太宰治

瘤|太宰治が得意とする“一人称”で書かれた小説

『瘤(こぶ)』は、太宰治が中学4年生のときに、同人雑誌の「蜃気楼」で発表した作品です。

本記事では、『瘤』のあらすじや注目ポイントを紹介します。

なお、『瘤』は新潮文庫の『地図―初期作品集―』に収録されています。

ご興味のある方は、下記から購入して読んでみてください。

書名:地図―初期作品集―
著者:太宰治
出版社:新潮社(新潮文庫刊)

『瘤』のあらすじ

俺は兄に殴られてしまった。

なぜ、殴られたかって?

あの日は日曜日だったね。

天気が良かったから、兄が友達とピクニックへ行こうと言い出し、俺はお供として付いていくことになったんだ。

そこで兄は、「食パンを持っていこう」と言う。

俺はこれに賛成し、パン屋でパンを切ってもらって、バターもそこで塗ってもらおうと提案した。

しかし、兄は、食パンとバターは別々にして持っていくほうが良いと言い張る。

それで口喧嘩になってしまって、結局、俺はピクニックには行かないことにした。

兄は俺のことを説得しようとしたが、俺はそれを無視していたら、ぶん殴られたんだよ。

しばらくして、兄の友達がうちにやってきた。

その友達が「食料を持ったか?」と尋ねたら、兄はフフンと笑って、「いや、途中で買っていくつもりだ。弟の話では、パン屋でパンを切ってもらい、そこでバターも塗ってもらったほうが良いということだからな」と答える。

すると、兄の友達はウハッハッハと笑い出して、こう言った。

「よせよ。去年、そうやったら途中でバターが溶けて、ボタボタ落ちてきて大失敗だったじゃないか」

兄と友達の大きな笑い声を聞いていたときの、俺の惨めさったらないよ。

それで、2人はいそいそと部屋から出て行ってしまった。

後に残ったのは、さっき兄に殴られてできた、大きな瘤だけだよ。

『瘤』が執筆された背景

』は、太宰治が中学4年生(数え年で18歳)のときに、「蜃気楼」という同人雑誌の5月号で発表されました。

▼「蜃気楼」5月号

「蜃気楼」5月号
出典:『新潮日本文学アルバム 19 太宰治』太宰治,新潮社,1983,p.50

発表されたときの筆名は、本名の津島修治をもじった、「辻島衆二」です。

『瘤』における注目ポイント

『瘤』で注目すべきポイントは、「一人称」の小説だというところです。

これまで中学生の太宰が書いてきた作品は、『最後の太閤』にしても『地図』にしても、登場人物を第三者の視点から、「彼は〜〜」と描写するものばかりでした。

一方、今回の『瘤』では、主人公が「俺は〜〜」と、主観的に読者へ語りかけるスタイルです。

このスタイルは、これ以降、太宰の得意な文体となります。

代表作の『人間失格』でも、「手記」というかたちをとって、主人公が「自分は〜〜」と一人称で語りながら進んでいきます。

 恥の多い生涯を送って来ました。
 自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。自分は東北の田舎に生れましたので、汽車をはじめて見たのは、よほど大きくなってからでした。自分は停車場のブリッジを、上って、降りて、(後略)

『人間失格』太宰治

まとめ

本記事では、『瘤』のあらすじや注目ポイントをお伝えしました。

『瘤』という作品に興味が出てきた方は、ぜひ新潮文庫の『地図―初期作品集―』を買って、読んでみてください。

書名:地図―初期作品集―
著者:太宰治
出版社:新潮社(新潮文庫刊)
目次:
最後の太閤
戯曲 虚勢
角力
犠牲
地図
負けぎらいト敗北ト
私のシゴト
針医の圭樹

将軍
哄笑に至る
口紅
モナコ小景
怪談
掌劇 名君
股をくぐる
彼等と其のいとしき母
此の夫婦
鈴打
哀蚊
花火
虎徹宵話
  *
断崖の錯覚
あさましきもの
律子と貞子
赤心
貨幣
  *
洋之助の気焔

なお、記事を執筆するにあたっては、以下の書籍を参考にしました。

それぞれの書籍の概要については下記の記事にまとめていますので、ご興味のある方は、併せてご覧ください。

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