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落語「金明竹」のあらすじと豆知識を紹介!

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「わては、中橋の加賀屋佐吉から参じましたん」

「金明竹(きんめいちく)」のあらすじ

この話の主人公は、与太郎。

彼は今、叔父さんの営む道具屋で、店番をしています。

そこへ、ある男が声をかけてきました。

ごめんください。

与太郎

はい。こんちは。

にわか雨に降られたもんで、ちょっと軒下をお借りしたいのですが……。

与太郎

ダメだよ。

与太郎

店の軒下を持ってかれたら、うちが困っちゃう。

あ、いや、軒下で雨宿りさせてもらいたいんです。

与太郎

そういうことか。

与太郎

なら、この傘を貸してやるよ。

え、いいんですか?

与太郎

ああ。いいよ。

ありがとうございます!

その男が立ち去ってしばらくすると、叔父さんが店の様子を見に、2階から降りてきました。

叔父さん

与太郎。誰か店に来たか?

与太郎

うん。

与太郎

「軒下で雨宿りさせてくれ」って人が来たから、傘を貸してあげたよ。

叔父さん

ん?どの傘を貸したんだ?

与太郎

そこに置いてあったやつ。

叔父さん

ええっ!?

叔父さん

あそこに置いてたのは、私がこの間買って、まだ一度も使ってない傘じゃないか!

叔父さん

誰に貸したんだ?

与太郎

知らない人。

叔父さん

おいおい。

叔父さん

そういうときは、「貸し傘なら何本もございましたが、この間からの雨で使い尽くしまして、骨は骨、紙は紙とバラバラになってしまったので、物置きに放り込んであります」とか言って断るんだよ。

与太郎

そうなのか。

与太郎

じゃあ、次からはそうするよ。

叔父さん

頼んだよ。

それから少しすると、今度は向かいの近江屋の人が訪ねてきます。

近江屋

ごめんください。

与太郎

はい。こんちは。

近江屋

近江屋でございますが、天井でネズミが暴れておりまして……。

近江屋

お宅のネコを貸していただけませんか?

与太郎

お、来たね。

与太郎

貸しネコなら、何匹もございましたが……。

近江屋

へ?貸しネコ?

与太郎

この間からの雨で使い尽くしまして、骨は骨、紙……はネコには無いから、皮は皮でバラバラになってしまったので、物置きに放り込んであります。

近江屋

そ、そうでしたか……。

こうして近江屋の人が手ぶらで帰った後で、また叔父さんが様子を見に来ます。

叔父さん

今、誰か来てなかったか?

与太郎

うん。近江屋の人。

叔父さん

何のご用だったんだ?

与太郎

ネズミを退治したいから、ネコを貸してくれって。

叔父さん

ほう。それで、貸してやったのか?

与太郎

いや。

与太郎

「この間からの雨で、バラバラになったから、物置きに放り込んである」って言って、断ってやった。

叔父さん

ばか!それは傘の断り方だよ!

叔父さん

ネコの場合はな……

叔父さん

「ネコなら一匹おりましたが、この間からさかりがつきまして。先日、久しぶりに帰ってきたと思ったら、どこかでエビの尻尾でも食べたのでしょう。お腹を下しまして……。お宅へお連れして、座敷の上で粗相をするといけません。今は、マタタビを舐めさせて、寝かしております」とでも言うんだ。

与太郎

ふーん。

与太郎

じゃあ、次はそう断るよ。

叔父さん

頼んだよ。

それから少しすると、今度は横丁の越後屋の人がやってきました。

越後屋

ごめんくださいまし。

与太郎

はい。こんちは。

越後屋

越後屋の者ですが、こちらの旦那様に目利きをしていただきたい品がございまして……。

越後屋

ちょいとお越しいただけませんか?

与太郎

ああ、うちにも旦那が一匹いたんですがね……。

越後屋

一匹⁉︎

与太郎

この間からさかりがつきまして。先日、久しぶりに帰ったと思ったら、どこかでエビの尻尾でも食べたのでしょう。お腹を下しまして……。

与太郎

お宅へお連れして、座敷の上で粗相をするといけません。今は、マタタビを舐めさせて、寝かしております。

越後屋

そ、そうだったんですか⁉︎

越後屋

では、あらためてお見舞いに伺います……。

こうして越後屋の人が帰ってから、叔父さんは、また様子を見にきます。

叔父さん

どなたか来ていたようだね?

与太郎

うん。横丁の越後屋さん。

叔父さん

何のご用だった?

与太郎

叔父さんに目利きしてほしい品があるんだって。

叔父さん

そうかい。

叔父さん

なら、今から行ってこよう。

与太郎

いや、断ったから大丈夫だよ。

叔父さん

なに?

与太郎

「うちの旦那は、この間からさかりがつきまして、今はお腹を下してるから、マタタビを舐めさせて寝かしてます」って。

叔父さん

なんてことを言ったんだ!

叔父さん

今すぐ、近江屋さんに行って誤解を解いてくるよ!

与太郎

いってらっしゃい。

叔父さん

おーい、ばあさん!

叔父さん

ちょっと出かけてくるから、店のことを頼むよ!

叔母さん

わかりました。

そう言って叔父さんが出かけると、すぐに男が訪ねてきました。

加賀屋

ごめんやす。

与太郎

はい。こんちは。

加賀屋

旦那はんは、いらっしゃいますか?

