「司書ってどんな仕事をしてるの?ずっとカウンターに座ってて暇そうだけど…」
なーんて、思っていませんか?
ごめんなさい、そんなに楽そうに見えますかね?笑
意外かもしれませんが、司書の仕事って幅が広くて、体力が必要な作業もあったりするんですよ。
この記事では、あなたの誤解を解くため、4年間図書館で働いてきた僕が司書の仕事について解説します。
開館作業
まずは、図書館が開く前の仕事から説明していきます。
図書館の仕事は、朝の簡単なミーティングから始まります。
このミーティングでは、その日の予定だったり、前日からの引継ぎ事項だったりをスタッフ全員で共有します。
それと一緒に、当日の各スタッフの仕事の割り振りなんかも、ここで確認しておきますね。
ささっとミーティングを終わらせ、続いては開館へ向けた準備に入ります。
具体的な仕事としては、まず「ブックポスト」に入っている本の返却処理というのがあります。
ブックポストというのは、図書館が閉まっている間も本が返却できるように、建物の壁などに設置されているものです。
朝はこの中に大量の本が入っているので、それを回収してきて、返却の手続きをします。
次に朝刊の準備というのがあって、朝届いた新聞をホチキスで留めたり、専用のバインダーで挟んだりしていきます。
こうすることで、新聞のページがバラバラにならず、読みやすくなるんです。
最後に、館内のパソコンを立ち上げたり、カウンター周りを整理しながら開館を待ちます。
無事に開館できたら、ここからは各スタッフが自分に割り当てられた仕事を別々にこなしていきます。
図書館での仕事は、大きくカウンター業務とバックヤード業務に分けられるので、順に説明していこうと思います。
カウンター業務
貸出・返却
カウンター業務はその名の通り、カウンターに入って利用者対応をする仕事です。
この仕事で、一番イメージしやすいのは、やはり本の貸出・返却処理でしょうか。
利用者が借りたい本を貸し出すための手続きや、利用者が読み終わった本を返却するための手続きをしていきます。
現在、ほとんどの図書館では本の管理をパソコンのシステムで行っているので、所定の画面を開いて利用券や本のバーコードをスキャンしていけば、手続きは簡単に終わります。
予約
読みたいと思っていた本が貸出中だった時には、本の予約をすることができます。
この予約の受付もカウンターの仕事です。
受付方法は図書館によって様々ですが、一番オーソドックスなのは用紙に本の情報を書いてもらい、それを見ながらシステムに入力していくという方法です。
予約していた本を受け取りにきた人がいたら、保管場所から探してきてお渡しします。
利用券登録
図書館で本を借りるためには、「利用券」が必要です。
この利用券の登録手続きを行うのも、カウンターの仕事になります。
登録をしたい利用者が、名前・住所・電話番号などを書いた申込用紙を持ってくるので、これをシステムに入力して、カードを発行するというのが一般的な方法です。
新規登録以外にも、期限が切れてしまった利用券の更新や、住所等の変更、カードを無くしてしまった方への再発行の手続きも行ったりします。
レファレンス
「これぞ、図書館カウンターの仕事!」というのが、レファレンスです。
レファレンスとは、簡単にいうと調べもの相談のこと。
利用者が知りたいと思っていることに対して、その情報が載っている本を探します。
具体的な流れとしては、まず、やってきた利用者に対して丁寧に聞き取り調査をします。
実は、この聞き取りがレファレンスの肝です。
ここで利用者の本当に知りたいことを突き止めておかないと、その人にとって最適の本を渡すことができません。
また、ここで利用者から出てきたキーワードを使って本を検索していくので、なるべくたくさんの言葉を引き出しておくのがコツですね。
聞き取りが終わったら、システムで本を探してから書棚に探しにいきます。
自館の本だけで対応できない場合には、他の図書館から取り寄せたりもするんですよ。
サービス案内
最近の図書館は、多種多様なサービスを展開しています。
まず、昔からやっているのが複写サービスですね。
その名の通り、図書館の本のコピーができるというサービスです。
利用者から申し出があった時には、カウンターのスタッフはコピーしたいページを確認し、代金をもらってからコピー機で印刷をします。
あと、よくあるのがインターネットサービスです。
これは、館内で調べものをしている方に、インターネットが使えるパソコンを提供するサービスです。
この利用受付もカウンターの仕事です。
これによく似たサービスとして、データベースというものがあります。
データベースの代表的なものは、新聞記事の検索システムです。
これは、読売や朝日など新聞各社が作っているもので、キーワード等で検索をすると、簡単に過去の記事を探して読むことができます。
このように、調べものに使えるデータベースがたくさんあるのですが、図書館ではこれらを無料で使うことができます。
データベースが使いたいという方が来たらセッティングをするのも、カウンターの仕事です。
他に、図書館によっては視聴覚ブースがあったりします。
このブースでは、図書館の中にあるCDやDVDを視聴することができます。
つまり、館内で音楽が聞けたり、映画が観れたりするんですね。
利用したい人がカウンターに来たら、ヘッドホンやリモコンなどの機器を貸し出します。
あとは、指定席を設けている図書館もあるので、この受付もカウンターでやったりしてます。
このように、図書館の中では様々なサービスを受けることができるのですが、カウンターではこれら全てのサービスの受付をしています。
どうです?なかなか大変そうじゃないですか?
