落語「牛ほめ」のあらすじと豆知識を紹介!

「伯父さん。ちょっとだけ、向こうを向いててくれ」
「牛ほめ」のあらすじ

話は、与太郎が父親に呼び寄せられるところから始まります。
おい、与太郎。ちょっといいか?
なんだい、親父。
今から、伯父さんのとこに行って来てくれないか?
どうして?
実はこの前、伯父さんは家を新築したんだ。
それで俺は一昨日、様子を見に行ったんだが、伯父さんはちょうど留守でな。
何度も行くのは気まずいから、今日はお前に家を褒めてきてもらいたいんだよ。
まぁ、暇だからいいけど……。
どうやって、褒めたらいいの?
伯父さんは家の木材にこだわって、檜(ひのき)をふんだんに使ったんだ。
だから、それを珍しがって、「家は総体檜造りですな」とでも言ってやれば、喜ぶだろう。
ほう。
あと、「畳は備後の五分縁(ごぶべり)」で、「天井は薩摩の鶉杢(うずらもく)」だから、それも褒めてやってくれ。
「畳は貧乏でベリベリ」で、「天井はサツマイモとウズラ豆」?
違う違う!
覚えられなきゃ、後で紙に書いてやるよ。
ああ、そうしてくれ。
でな……せっかく、こだわって作った家なのに、一つだけヘマをしたんだ。
それってのが、台所の正面にある大黒柱に空いちまってる「大きな節穴」なんだよ。
その穴のことを、伯父さんはひどく気にしてるらしい。
へぇー。
そこでお前は、その穴を上手く隠す方法を教えてやるんだ。
何かで埋めるの?
いや、穴の上に「秋葉様のお札」を貼るんだよ。

秋葉神社にはな、火防の神様が祀られてるんだ。
そこのお札を柱に貼れば、穴は隠れるし、火の用心にもなるだろう。
なるほどね。
あと、伯父さんは最近、牛を飼い始めたそうだ。
だから、もしかすると、お前に自慢してくるかもしれない。
そうなったら、牛のことも褒めてやってくれ。
わかった!
「牛は総体檜造りですな」って褒めたらいいんでしょ?
檜で出来た牛なんているか!
牛はな、「天角・地眼・一黒・鹿頭・耳小・歯合」なのを褒めるんだよ。
これまた、難しいな。
「天角(てんかく)」は、角が天に向かって生えてること、「地眼(ちがん)は、目が地面を睨んでること、「一黒(いっこく)」は、体が黒いことで、「鹿頭(ろくとう)」は頭が鹿に似ていること、そして「耳小(にしょう)」「歯合(しごう)」は、耳が小さくて、歯が違いちがいになっていることを意味する。
これが、いい牛の特徴なんだよ。
到底覚えらんないから、それも紙に書いといてくれ。
わかった、わかった。
こうして、与太郎は褒め言葉をすべて紙に書いてもらってから、伯父さんの家に向かいます。

こんちは。
おう、与太郎か。
まぁ、お上がり。
伯父さん。ちょっとだけ、向こうを向いててくれ。
えっ?どうして?
いいから、いいから。
そう言って、伯父さんがこちらを見ていないのを確認してから、与太郎は懐に入れていたメモを取り出します。

えー……ときに伯父さん。
この家は、総体檜造りですな?
ああ、そうなんだよ!
それで……畳は備後の五分縁で、天井は薩摩の鶉杢ですな?
よく気付いたなぁ!
この家は、そういう細かいところまで、こだわって作ってもらったんだ!
ただな、一つだけヘマをしちまって……。
大黒柱の節穴でしょ?
えっ⁉︎
なんで知ってるんだ?
その穴を上手く隠す方法を教えてあげようか?
上に秋葉様のお札を貼ったらいいんだよ。
ほう、秋葉様のお札をね。
それなら、火の用心にもなるし、ちょうどいいな!
でしょ?
あとは……最近飼い始めた、牛はどこにいるの?
お前は、この家のことを何でも知ってるな……。
牛なら、家の裏にいるよ。
こうして、伯父さんは与太郎を牛のところまで案内してくれます。
ああ、こいつか。
ずいぶん、小さい牛だね。
それは、犬だよ。
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どおりで、小さすぎると思ったんだ。
ほら、牛ならあそこにいるだろ?
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ああ、あれね。
えー……天角・地眼・一黒・鹿頭・耳小・歯合!
よく、そんな難しいことを知ってるな!
そんなことを二人が話していると、その目の前で牛がフンをしました。

うわっ、汚ねえなぁ。
そうなんだよ。
この糞の始末には、ほとほと困っててなぁ……。
だいたい、尻に肛門なんて穴が空いてるから、こいつは糞を垂れるんだ。
そしたら、秋葉様のお札を貼ったら?
そうすれば、穴は隠れるし……
「屁の用心にもなる」
ー完ー
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「牛ほめ」で家を褒めるシーンのセリフ
与太郎が父親から「家」の褒め方を教わる際に、聞き間違えをするシーンは、このネタの面白い部分の1つです。
落語家によって演出は異なりますが、代表的な聞き間違えのパターンには、下記のものがあります。
(※スマホの方は、画面を横にしてご覧ください)
| 褒め方 | 説明 | 聞き間違え方 |
|---|---|---|
| 総体檜造り | 建築のための木材を、すべてヒノキにしていること | 総体ヘノコ(「男性の陰部」の意味)造り |
| 畳は備後の五分縁(ごぶべり) | 備後(広島県)で作られた、ヘリの幅が5分(約1.5cm)と細めな高級な畳 | 畳は貧乏でベリベリ(ボロボロ) |
| 左右の壁は砂摺(ず)り | 表面に砂と糊を混ぜたものを塗って仕上げた、おしゃれな壁 | 佐兵衛(伯父の名)のかかあは、ひきずり(「はしたない女」の意味) |
| 天井は薩摩の鶉杢(うずらもく) | ウズラの羽のように美しい模様をした、薩摩杉(屋久杉)の板を使った天井 | 天井はサツマイモとウズラ豆 |
| 庭は総体御影(みかげ)造り | 高級な御影石を使った庭 | 庭は見掛け倒し |
「牛ほめ」の豆知識
- 別題は、「普請ほめ」「牛褒め」。
- 上方落語では、「池田の牛ほめ」という題で演じられる。
- 原話は、『初音草噺大鑑』という本の「世は金が利発」だとされる。
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この作品は、雲田はるこさん原作のマンガをアニメ化したものなのですが、落語の魅力が「これでもか!」というほど、たっぷり詰まっています。
まず注目すべきは、声優陣の豪華さ。
- 関智一:スネ夫(ドラえもん)etc.
- 石田彰:渚カヲル(エヴァンゲリオン)etc.
- 山寺宏一:ジーニー(アラジン)etc.
- 林原めぐみ:灰原哀(名探偵コナン)etc.
- 山口勝平:ウソップ(ONE PIECE)etc.
そして、高座のシーンの演出は、まるで寄席の中にいるような気分になってきます。
落語に少しでも興味があれば、ハマること間違いなしですので、ぜひ観てみてください!
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