与太郎

旦那はんなら、出かけてるよ。

加賀屋

そうでっか。

加賀屋

わては、中橋の加賀屋佐吉から参じましたん。先日、仲買いの弥市が取り次ぎました道具7品のうち、祐乗・光乗・宗乗三作の三所物、並びに備前長船の則光、四分一拵え横谷宗珉の小柄付きの脇差。柄前は、旦那はんは古鉄刀木と言うとりましたが、埋れ木やそうで、木が違うとりましたさかい、念の為ちょっとお断り申します。次は、のんこの茶碗、黄檗山金明竹の寸胴の花活け、「古池や蛙飛びこむ水の音」と申します、風羅坊正筆の掛け物、沢庵・木庵・隠元禅師貼り混ぜの小屏風。あの屏風はなぁ、わての旦那の檀那寺が兵庫におましてなぁ、そこの坊主の好みまする屏風じゃによって、兵庫へやり、兵庫の坊主の屏風にいたします、と、かようにお言付けを願います。

与太郎

あっはっは。

与太郎

何を言ってるか、さっぱりわからねえ。

与太郎

おーい!叔母さん!

叔母さん

はいはい。何です?

与太郎

お客さんだよ。

叔母さん

まあ、よくいらっしゃいました。

加賀屋

おかみさんでっか?

叔母さん

ええ。

加賀屋

わては、中橋の加賀屋佐吉から参じましたん。先日、仲買いの弥市が取り次ぎました道具7品のうち、祐乗・光乗・宗乗三作の三所物、並びに備前長船の則光、四分一拵え横谷宗珉の小柄付きの脇差。柄前は、旦那はんは古鉄刀木と言うとりましたが、埋れ木やそうで、木が違うとりましたさかい、念の為ちょっとお断り申します。次は、のんこの茶碗、黄檗山金明竹の寸胴の花活け、「古池や蛙飛びこむ水の音」と申します、風羅坊正筆の掛け物、沢庵・木庵・隠元禅師貼り混ぜの小屏風。あの屏風はなぁ、わての旦那の檀那寺が兵庫におましてなぁ、そこの坊主の好みまする屏風じゃによって、兵庫へやり、兵庫の坊主の屏風にいたします、と、かようにお言付けを願います。

加賀屋

それでは、ごめんやす。

そう言い残すと、加賀屋佐吉の人は、叔母さんにも何を言っているのか、さっぱりわからないまま去ってしまいました。

そこへ、やっと叔父さんが帰ってきます。

叔父さん

ただいま。

叔母さん

お帰りなさい。

叔母さん

あの……今さっき、お客様がお見えになりました。

叔父さん

そうかい。

叔父さん

どなただ?

叔母さん

「中橋の加賀屋佐吉さん」までは、聞き取れたんですが……。

叔父さん

ああ、佐吉さんなら知ってるよ。

叔父さん

何だって?

叔母さん

なんでも、遊女が孝女で、掃除が好きなんだそうです。

叔父さん

は?

叔母さん

それで、たくあんとインゲン豆ばかり食べてて……。

叔父さん

おいおい、一体どういうことだ?

叔母さん

兵庫の坊主が屏風に上手に坊主の絵を描きました。

叔父さん

なんだか早口言葉みたいで、さっぱりわからないよ。

叔母さん

そうなんです。

叔母さん

早口言葉みたいで、さっぱりわからなかったんです。

叔父さん

それじゃ困るんだよ。

叔父さん

どこか一箇所くらい、はっきりと聞き取れなかったのかい?

叔母さん

そう言えば……「弥市さん」がどうとか……。

叔父さん

お、弥市さんには、道具をいくつか預けてたんだよ。

叔父さん

その人がどうした?

叔母さん

えーと……古池に飛び込みました。

叔父さん

ええっ⁉︎

叔父さん

じゃあ、道具はどうなったんだ?

叔父さん

佐吉さんは買ってくれたのかい?

叔母さん

いいえ。

「買わず(蛙)でございます」

ー完ー

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「金明竹」の言い立て部分の解説

あらすじの中で、中橋の加賀屋佐吉の長台詞で登場する言葉の意味は、以下のとおりです。

  • 仲買い:仲介業者のこと。ここでは、「弥市」という人が叔父さんから道具を預かって、加賀屋佐吉に売ろうとしていた。
  • 祐乗(ゆうじょう)・光乗(こうじょう)・宗乗(そうじょう):3人とも金属を加工する職人の名前。
  • 三所物(みところもの):目貫(めぬき)・小柄(こづか)・笄(こうがい)という、3種類の刀の装飾品のこと。
  • 備前長船:今の岡山県を拠点にする刀工の流派。
  • 則光(のりみつ):刀の職人の名前。
  • 四分一拵え:「銅:銀=3:1」で混ぜた合金のこと。
  • 横谷宗珉(よこや そうみん):金属を加工する職人の名前。
  • 脇差:短めの日本刀。
  • 柄前:刀の柄(握る部分)のこと。
  • 古鉄刀木(ふるたがや):希少な木材の名前。
  • 埋れ木:よく希少な木材の代用品として用いられる木のこと。
  • のんこ:楽道入(らく どうにゅう)という陶芸家の別名。
  • 黄檗山(おうばくさん):京都にある万福寺のこと。
  • 金明竹:竹の種類。全体的に黄金色をしている。
  • 寸胴の花活け:筒形の花器のこと。
  • 風羅坊(ふうらぼう):松尾芭蕉の別名。
  • 正筆(しょうひつ):その人が書いたもの。ここでは、松尾芭蕉の肉筆であることを指す。
  • 沢庵・木庵・隠元:3人とも、達筆で知られる僧の名前。
  • 貼り混ぜ:複数人が書いた「書」を、1つの道具に貼ったもの。

「金明竹」の豆知識

  • 「錦明竹」とも表記し、別題は「長口上」。
  • いわゆる「前座噺」。
  • このネタは、三代目 三遊亭金馬が得意とした。
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