司書はカウンターで本の貸し借りだけやっている訳じゃないんですよ!笑
バックヤード業務
続いては、バックヤード業務について説明していきます。
まずは、「バックヤードとは、なんぞや」というところですが、図書館では事務室や作業室のことを指します。
まあ、ざっくり言ってしまえば、これから話していくのは「カウンターに入っている時以外にする仕事」と思っていただければOKです。
配架
まずは一番大事な仕事の配架です。
これは、利用者から返却された本を元の棚に戻すという仕事です。
本が棚にないと、利用者が読みたい本を探せなくなってしまうので、少しでも早く元の場所に戻せるように頑張ってます。
休館日明けで返却本がたまってたりすると、結構大変なんですよ。
また、この時に棚が乱れていたら、きれいに整頓します。
ぐちゃぐちゃだった棚がピシッと整った時には、なんとも言えない満足感があります。笑
予約資料の準備
利用者から本の予約が入った時には、館内からその本を回収してきます。
そして、パソコンでシステム上の処理をしてから、誰が予約したものかわかるようにして保管場所に置いておきます。
お渡しする準備が整ったら、予約した方に「取りに来てください」とメールや電話で連絡をして、作業完了です。
もし、自館に無い本が予約された時には、他の図書館から取り寄せたりします。
場合によっては、市外や県外の図書館から取り寄せることもありますね。
巡回便
市内に複数の図書館がある場合、「巡回便」や「連絡便」と呼ばれる車が各館の間をぐるぐると回っています。
この車は何をしているかというと、他の図書館に返された本を元の館へ戻したり、予約本を利用者が受取りを希望している館へ送ったりしています。
一日に何回かこの巡回便が到着するので、運ばれてきた本の返却をしたり、予約本の引き渡しの準備をしたりします。
本の受け入れ
図書館に新しい本を受け入れるための仕事も、バックヤード業務の一つです。
まずは、どの本を新しく購入するか選ぶところから始まります。
これは選書と呼ばれるのですが、とっても難しい仕事なんです。
限られた予算の中で、自分の図書館に必要なのはどんな本なのか、悩みに悩みます。
選書をするためには、本の所蔵状況と利用者のニーズを把握していることが大切なので、経験豊富な司書がこの仕事を担当することが多いです。
そして、多数の人の目で吟味するために、最終的には会議を開いて買う本を決定します。
さて、そうやって選んだ本が図書館に届いたら、館内に出せるように装備していきます。
図書館の本って、ビニールでコーティングされてたりしますよね?
これは本の強度を増して、少しでも長い間、その本を読んでもらえるようにするための処置です。
また、本を管理しやすくするために、表紙にバーコードを貼ったり、背表紙にラベルを貼ったりします。
これらの作業は、図書館でやる場合もありますし、納入業者さんがあらかじめやってくれている場合もあります。
最後に、パソコンを使ってシステムに新しい本の情報を入れたら、やっと館内に出すことができます。
雑誌の受け入れ
図書館には定期購読している雑誌がほとんど毎日届くので、これを館内に出せるようにしていきます。
まずは強度を増すために、ホチキス留めタイプの雑誌はホチキスのところをテープでとめたりして補強します。
このほかにも、ミシン目で取れやすくなっている部分などを読みにくくならない範囲で補強していきます。
あとは、管理するためのバーコードを貼った上でシステムに入力し、館内に出します。
破損本の修理
利用者が読んでいる間に、ページを破ってしまったり、水に濡らしてしまったりすることがあります。
このように壊れてしまった本の修理をするのも、司書の仕事です。
まず、破れてしまったページは専用の補修テープを使って貼り付けていきます。
このテープは時間が経っても劣化しにくいので、直した後も文字が読みづらくなりません。
よく破ってしまった方がセロハンテープで直して返してくれることがあるのですが、本音を言うとこれはやめていただきたいです。
セロハンテープだとすぐに劣化して、読みづらくなってしまうんです。
破ってしまったら、そのままの状態でカウンターまで持ってきてくださいね。
雨の日に図書館に来た利用者が、本を濡らしてしまうことがあります。
この時、まだ濡れた状態であれば、ページの間に紙を挟んで万力で締めておけば、あんまりふにゃふにゃになりません。
また、長く読まれた図書館の本は、経年劣化でページが取れてしまうこともあります。
この場合は、取れてしまったページを専用のボンドでくっつけて、輪ゴムなどで固定しておくと、また読める状態に戻ります。
このように、司書は「本のお医者さん」でもあるんです。
上級者は、取れたページを縫い付けて直したりもできるんですよ。
未返却本の督促
返却期限が過ぎても本を返してくれない利用者には、早く返してもらえるように連絡を入れます。
連絡方法は図書館にもよりますが、電話やメール、ハガキを組み合わせて行うことが多いです。
ここで気になるのは、「督促をしたとき、怖い人が出たりしない?」というところですよね。
安心してください。大抵の人は、「ごめんなさい、すぐ返しにいきます!」と言ってくれます。
でも、たまーにですが、「そんなことで連絡してくるな!」なんて怒ってしまう方もいます。
ここで心に留めておくのは、この言葉。
「図書館の本はみんなの本」
その人だけが独占して良い訳がないので、凛とした態度で接します。
イベント関係
以上で説明してきた「カウンター業務」と「バックヤード業務」が司書の仕事の9割を占めます。
ここからは、それ以外のイベント運営や特集展示棚作りについて説明していこうと思います。
これらの仕事は、当番制のことが多いので、基本的には自分の番が回ってきた時にだけやる感じです。
おはなし会
まずは、おはなし会です。
子どもの頃、学校や図書館で本を読んでもらった記憶はありませんか?
