司書は官製ワーキングプアだから、食べていけないよ。
図書館で働こうと思ったとき、誰でも一度はこのフレーズを聞いたことがあると思います。
しかし、ここは声を大にして言いたいです。
司書でも食べていけますよ!
もちろん給料は高くありません。
いや、むしろ安月給といった方が良いでしょう。
まぁ贅沢はできませんが、それでも僕は一応4年間、司書をやってご飯を食べてきました。
この記事では、そんな僕が司書の給料事情についてお話ししようと思います。
司書の給料事情
当然のことながら、司書の給料は「どの図書館に」「どの立場で」働くかによって変わってきます。
そこで今回は、所属する図書館の種類ごとに「正職員として働く場合」「非正規職員として働く場合」「パートタイムで働く場合」の3つに分けて、解説していこうと思います。
正職員として働く場合
「そんなこと分かってるよ!」
と怒られそうですが、司書としてに働くにあたり、正職員として働くのが一番高給で安定的です。
それでは、図書館の種類ごとに正職員の給料事情を見ていきましょう。
公共図書館
公共図書館で正職員として働くためには、公務員になるほぼ一択です。
そのためには、自治体が実施している採用試験に合格しなければなりませんが、これがかなりの狭き門です。
毎年の募集人数が「1名」であることは珍しくなく、ここにたくさんの司書志望が応募するので倍率は高くなります。
壮絶なイス取り合戦を勝ち抜いて、やっと正職員の座が掴めるのです。
さて、気になる給料事情ですが、こんなに大変な思いをしたのにも関わらず、あんまり月給は高くないです。
もちろん採用された自治体によるのですが、4年制大学を卒業して入庁する「行政職」の人よりも初任給が低いことが多く、短大や専門学校を卒業して入庁する職員と同じ給料体系になりがちです。
具体的な金額で言うと、額面で17〜20万円くらいになると思います。
…分かります。安いですよね。でも、これが現実なんです。
ただ、ボーナスはきっちりと出て、年2回それぞれ月給2ヶ月分くらいは出ると思います。
さらに、毎年ほぼ確実に給料が上がっていくので、最初こそ少ないと感じるかもしれませんが、安定的に働くことができます。
もし、館長や副館長といった管理職まで昇進することができれば「管理職手当」も付くので、そうなればそこそこは稼げると思います。
ここでちょっと裏話をすると、館長には「司書」として入庁した人ではなく「行政職」として入庁した人がなるパターンが多いのですが…
まぁ何はともあれ、司書として安定的に働きたいのであれば、公共図書館の正職員を目指すのが一番スタンダードだと思います。
大学図書館
大学図書館で正社員として働く方法は、国立大学と私立大学で異なります。
まず、国立大学で正職員になるためには「国立大学法人等職員採用試験」に合格する必要があります。
各大学の「司書職」の採用人数は5名もいれば多い方で、毎年採用していない大学もあるので必然的に倍率は高くなります。
採用後の初任給ですが、学歴や職歴に応じて、額面で月給18〜22万円くらいが相場です。
身分としては公務員と同じようなものなので、給料は毎年上がっていきますし、年2回のボーナスもあります。
次に私立大学で正職員になる方法ですが、これは普通の就活と一緒です。
というのも、「司書」として募集をしているケースはあまりなく、全職員を一括で採用することが多いからです。
なので、就職したからといって必ずしも図書館配属になるとは限りません。
さらにいうと、図書館で働くスタッフは嘱託やパートで雇うことが多いので、職員として入社しても図書館に配属される可能性は少ないのではないかと思います。
ただ、大学職員なので待遇は良く、初任給でも額面で月給20万円〜が一般的でしょう。
専門図書館
専門図書館で正職員として働くためには、その館が独自に行う求人に応募します。
このとき、館によっては筆記試験があったり、論文試験があったりします。
多くの専門図書館は規模が小さいので、そこに所属する司書の数も少ないです。
必然的に求人は欠員が出た時にだけ出るので、採用人数は1名だけであることがほとんどです。
ここにたくさんの司書志望が殺到するので、倍率も高くなります。
給料は一般的な会社と同程度で、初任給は額面で20〜25万円くらいといったところでしょうか。
図書館にもよりますが、ボーナスもきちんと出るところが多い印象です。
国立国会図書館
国立国会図書館で正職員として働くためには、採用試験に合格する必要があります。
総合職や一般職などの職種ごとに試験の内容は異なりますが、共通しているのは一般教養と専門知識の筆記試験があることです。
この試験の倍率も非常に高く、例年100倍近くになっていますね。
国立国会図書館職員は「国会職員」という立場になり、国家公務員とほぼ同じことです。
初任給は額面で月給22万円ほどで、ボーナスも年2回月給2ヶ月分ちょっと出ます。
また、昇給も毎年あります。
さすがに日本で一番大きい図書館なので、ここに就職できれば司書として安定的に働いていけそうですね。
非正規職員として働く場合
さて、これまでは正職員として働いた場合の給料について話してきました。
どの図書館の場合も給料自体は悪くないものの、採用されるのが難しいところがたまにキズでしたね。
そこで、ここからは非正規職員として働く場合、給料はどれくらいになるのか話していこうと思います。
図書館で働いている非正規職員の立場としては、以下の3つがあります。
順番に見ていきましょう。
会計年度任用職員
会計年度任用職員とは、公共施設で1年ごとに雇われる職員のことです。
