落語「道灌」のあらすじと豆知識を紹介!

「俺の知り合いに、雨が降るたびに傘を借りて、一度も返しに来ない奴がいるんですよ」
「道灌(どうかん)」のあらすじ

話は、八五郎がご隠居の家を訪ねるところから始まります。
こんちは。
おや、八つぁんかい。
まぁ、お上がり。
それにしても、ご隠居は絵がお好きなんですね。
わかるかい?
わかりますよ。
こんなに部屋中、ところ構わずベタベタと絵を貼ってたら。
……嫌な言い方だね。
おっ。あそこに貼ってある絵は、面白いですね。
男の人が、シイタケを被ってるや。

あれは、「騎射笠(きしゃがさ)」といって、狩りをするための笠だよ。
お前、このお方を知らないのかい?
知りませんよ。
会ったことないし。
当たり前だ。
これに描かれているのは、かの有名な太田道灌公だよ。
大きな土管工?
お・お・た、ど・う・か・ん・こ・う!
この絵はな、道灌公が家来を連れて、山へ狩りに行ったところが描かれているんだ。
道灌公は、道中でにわか雨に見舞われてな。
雨具の支度がなかったものだから、近くの家から借りることにした。
しかし、そこで出てきた女は、「お恥ずかしゅうございます」と言いながら、お盆の上に山吹の枝を載せて差し出したんだ。

んん?
なんだか、意味が分からないや。
お前が分からないのも、無理はない。
実は、道灌公も、女の意図がお分かりにならなかったのだからな。
はぁ。
そのとき、家来の一人が進み出てこう言った。
「恐れながら申し上げます」
「“七重八重 花は咲けども 山吹の 実のひとつだに なきぞ悲しき”という、古い和歌がございます」
「彼女は、その歌になぞらえ、“実の”と雨具の“蓑”をかけて、お断りをしたいのだと存じます」
へえー。
この女の人、歌を使って、上手いこと雨具を貸すのを断ったってわけか。
ああ。
家臣の進言を聞いた道灌公は、「私は歌道に暗かった」と言って、自分のお城に帰っていった。
その後、道灌公は和歌の猛勉強をして、立派な歌人になられたんだ。
ちょっと待った!
この人、お城なんて持ってたんですか?
おいおい、笑われるよ。
千代田のお城があるだろう?
あれは、もともと道灌公のお城だったのが、後に徳川様のお城になったんだ。
そうだったのか。
なら、徳川さんはずいぶん安く買ったんだろうね。
ん?どうしてだ?
だって、“家、康(安)”って言うくらいだから。
馬鹿なことを言ってんじゃないよ。
そうだ、ご隠居。
さっきの和歌を、紙に書いてくれませんか?
それは構わないが、何に使うんだ?
いやね。
俺の知り合いに、雨が降るたびに傘を借りて、一度も返しに来ない奴がいるんですよ。
だから、次にそいつが来たとき、その和歌で断ってやろうと思って。
なるほどな。
そしたら、今、書いてあげるから、少し待ちなさい。
こうしてご隠居は、「七重八重 花は咲けども 山吹の 実のひとつだに なきぞ悲しき」の和歌を、八五郎でも読めるように、すべて平仮名で書いてあげました。

ほら、書けたたぞ。
ありがとうございます。
えーっと……な・な・へ・や・へ?
違う違う。
「ななえ・やえ」と読むんだ。

こんなことをして、ご隠居が読み方を教えているうちに、空の様子が怪しくなってきます。
おや、なんだか外が暗くなってきたね。
こりゃあ、ひと雨降りそうだ。
そうだね。
雨が降れば、あいつが傘を借りにくるぞ!
こうしちゃ、いられねぇ。
ご隠居、このあたりで失礼します!

急いで、自分の家に帰ってきた八五郎。
そこへ、おあつらえ向きに、例の八五郎の友達が訪ねてきました。
おう、八つぁん。
ちょっと借りたいものがあるんだが……。
お、来たね。
わかってるよ。傘だろ?
いや、もう雨合羽を着てるから、傘はいらない。
これから、ちょっと出かけるんだが、遅くなると明かりがいる。
だから、提灯を貸してくれないか?

まぁ、いいが……。
提灯を借りたきゃ、傘も借りてってくれよ。
なんでだよ!
傘はいらねぇよ!
いいじゃねぇか、「傘を貸してくれ」って、そう言ってくれるだけでいいんだ。
変な奴だなぁ。
わかったよ。“傘を貸してくれ”。
待ってました!
お恥ずかしゅう……。
裏声を出して、そう言いながら、ご隠居に書いてもらった和歌を差し出した八五郎。

なんだこれは?
な・な・へ・や・へ……?
違う違う。
これは、こう読むんだよ。
七重八重 花は咲けども 山吹の……

ここまで口に出した八五郎は、その後の読み方を忘れてしまいました。
仕方がないので、適当に読みます。
……味噌一樽と鍋と釜敷き。
なんだい、それは?
台所道具の都々逸(どどいつ)か?
こいつ、都々逸なんて言ってやがる!
さては、お前、歌道に暗いな?
ああ、そうだ。
「角が暗いから、提灯を借りに来た」
ー完ー
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「道灌」の豆知識
- 別題は、「太田道灌」。
- 前座の落語家が、よく高座にかける「前座噺」として知られる。
- 柳家一門に入門すると、この「道灌」を最初に教わるそう。
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