あのように、おはなし会では子どもを集めて絵本を読み聞かせます。
もしかしたら、「なんか難しそう」と思うかもしれませんね。
でも、安心してください。
もちろん、色々なテクニックはありますが、一番大事なのは「本に興味を持ってもらうこと」
最初は細かいことは気にせず、子どもに楽しんでもらうことだけ考えればOKです。
慣れてきたら、もっと楽しんでもらうためにテクニックを身につけていけばいいんです。
イベント運営
図書館では、様々なイベントを開催しています。
例えば、文学講座や法律講座、子ども向けの英語講座や工作イベントなどなど、高齢者が対象のものから赤ちゃんと一緒に参加するものまで、たくさんのイベントがあります。
こういうイベントを開くための準備をするのも、司書の仕事です。
外部から講師を招く時には、講演の依頼から日程調整、段取り確認、必要なものの準備、当日の会場設営など、イベントが円滑に進むよう準備をしていきます。
また、自分が講師となる際には、話す内容を決めて、パワポなどの資料を作成しなければなりません。
こんなことも司書の仕事なんだ!と驚かれるかもしれませんが、意外と仕事の幅は広いんです。
特集展示棚の作成
特集展示棚とは、期間限定でテーマに沿った本を集めて展示するコーナーのことです。
よくあるのが、12月に子どもの本のコーナーでクリスマスの絵本を集めたりですかね。
まずは自分でテーマを考えて、それに合った本を探して集めてきてから、ポスターなどの掲示物を作っていきます。
やることが多くて大変なのですが、棚が完成するとめちゃくちゃテンションが上がります。
個人的には大好きな仕事です。
閉館作業
それでは最後に、閉館する時の仕事を説明していきます。
まずは、よく利用される新聞と雑誌がちゃんと元の場所にあるか確認していきます。
読む人が多いだけに、正しい場所に置いてなかったり、日付の順番がめちゃくちゃになっていたりするので整理します。
他には館内を見回って、忘れ物がないかチェックをしたり、乱れている棚があれば整えます。
最後に館内の機器の電源を切って、照明を消したらやっと帰れます。
楽しいことと辛いこと
楽しいこと
ここまで、司書の仕事内容について話してきました。
どうです?想像していたより、たくさん仕事してませんか?笑
やることがたくさんあって、もちろん大変なのですが、それ以上に司書の仕事はとっても楽しいです。
なんせ、配架をしながら「あー、この本には、どんなことが書かれているんだろう?」って考えてるだけで楽しいですからね。
あとは、カウンターに入っている時、利用者と少し話す機会があるのですが、「この本、面白かったよ」なんて声をかけてもらえると本当に嬉しいです。
「司書として働いてよかったな。人と本を繋ぐことができてよかったな」って思います。
おはなし会をしていて、子どもの笑顔を見られるのも、司書の醍醐味の一つですね。
こんな感じで、司書をやっていると「楽しい」と思える瞬間がたくさんあります。
辛いこと
じゃあ、司書の仕事は楽しいばかりで辛いことってないの?
と思われるかもしれませんが、もちろん仕事なので辛いこともあります。
単純なところで言うと、本って意外と重いんです。
毎日大量の本を扱う中で、本がたくさん入った箱を持ち運びする機会も多いのですが、これが結構重たいです。
腰を痛めてしまう人もいるので、細心の注意を払って持ち上げています。
あと、利用者の方々は基本的には良い人ばかりなのですが、なかにはどうしても難しい人もいます。
たまーにですが、カウンターで大きな声をあげてクレームを言ったりする人もいるので、こういう方への対応はちょっと辛いです。
あとがき
司書の仕事について、分かっていただけましたか?
この記事を読んで、少なくともカウンターに座っているだけという誤解は解けたのではないかと思います。
文化系のイメージが強い職種ですが、意外と体力仕事も多いんです。
基本的には立ち仕事なので、図書館で働き始めてから痩せたなんて人もいるんですよ。
もし、司書の仕事に興味を持っていただけたなら、この漫画も読んでみてください。
司書の仕事がとてもリアルに描かれています。
そして、「司書になりたい!」を思ってもらえたなら、是非こちらの記事も合わせて読んでください。
司書資格の取り方から、司書として就職するための方法まで解説しています。