江戸っ子の「吉原への行き方」を辿ってみた!36枚の写真で紹介する吉原散歩

江戸時代の粋な男たちには、吉原に遊びに行くのにも「流儀」がありました。
先日、江戸っ子の吉原道中をたどる散歩をしてみたので、ここではその様子を写真とともにお伝えしたいと思います。
江戸時代の吉原への行き方
画像出典:「大吉原展 カタログ」東京芸術大学大学美術館・東京新聞,2024,p.101
江戸の中心地から、北の外れにある吉原へ向かうための道はいくつかありましたが、粋な江戸っ子が好んだのは、「隅田川を舟で遡るコース」です。
そこで今回は、その「隅田川コース」を舟は難しかったので、徒歩で体験してみました。
浅草橋駅からスタート
散歩の出発地点は、JR総武線・都営浅草線の「浅草橋駅」。

↑の写真を撮ったのは、午前6時くらいです。
吉原のお店の営業が始まってからウロウロしてると邪魔になるかな?と思い、早めの時間に行ってみました。
柳橋の舟宿
駅を出たら、まずは南へ向かって、「柳橋」を目指します。
粋な江戸っ子は、この柳橋の舟宿から猪牙舟に乗って、吉原へと向かいました。
画像引用:コトバンク「猪牙船」
柳橋には↓の写真のように、今でも屋形船や釣り船を運航している船宿がたくさん残っています。

今回は、船に乗った気分になって、隅田川沿いを歩きます。


道沿いには、安藤(歌川)広重の浮世絵がいくつも飾られていました。

首尾の松
江戸時代、柳橋から隅田川を遡っていくと、今の「蔵前橋」の手前くらいに「首尾の松」と呼ばれる木が生えていました。
首尾の松は、↓の歌川広重の浮世絵にも描かれています。
画像出典:ウィキペディア「名所江戸百景」
現在は川沿いではなく、少し陸地側に入ったところに記念碑と松が植えられていました。

(この松は江戸時代からあるものではなく、7代目のようです)
「首尾の松」の名前の由来は諸説あるのですが、そのうちの1つが「舟で吉原から帰る男たちが、昨夜の“首尾”を自慢しあったこと」なんだとか。
ちなみに、この近くには「浅草御蔵」の跡もあります。

浅草御蔵は幕府の米蔵で、日本中から集めた年貢米をここで保管し、幕臣へ俸禄として支給していました。
「蔵前」という地名も、「米蔵の前の通り」が由来です。
吾妻橋
さて、首尾の松からさらに隅田川を遡っていくと、「吾妻橋」が架かっています。
この場所からは、スカイツリーとアサヒグループ本社の「金のアレ」が綺麗に見えました。

吉原へ向かう男たちは、このまま舟で隅田川を北上するのですが、今回はちょっと寄り道をしたいと思います。

浅草寺
吾妻橋のところから、隅田川を西に折れると「浅草寺」があります。
散歩したときには、この時点で午前7時くらいだったので、境内はまだ空いていました。

↑これは、浅草寺の「五重塔」。
落語の「擬宝珠(ぎぼし)」では、商家の若旦那が、この塔の先端にある擬宝珠を舐めたくて塞ぎ込んでいましたね。

本堂で観音様に手を合わせてから、境内を北に抜けます。
猿若町
浅草寺の北東には、かつて「猿若町」と呼ばれていた地域があります。

江戸時代にはここに、中村座・市村座・守田座という芝居小屋が並んでいました。
猿若町まで芝居を見に行く落語のネタとしては、「芝居の喧嘩」や「なめる」などがありますね。
現在も、芝居小屋があった場所には、↓の写真のような標識が立っていました。

待乳山聖天と今戸橋
さて、寄り道はここらへんにして、吉原への道中に戻りましょう。
柳橋からずっと隅田川を遡ってきた舟は、待乳山聖天(まつちやましょうでん)のところを左に曲がって、今戸橋をくぐります。


このあたりが舞台になっているのが、「今戸の狐」という落語。
歩いている途中で、ネタに登場する「今戸焼の狐の置き物」のモニュメントを見つけました。


日本堤

吉原へ向かう男たちは、先ほどの今戸橋のあたりで舟を降りて、そこからは「日本堤」という土手を歩きました。
画像出典:ウィキペディア「名所江戸百景」
↑の歌川広重の浮世絵を見ると、道沿いには店も出ていて、賑わっているのがわかりますね。
今はすでに日本堤は取り崩されているものの、道に「土手通り」という名前が残っています。

見返り柳
さあ、いよいよ吉原が近づいてきました。
江戸時代、吉原の入り口のシンボルとして立っていたのが、↓の浮世絵にも描かれている「見返り柳」です。
画像出典:ウィキペディア「江戸高名会亭尽」
吉原で遊んで帰る男が名残惜しくて、よくこのあたりで後ろを振り返ることから「見返り」の名が付けられたこの柳。
今でも見返り柳があった場所には、記念碑と柳の木(6代目)が立っています。

衣紋坂

見返り柳を左に曲がると、正面にあるのが「衣紋坂」。
吉原に入る直前に、男たちがここで服装を整えることから、その名が付けられたと言います。
坂はS字にカーブしており、これは日本堤から吉原の中が見えないようにするための工夫なんだとか。
その名残で、今でも道がクネクネと曲がっています。


