太宰治

口紅|中学生の太宰治が自身の劣等感について書いた作品

『口紅』は、中学生の太宰が、夏休みに兄の圭治と一緒に作った「青んぼ」という小冊子に掲載された作品です。

本記事では、『口紅』のあらすじや注目ポイントなどをお伝えします。

なお、『口紅』は新潮文庫の『地図―初期作品集―』に収録されています。

読んでみたい方は、ぜひ下記からお買い求めください。

書名:地図―初期作品集―
著者:太宰治
出版社:新潮社(新潮文庫刊)

『口紅』のあらすじ

18歳のある日、母親が私の下宿に来た。

母と会うのは、10年ぶりだった。

私の母は父の愛人で、今日は父と一緒に神戸から上京するついでに、ここに寄ってくれたらしい。

部屋まで私を呼びにきた下宿の主人の話によると、ここに居られる時間はあまりないようだ。

私は嬉しくなって、すぐに母のいる玄関へ向かった。

しかし、玄関へ続く階段のところで、ふと鏡が目に入る。

「汚いツラだ」

ひどい猫背に汚い顔がちょこんと載っている。

私は急いで同じ下宿に住んでいる女性教師の部屋に入った。

そして、その誰もいない部屋で化粧を始めた。

まずは、この大きな鼻におしろいをなすり付ける。

続いて、顔全体にもおしろいを付けた。

自分ながら笑ってしまった。なんだ、この顔は。

頬紅を塗ってみたが、どうもイマイチ。

下宿の主人が自分を急かす声がする。

慌てて口紅を塗ってから、急いで母のいる玄関へ向かう。

しかし、もうそこに母はいなかった。

私はため息を吐くと同時に、なぜだかホッとした。

自分の部屋に戻っているとき、階段のところで、また鏡が目に入る。

そこで化粧をした自分の顔を見た途端、いろいろな感情が一気に込み上げてきて、私は声をあげて泣いてしまったのだった。

『口紅』が執筆された背景

口紅』は、太宰治が中学4年生(数え年で18歳)の夏休みに、兄の圭治と一緒に作った小冊子「青んぼ」の創刊号で発表された作品です。

そのときの署名は、本名の「津島修治」をもじった「辻島衆二」でした。

『口紅』における注目ポイント

ポイント1. 登場する「母」のモデル

『口紅』に登場する私の母は、父の「愛人」という設定です。

太宰は幼い頃、実母ではなく、叔母の「きゑ」に育てられていたのですが、太宰は彼女のことを「父の愛人なのでは?」と疑い、「自分は不倫の子なんだ」と妄想していました。

このことから、本作に登場する母は、きゑがモデルになっていると考えられます。

太宰の叔母のきゑについては、下記の記事で詳しくお伝えしています。

ポイント2. 太宰の劣等感

『口紅』では、主人公の「私」が自分の容姿や猫背を気にしている様子が描かれています。

実際に、子どもの頃の太宰も、自身の外見に劣等感を持っており、特に「大きな鼻・顔のニキビ・猫背」を気にしていたようです。

『口紅』と同じく、太宰が中学生のときに書いた『傴僂(せむし)』という作品では、下記のように書いています。

◎俺は顔もそうだが殊にスタイルについては殆ど自信がない。
◎俺はヒドイ猫背だ。

「傴僂」という言葉は、現代では差別用語と認識されていますが、作品の内容を正確に伝えるため、本記事では原題どおり表記します。

まとめ

本記事では、『口紅』のあらすじや注目ポイントを紹介しました。

『口紅』という作品に興味が出てきた方は、ぜひ下記の『地図―初期作品集―』を買って、実際に読んでみてください。

書名:地図―初期作品集―
著者:太宰治
出版社:新潮社(新潮文庫刊)
目次:
最後の太閤
戯曲 虚勢
角力
犠牲
地図
負けぎらいト敗北ト
私のシゴト
針医の圭樹

将軍
哄笑に至る
口紅
モナコ小景
怪談
掌劇 名君
股をくぐる
彼等と其のいとしき母
此の夫婦
鈴打
哀蚊
花火
虎徹宵話
  *
断崖の錯覚
あさましきもの
律子と貞子
赤心
貨幣
  *
洋之助の気焔

なお、記事を執筆するにあたっては、以下の書籍を参考にしました。

それぞれの書籍の概要については下記の記事にまとめていますので、ご興味のある方は、併せてご覧ください。

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