうするんだ?

聚楽

徳さんの話だと、親方に預けてる給金が10両ほどあるとか。

親方

おっ、ちょっと待ってろよ……。

親方

ほら。これが徳兵衛から預かってた金だ。

親方

もし足りねえようなら、俺も出すから、遠慮なしに言ってくれ。

聚楽

ありがとうございます。

お金を預かった聚楽は、さっそく小洒落た着物を買いに出かけました。

背景(大通り・夕方)

さて、それからしばらくして、床屋と湯屋から帰ってきた徳兵衛は、聚楽と合流。

買ってきてもらった着物に袖を通すと、なんとか見られる格好になりました。

ただ、履き物だけは良い物を揃えられなかったため、親方の下駄を借りることに。

これで準備が整ったので、徳兵衛と聚楽は、意気揚々と吉原へ向かいます。

聚楽

徳さん。

聚楽

吉原では、正直に「搗き米屋の職人だ」なんて言ったら相手にされませんから、「木更津の大尽」ということにしましょう。

徳兵衛

木更津の「大蛇」?

聚楽

「大尽」です。

聚楽

お金持ちのことですよ。

徳兵衛

なるほど。

徳兵衛

たしかに、俺は今、10両も持ってるからな。

聚楽

まぁ、10両くらいじゃ大尽とは言えないんですが……。

聚楽

あと、気をつけなくちゃいけないのが、あなたの「手」だ。

徳兵衛

俺の手?

聚楽

毎日、杵を握ってるから、豆だらけでしょ?

聚楽

それを見られると、どこかの職人だとバレちまいます。

聚楽

だから、鼓(つづみ)の稽古をしてると言ってください。

徳兵衛

わかった。

こうして、聚楽が大尽としての振る舞い方を教えているうちに、吉原に到着します。

彼らがまず向かったのが、「引手茶屋」というところ。

格の高い花魁に会うには、直接店に行くのではなく、こういう茶屋を通すのがしきたりでした。

聚楽

こんちは。

茶屋のおかみ

おやまあ、聚楽さん。

茶屋のおかみ

いらっしゃい。

聚楽

今日は、木更津の大尽の取り巻きで来たんで。

茶屋のおかみ

そうかい。

茶屋のおかみ

旦那さまは、どちらに?

聚楽

あそこです。

茶屋のおかみ

あんなところに立たせてないで、早く中へ案内しなさいよ。

聚楽

へえ。

聚楽

旦那は、小稲花魁をお名指しなんで、空いてるか聞かせにやってくださいね。

茶屋のおかみ

わかったよ。

聚楽

さあ、旦那!どうぞこちらへ。

徳兵衛

ごめんください。

徳兵衛

鼓の稽古を……。

聚楽

それはまだ早いよ!

聚楽

早く入って!

こうして、茶屋の中へ案内された徳兵衛。

部屋に入ると、すぐに店の若い衆がやってきました。

若い衆

あの……お履き物が足りないようなのですが……。

聚楽

あれ?旦那、履き物はどうしました?

徳兵衛

懐へ入れてきたよ。

聚楽

なにやってるんです!

聚楽

そんなとこ入れちゃダメだよ!

徳兵衛

そうなの?

聚楽

若いもんに預けてください!

徳兵衛

でも、無くなりやしないかな?

徳兵衛

これは、親方から借りた、大事な下駄なんだよ。

聚楽

大丈夫ですよ。

聚楽

さあさあ、早く渡してくださいね。

こんな具合に、聚楽は「いつボロが出るか」と冷や冷やしながら、なんとかやり過ごしました。

そうして、しばらくすると、花魁のお迎えがあり、徳兵衛は妓楼に上がります。

楽しい時間というのは、あっという間に過ぎるもの。

烏カァで夜が明けて、夢見心地で家に帰ってきた徳兵衛は、抜け殻のようになってしまいました。

寝ても覚めても頭に浮かぶのは小稲のことばかりで、仕事に手が付きません。

背景(大通り・夕方)
親方

おい、徳兵衛!

親方

ぼーっとしてねえで、手を動かせ!

徳兵衛

……へえ。

親方

おいおい。

親方

あの日から、病が良くなるどころか、悪くなってるじゃねえか!

徳兵衛

へえ。

親方

……もういい。

親方

今日はもう上がって、飯食って早く寝ちまえよ。

徳兵衛

へえ。

その日の夜。

徳兵衛が布団に入ろうとすると、近くの家から三味線の音が聞こえてきました。

そこで流れていたのは、「梅が枝の手水鉢(ちょうずばち)」という曲。

「梅が枝という名の遊女が“無間の鐘”の代わりに手水鉢を叩いたら、300両が出てきた」という浄瑠璃の場面を歌ったものです。

無間の鐘とは?

静岡県の観音寺にあった鐘のこと。この鐘をつくと、現世では莫大な富を得られるが、来世は無間地獄に落ちるという伝説があった。

徳兵衛

……。

徳兵衛

この歌みたいに、手水鉢をぶっ叩いたら、金が出てきたりしないかな?

徳兵衛

金さえあれば、また小稲に会えるんだが……。

そう思った徳兵衛は、布団を抜け出し、家の外にある手水鉢へ向かいます。

徳兵衛

でも、たしか金が出てきたら、来世は地獄行きなんだよな……。

徳兵衛

……。

徳兵衛

まぁ、いいや!

徳兵衛

小稲にもう一度会えるなら、地獄でもなんでも行ってやらぁ!

意を決した徳兵衛は、置かれていた柄杓を手に取り、手水鉢を力強く叩くと……

不思議なことに、小判が降ってきました。

それをかき集めたところ、なんと総額270両。

徳兵衛

あれ?

徳兵衛

梅が枝が叩いたときは、300両出たというが……30両ばかし足りねえな。

徳兵衛

……そうか、わかった!

「一割の搗き減りだ」

ー完ー

「搗屋無間」のオチ(サゲ)

あらすじの冒頭で触れた通り、江戸時代の搗き米屋では、玄米を精米した際に、重さが1割ほど減ってしまい、このことを「搗き減り」といいます。

噺のオチでは、お望みどおり、大金を手にした徳兵衛でしたが、「搗き米屋」という商売が災いして(?)、本来の額から1割引かれてしまいました。

ちなみに、この搗き減りの割合は、「搗き米屋」側の儲けを多くするため、「2割」とされることもあったようです。

そのため、落語家によっては、最後の金額を「2割減」の「240両」にしたりします。

「搗屋無間」の豆知識

  • 演者によって、花魁の名前を「丸山花魁」とすることもある。
  • また、最後に叩くのを「手水鉢」ではなく、搗き米屋の仕事に使う「臼」にすることも。
  • 別題は「搗屋問答」「無間の臼」。
  • 原話は蜀山人の『春笑一刻』という本にあるとされる。
  • このネタは、八代目 春風亭柳枝が得意とした。
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  • 石田彰:渚カヲル(エヴァンゲリオン)etc.
  • 山寺宏一:ジーニー(アラジン)etc.
  • 林原めぐみ:灰原哀(名探偵コナン)etc.
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