公共図書館では、よくこの会計年度任用職員を募集しています。
なので、この求人に応募すれば図書館で働き始めることができます。
気になる給料はというと、月に額面で15〜19万円くらいです。
ただし、契約内容によってはボーナスが出ることもあるようです。
しかしながら、契約は年に1回ずつの更新で、何もなければ更新してもらえるようですが、多くの場合は更新回数の制限があります。
なので、更新がストップしてしまうと次の職場を見つけなければなりません。
正直、これでは安定的な働き方とは言えないと思います。
このあたりが、「司書は官製ワーキングプアだ!」と言われてしまう理由なんですね。
嘱託(臨時)職員
大学図書館や専門図書館にも、会計年度任用職員のように1年ごとに雇われる職員がいます。
このような職員は嘱託職員と呼ばれます。
給料は図書館によってピンキリですが、都内の図書館だと月に額面で20万円以上という求人もあります。
なので、よく探せば公共図書館よりは高い給料で働くことができます。
しかし、待遇はあまり良いとは言えず、ボーナスは無いことが多いですし、契約は年に1回ずつの更新という点も会計年度任用職員と変わりません。
そして、契約の更新回数も制限があることが多いので、こちらも安定的な働き方とは言えないでしょう。
ちなみに、同じような働き方をする臨時職員という人たちもいます。
嘱託職員と何が違うかというと、細かい定義はあるようなんですが、図書館業界に限ってはほぼ同じと考えて良さそうです。
図書館によって嘱託職員と言ったり、臨時職員と言ったり、呼び方が異なるんですね。
運営を委託されている企業のスタッフ
最後にお話しするのは、図書館の運営を委託されている企業のスタッフとして働いた場合の待遇についてです。
近年、図書館業界では運営を民間の会社へ委託することが増えてきています。
このような図書館運営業務を行っている企業に就職すれば、図書館で働くことができます。
しかし残念なことに、図書館運営会社の求人は契約社員のものがほとんどです。
給料は月に額面で20万円前後、ボーナスは無いことが多く、契約も1年ごとに更新という内容の契約がほとんどです。
ただ、一つ希望が持てるのは、契約を更新していく中で経験年数や能力に応じて無期雇用へ変更される可能性があることです。
そして、給料についても更新を重ねるごとに少しずつ増えていくことがあります。
なので、一生懸命働いて能力が認められれば、無期で月給20万円以上という「食べていける」くらいの条件にはなるのではないかと思います。
僕が聞いた話だと、契約社員として入社した後、能力が認められて正社員になった方もいるそうですよ。
パートタイムで働く場合
夫婦共働きであったり、副業をする予定があったりするならば、パートタイムで働くという手段もあります。
これまで話してきた公共図書館・大学図書館・専門図書館・国立国会図書館では、それぞれフルタイムの他にパートタイムでの求人も出していますので、これに応募すれば働き始めることができます。
また、パートタイムの求人は学校の図書室も出ていることがあります。
学校の図書室はそもそも開いている時間が短かったりするので、フルタイムよりもパートタイムの募集が多いですね。
図書館運営を委託されている企業も同じようにパートタイムの求人を出しています。
気になる時給ですが、1000円くらいが多いですかね。
正直、1500円以上とかは、あんまり見たことがないです。
安定的に働くには
これまで、「図書館で正職員として働いた場合」「非正規職員として働いた場合」「パートタイムで働いた場合」の給料について話してきました。
つまるところ、司書として安定的に働いていくには、どうすれば良いのでしょうか?
その選択肢は、
の2つです。
正職員として就職する
まず、当然のことですが、正職員として就職することができれば、給料もそれなりにもらえるし、ボーナスもあるし、長期間安定的に働いていくことができます。
ただし、そのためには、これまでお話した通りの狭き門をくぐり抜けなければなりません。
採用試験では筆記テストの成績ももちろんですが、図書館で働いた経験も評価されます。
なので、まずは非正規でも良いから図書館で働き始めてから、正職員の求人を見つけたらチャレンジしていくというやり方が良いかもしれません。
非正規職員として就職し、正職員に昇格する
図書館運営の委託を受けている企業で契約社員として働き始めた場合、更新を重ねると実績が認められて正職員へ昇格できることがあります。
こうして正職員になれれば、年ごとの更新に怯えることなく安定的に働けるようになります。
もちろん、昇格してもらうためには、会社に自分の能力を認めてもらう必要があります。
なので、図書館で働きながらも研修や講演に足を運んだり、本を読んだりして絶えず自己研鑽に励むことが大切です。
あとがき
いかがだったでしょうか?
司書の世界って厳しい!
って思いませんか?笑
本が好きで、図書館で働きたいという人が多いために、良い条件で働けるのはその中のごく少数というのが現実なんです。
ただ、安定的に働ける可能性が低いからといって、諦めて欲しくはないなと思います。
好きなことを仕事にできる人生って、とっても素敵ですよ。
初めは非正規職員からスタートしたとしても、そこで経験や知識を積んで、正社員や無期雇用を目指すことはできます。
もし、僕の話を聞いてもまだ二の足を踏んでしまうのであれば、この漫画を読んでみてください。
図書館の仕事っていいな、図書館で働きたいな。
というモチベーションが高まるはずですよ。
それでは、あなたと一緒に図書館で働けるのを、楽しみにしています。