大門
午前7時半。ついに、吉原唯一の出入り口である「大門」に辿り着きました。
画像出典:東京都立図書館
現在、かつて大門があった場所には、↓のような柱が立てられています。

ちなみに、江戸時代には大門をくぐると、すぐ右側に「四郎兵衛会所」という見張り小屋があったのですが、今は近くに「交番」が置かれていました。
吉原の内部

大門から吉原の中へ入ると、目の前には真っ直ぐな道が伸びています。
これは「仲之町」と呼ばれる、吉原のメインストリートです。

↑の浮世絵のように、春になると桜の木が植えられて、とっても綺麗だったそう。
吉原の内部は、この仲之町に対して直角に道が交わり、街が碁盤の目のように整理されていました。
画像出典:「大吉原展 カタログ」東京芸術大学大学美術館・東京新聞,2024,p.109
まずは、大門から見て一番手前の右側に伸びる「江戸町一丁目」から見ていきます。

この通りを歩いていると、「角海老」という看板を発見。
後で調べたら、経営者が逮捕された店舗のものが、まだ残っていたようです。
「角海老」は、かつて吉原の「京町一丁目」にあった有名な妓楼の店名なので、そこから取ったのでしょう。
また、江戸町一丁目を右に折れたところには、「お歯黒どぶの石垣」と言われるものが残っています。
江戸時代、吉原遊郭の周りは板塀で囲われ、その外側には「お歯黒どぶ」という堀まで巡らされていました。

↑の写真の石垣を堺に、吉原の外側は低くなっていることから、昔はここに堀があったことが想像できますね。
敷地の周りに板塀や堀を作って、中に遊女を閉じ込めていたところに、吉原の暗い歴史が垣間見えます。

続いて、「江戸町二丁目」に行くと、今度は「三浦屋」という看板がありました。
これも、先ほどの角海老と同じく、経営者が逮捕されて閉じた店舗のものみたいです。
「三浦屋」は、角海老ができる前に同じ場所にあった妓楼の店名で、伝説の花魁「高尾」が在籍していました。
「高尾」は、10代以上続いたとも言われる花魁の名跡で、落語のネタには2代目が「反魂香」に、5代目が「紺屋高尾」にそれぞれ登場します。
仲之町方面から江戸町二丁目を抜けると、吉原の南側の端っこで縦に伸びる「羅生門河岸」にぶつかります。

この羅生門河岸は、「お直し」という落語の舞台にもなっているのですが、通称「蹴転(けころ)」とも呼ばれる、治安の悪い通りでした。
なんでも、店の人は客を蹴飛ばしてでも、無理やり部屋に引っ張り込んだとか……。

続いて入った「角町」の通りには、「稲本」という名前のホテルがありました。
「稲本」も吉原にあった妓楼の名前で、花魁の油絵として有名な↓の絵は、この店にいた「小稲花魁」がモデルです。
画像出典:ウィキペディア「花魁 (高橋由一)」
その後も、吉原内をグルグル。




先ほど触れた「三浦屋」や「角海老」があった場所には現在、マンションが建っていました。
吉原神社
仲之町を真っ直ぐ行って、かつての吉原遊郭の敷地を抜けたところには、「吉原神社」があります。

この神社は、遊郭の中にあった5つの稲荷を、明治に入ってから1か所に合祀したのが起源だそうです。
鷲神社
散歩の最後にやってきたのは、「鷲(おおとり)神社」。

この神社では、江戸時代から「酉の市」が開かれていました。
吉原の普段の出入り口は「大門」のみですが、酉の市の日だけは、西側にある非常門を開けて、参詣客を呼び込んだそうです。
歌川広重も、吉原の妓楼の窓から酉の市の賑わいを眺める猫を絵にしています。
画像出典:ウィキペディア「名所江戸百景」
まとめ
というわけで、本記事では「柳橋〜吉原」の散歩の様子をお伝えしました。
浅草橋駅から歩き始めたのが午前6時で、ゴールの鷲神社に辿り着いたのは8時頃だったので、かかった時間は2時間ほど。
休憩も取らず、ずっと歩きっぱなしだったので、クタクタになりました……。
吉原には、昔からの建物などはあまり残っていませんが、「道の形状」によって江戸時代の様子を想像できます。
なかなか近付きづらい場所ではありますが、落語などを聴いて興味を持たれた方は、一度行ってみるのも面白いかなと思います。
ただし、写真を撮る際には、他の方のお顔が写り込まないようにするなど、十分に配慮してくださいね。
なお、江戸時代の吉原での遊び方などは、下記の記事でお伝えしています。ご興味があれば、併せてご覧ください!
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まず注目すべきは、声優陣の豪華さ。
- 関智一:スネ夫(ドラえもん)etc.
- 石田彰:渚カヲル(エヴァンゲリオン)etc.
- 山寺宏一:ジーニー(アラジン)etc.
- 林原めぐみ:灰原哀(名探偵コナン)etc.
- 山口勝平:ウソップ(ONE PIECE)etc.
そして、高座のシーンの演出は、まるで寄席の中にいるような気分になってきます。
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